プロゲーマーが挑むアジア大会~「日本のハースストーン仲間のために」

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 インドネシアで18日から開かれている「アジア競技大会」のeスポーツ部門に、日本代表として赤坂哲郎選手(23)が出場する。種目はデジタルカードゲーム「ハースストーン」。世界で約7000万人がプレーする一大タイトルだ。今年7月にプロゲーマーとなり、「Tredsred(トレッドスレッド)」のプレーヤー名で活躍する赤坂選手。多くの期待を背負って臨むアジア大会を前に、本人を直撃した(読売新聞・原啓一郎)

知識と運のぶつかり合い

アジア大会の壮行会で抱負を語る赤坂選手(8月9日撮影)
アジア大会の壮行会で抱負を語る赤坂選手(8月9日撮影)

 「ハースストーン」は、アメリカのゲーム会社であるブリザード・エンターテイメント(ブリザード)が手掛けるデジタルカードゲーム。プレーヤーは1000種類以上のカードから30枚を組み合わせた束「デッキ」を持ち寄り、その内容を基に1対1で戦う。デッキの組み方やカードをプレーする順番はもちろん、判断力や直感、運も試される。

 赤坂選手はハースストーンの魅力を「運が絡むが実力も出る、絶妙な競技バランス」と語る。個人の実力が出過ぎて毎回同じ人が勝つゲームだと、初心者が勝てずに離れていくが、ハースストーンには運の要素もあるため、初心者がプロに勝つこともある。プロに勝つ人が生まれやすいことが、コミュニティーの活性化につながっていく。また、年間を通して多くの大会が開催されており、厳しい参加条件は設けられていない。全てのプレーヤーに、トップに立つチャンスがあるのだ。

 ただ、勝ち続けることは非常に難しい。世界選手権などの大きな大会に出場している顔ぶれはほとんど同じで、その多くが世界的に名の知れたプレーヤーだ。「誰にでもチャンスがあるように見えるが、実際に勝っているのはまじめに取り組んでいる人。努力が結果に結びつく」ゲームだという。

退路を断って、プロの世界へ挑戦

17年の春季世界選手権の会場でポーズを取る赤坂選手(本人提供)
17年の春季世界選手権の会場でポーズを取る赤坂選手(本人提供)

 赤坂選手は横浜市に住む23歳。ハースストーンを始めたのは約5年前で、大学1年生の時。高校時代の友人に誘われプレーしたところ、夢中になった。その後16年の春季日本選手権で準優勝し、17年の春季世界選手権(中国・上海)へも出場するなど、どんどん実力を上げていった。今年7月にはゲームメディア「4Gamer.net」とプロ契約を結び、同社初のプロゲーマーになった。他にも、ゲーム攻略サイトやゲーム雑誌に攻略方法や戦術を数多く寄稿するなど、活躍は多岐にわたる。

 大学を卒業した昨春、就職や進学をせずプロゲーマーを目指すことを決心。両親と「1年」という期限を設定し、大会の賞金や原稿料で生計を立てていたという。卒業直後に行われた春季世界選手権で上位入賞し、上海大会に出場。赤坂選手を特集したテレビ番組も放送された。「比較的早いタイミングで結果を残せた。今回日本代表になって、こうやってメディアに露出があることが、両親を安心させられることにつながる」と振り返る。

 ハースストーンでは1年を通して、ブリザードが主催する世界大会が行われている。それぞれの大会には全世界から強豪が集い、そのレベルや規模は「アジア大会より上だ」という。「今回のアジア大会もそうだが、ブリザードの大会で勝てるようになりたい、と常に思っている」と、赤坂選手は常に世界を見据えている。

武器は膨大なデータ

18年に台湾で開催された大会の会場(本人提供)
18年に台湾で開催された大会の会場(本人提供)

 年間を通して勝ち続けることが難しいハースストーン。赤坂選手は負けが続くと、競技への取り組み方をすぐに変えるようにしている。自分の悪い点をすぐに改善し、結果につなげていくのが強みだ。

