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熊本市立三和中 剣道部(上)

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仲間と目指す一本

大きな声、足の動かし方。新鮮でワクワク

 「緊張してきた~」。思わず、声に出ていた。新年度が始まって少したったこの日。ミサが通う三和中学校の体育館は、ピリピリムードに包まれていた。

 パン! パン! パン!!

 熊本各地の中学から70人が集まり、竹刀(しない)を打ち合っていた。「共栄杯(きょうえいはい)剣道大会」。中学から剣道を始めた剣士のための大会で、3年生のミウも出場する一人。もうすぐ大会が始まるのだ。

 「大丈夫!」「勝てるよ!」

 背中をぽんとたたき、声をかけてくれる。ナナとユウカだ。「2人だって緊張しているはずなのに…」。自然と闘志がわいてきた。

 中学で剣道を始め、一緒に稽古してきた仲間だ。2年前のちょうど今ごろ。部活見学で武道場を訪れた日から――。

3人はライバル

 「ヤアァァーーー!!」「キエェェーーー!!」

 武道場に大きな声が響いていた。先輩たちの表情は真剣そのもの。部活見学の日、ミサにとっては全てが新鮮だった。それは、小学校のバドミントン部で一緒だったナナとユウカも同じだった。

 顧問のカワセ先生が剣道の基本をまとめた紙をくれた。<返事は0.2秒>。頭が「?」でいっぱいになり、2人と顔を見合わせた。先生と先輩がすぐに手本を見せてくれた。

 先生「わかりましたか?」

 先輩「ハイッ!!」

 答えるまでわずか0.2秒。「は、速い。声も大きい」。返事ひとつとっても何かすごい。

 次は、足の動かし方。剣道の基本はすり足だ。かかとをわずかに浮かして、右足を前に出し、すぐに左足を引き寄せて進む。続いて、踏み込み。

 面や胴を打ち込むときは、右足を大きく浮かし、前に勢いよく踏み込む。「ドーン!!」。先生が踏み込むととても大きな音がして、静かなすり足とは違った。

 「私たちにできるかな?」「動きのキレがすごいんだけど」

 だけど、剣士の姿はかっこよくてワクワクした。

 入部から1か月は防具はつけず、体操服で練習だ。すり足、踏み込み、面のつけ方、真っすぐ竹刀を振り下ろす…。どれも難しくてなかなかできない。

 「自主練しようよ」

 LINEで3人のグループを作って連絡し、土日は誰かの家に集合。庭で竹刀を握った。

 「真っすぐになってる?」。3人とも右利き。どうしても左手より右手に力が入り、竹刀をまっすぐに振り下ろせない。「見とってね」。フォームをチェックしあった。誰かがうまくなると、「負けられん」とほかの2人がメラメラ。ライバルだった。

初めての勝利

 入部から3か月たち、少し剣士らしくなってきた7月。近くの中学で練習試合が行われた。ミサには温めていた戦法があった。

 相手が打ってくる面をかわし、その勢いのまますれ違う。相手より先に振り返り、相手が振り返った瞬間、面を打ち込む。稽古で何度もこの動きを体に染みこませた。

 「はじめ!!」。試合開始の声がかかると、相手に打たせて竹刀で防いだり、かわしたり。相手が大きく踏み込んだとき、目が合った。「来る」。ミサは相手の面をかわし、さっと振り返り、踏み込んだ。

 3人の審判の旗が上がったのが見えた。「一本だ!」。手には面を打った感触が残っていた。

 「私が打ったんだ。私が決めた面なんだ」。初めて決めた一本。初めての勝利。胸が震えた。

 「さっきの面、すごかったねー」「負けられん!!」。ナナとユウカは勝てなかったけど、喜んでくれた。そして、ちょっとメラメラしていた。

 ※登場人物は全て仮名です。

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2108858 0 部活の惑星 2021/06/08 11:00:00 2021/06/09 10:48:57 2021/06/09 10:48:57 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210602-OYT8I50039-T.jpg?type=thumbnail

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