 5月の日本代表決定戦には使うデッキを一新して臨んだ。それまでは「流行しているデッキを予想して、それに有利な『ちょっとひねった』デッキを持ち込んだ」が、結果が残せず取り組みを一新。日本代表決定戦へは「強いデッキをしっかり練習し横綱相撲で臨んだ」という。読みは的中し、日本代表の座を獲得。「新しい取り組み方をしたときは、結果につながるときが多い。それがモチベーションにつながります」と振り返る。

 また意外にも、「競技の時間よりも、ネットで情報を集める時間の方が長い」とのこと。ツイッターで海外の強豪プレーヤーが公開しているデッキを調べたり、カードの使用率や流行をまとめた統計サイトを分析し、膨大なデータを集めている。「常にハースストーンのことを考えている。お風呂に入りながら、『このデッキの最後の1枚どうしよう』と悩んだりしますね」と、頭は常にフル回転。膨大なデータを集め、最善のデッキを作り上げて戦う。

 一方、ランニングなどの体作りは行っていない。体力をつけた方が海外遠征などの長期戦で有利とされるが、赤坂選手は「試合に勝てない人が体を鍛えたからといって、勝てるようになるわけではない。まずはハースストーンをやり込む」と言い切る。月末は1日18~20時間プレーし、ゲーム内の順位を上げながら実力を磨く。

 とはいえ、「運動しなきゃなとは思います。スーツケースを持って移動するだけで息が上がりますしね……」と、必要性は感じているよう。運動のためにとエアロバイクを買ったとのことだが、あまり使っていない様子だ。

日本の立ち位置とアジア大会

アジア大会に出場する3人の日本代表選手。右から赤坂選手、「ウイニングイレブン」に出場する相原選手、杉村選手(8月9日撮影)
アジア大会に出場する3人の日本代表選手。右から赤坂選手、「ウイニングイレブン」に出場する相原選手、杉村選手(8月9日撮影)

 eスポーツ途上国とされる日本。今年2月に日本eスポーツ連合が設立され、国内でさまざまなタイトルの大会が開かれるようになったが、世界に比べれば規模はまだまだ小さい。とはいえ赤坂選手は、「ハースストーンにおいては、世の中の人が思うほど、日本は世界より遅れていないと思う」と語る。アジア圏では日本は中国や韓国に次いでユーザーが多いとされており、有志によるイベントも開催されている。7月に台湾で行われた公式大会でも日本人選手が優勝しており、世界からも注目され始めている。ただ「日本選手は強いのに、海外に行く人が少ない。それが日本の発展が遅い原因なのかな」と危機感を持つ。

 それでも自分自身が海外で戦うことで、他の選手から「海外の大会に挑戦したい」と声をかけられるようになったという。「現状を悲観的には見ていない。むしろ、だんだん盛り上がっているのを感じる」と笑顔を見せた。

日本のハースストーンコミュニティーのために

 アジア大会への出場が決まり、注目を集めるようになった赤坂選手。その視線の多くが、ハースストーンを知らない人たちのものだ。「ハースストーンの世界大会に出ても、こうやってメディアの人に注目されることはなかった。いい成績を残せれば、もっと注目されるのかな」とも期待している。

 「eスポーツの発展を考えた時に、アジア大会は歴史的な意味を持つ。自分のためにも、日本のハースストーンコミュニティーのためにも、頑張りたい」。ハースストーンの試合は31日に行われる。

【あわせて読みたい】
・アジア大会eスポーツ日本代表、「一番いい色のメダルを持って帰る」
・eスポーツの“翼くん”―わずか3年で大舞台への切符をつかむまで
・歴史は繰り返されるのか…戦国将棋界、次の覇者は?
・耳も喜ぶ?イヤホンが高くても売れるワケ
・ピカチュウは大福? 初めて明かされる誕生秘話

無断転載禁止
37585 0 トピックス 2018/08/22 16:30:00 2018/08/22 16:30:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180822-OYT8I50058-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

 


東京オリンピックパラリンピックオフィシャル新聞パートナー

ラグビーワールドカップ

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
The Japan News
発言小町
OTEKOMACHI
ささっとー
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