わが町も「国際観光地」に

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 「国際観光地」を目指す自治体や地域が相次いでいる。背景にあるのは2年後の東京五輪・パラリンピックを控え、訪日客をわが町へ、との思い。中でも官民から熱い視線を注がれているのが、電車とバスで都心から2時間で行ける、神奈川県・三浦半島南端の城ヶ島だ。マグロで有名な三崎港の約200メートル沖合に浮かぶ、1周4キロの島を訪ねた。(地方部・斎藤健二)

白秋の歌で一躍、人気観光地に

1周4キロの城ヶ島
1周4キロの城ヶ島

 「外国人にも来てもらい、にぎわいを取り戻したい一心です」。石橋英樹さん(47)は、8人の子どもを育てる漁師。漁協の理事を務め、地元の活性化を考える会議にも、島の若手として参加する。

 1913年、三浦半島に住んだ詩人で歌人の北原白秋は「城ヶ島の雨」を作詞した。この歌がヒットし、城ヶ島は一躍、ロマンの島として人気を集める。60年に城ヶ島大橋が架けられると、神奈川県を代表する観光地の一つとなり、最盛期の70年に観光客は200万人を数えた。

 幼い頃、土産物店が連なる通りに観光客がごった返した光景が、石橋さんの目に焼き付いている。「子どもたちが誇りに思える島にしたい」と、東京の水産関連イベントにもまめに出展し、旅やグルメ番組などテレビ局の撮影依頼にも積極的に応じる。海の環境を守りたい漁師と観光関係者が対立した、かつての構図はない。

「ミシュラン」で、外国人旅行者が認知

城ヶ島の海上釣り堀。住民のアイデアが形になった
城ヶ島の海上釣り堀。住民のアイデアが形になった

 その城ヶ島に今、追い風が吹いている。5年前、外国人観光客に影響力のある旅行ガイドブック「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で、「寄り道する価値がある」とされる二つ星を獲得したのだ。「南岸は自然がそのまま残っている。崖上を歩いたり、散歩したりしながら海、富士山を眺めて楽しむことができる」と紹介された。雨風や波の浸食でできた「馬の背洞門(うまのせどうもん)」や岩場に立つ安房埼(あわさき)灯台は、絶景の撮影スポット。その後、海上釣り堀や島の東西を結ぶ遊歩道が整備されたほか、キャンプ場を作る計画もある。

東の端に立つ「安房埼灯台」
東の端に立つ「安房埼灯台」
城ヶ島の絶景スポット「馬の背洞門」
城ヶ島の絶景スポット「馬の背洞門」

鉄道会社も総力、SNSも駆使

 「マグロ丼を食べられる店はどこですか」。城ヶ島のバス停で、4人のフィリピン人観光客が地図を広げてバスの運転手に聞いていた。彼女たちが手にしているのは、京急電鉄が企画した「みさきまぐろきっぷ」。京急線の往復乗車とフリー区間内のバス乗り放題券、マグロ料理の飲食店やレジャー施設の利用券などがセットになっている。発売枚数は2009年度の1万6000枚から、昨年度は20万枚を突破。外国人客の認知度も高まっている。

 同電鉄は、品川-羽田空港のドル箱路線に続く、新たな収益源を模索してきた。「都市近郊リゾート三浦の創生」を掲げ、総力を挙げて活性化に注力している。16年に専門の三浦半島事業開発部を設置。中堅・若手社員で「三浦半島エリア勉強会」も組織した。海外向けに三浦半島の情報を発信するSNSも開設し、現在2000人がフォローしている。神奈川県も、横浜、鎌倉、箱根に続く第4の国際観光地づくりの事業で、城ヶ島・三崎を候補地に認定している。最盛期の半数に満たない90万人台にとどまっていた城ヶ島の観光客数は昨年、140万人まで盛り返した。

 民宿経営の傍ら、城ヶ島観光協会長を計10年務める青木良勝さん(55)は外部の力にも頼ろうと、城ヶ島ファンクラブをたちあげた。島に足しげく訪れる人に声を掛けている。観光協会のフェイスブックページもメンバーの1人にボランティアで頼み、昨年から英語で発信を始めた。「アイドルをファンクラブがもり立てて成長していくのと同じ。徐々に外国人からの問い合わせも増えている」と手応えを口にする。

「国際観光地」づくり各地で続々

 「国際観光文化都市」として個別の特別法や政令に定められているのは、栃木県日光市や京都市、長野県軽井沢町など12市町。戦後まもなくからあるこの枠組みとは別に、国は近年、海外向けの情報発信やニーズ調査に補助金を出すなどし、国際観光地づくりを後押ししている。「2020年、訪日客4000万人」を目指した「明日の日本を支える観光ビジョン」を16年に策定。進行中の事業「観光立国ショーケース」では、アイヌ文化のブランド化や体験型観光を打ち出した釧路のほか、金沢、長崎の計3都市が、訪日客を地方へ誘客するモデルづくりに取り組んでいる。

 城ヶ島と同様、ミシュランをきっかけに、国際観光地に名乗りを挙げる例は多い。15年に大山阿夫利(あふり)神社からの眺望が二つ星を獲得した大山(神奈川県伊勢原市)は、外国人客が目に見えて増加。観光案内板を英語併記するなど、さらなる誘客に取り組んでいる。

 三つ星を獲得した観光地が県を越えて連携した例が、兼六園や合掌造り集落、松本城を周遊プランにした「北陸・飛騨・信州三つ星街道」(富山、石川、岐阜、長野県)。

 新倉山浅間公園(山梨県富士吉田市)は、訪日客がSNSで情報発信したのをきっかけに、外国人が続々と押し寄せるようになった。富士山の眺望スポットとして有名になり、展望台を設置するまでに成長した。

SNSをきっかけに人気観光地になった新倉山浅間公園
SNSをきっかけに人気観光地になった新倉山浅間公園

「観光振興の旗印にぴったり」

城ヶ島灯台と夕日
城ヶ島灯台と夕日

 訪日客の積極誘致を目指す地方の取り組みについて、東洋大国際観光学部の森下晶美教授は「他の地域や近隣国にはないテーマ性を確立し、リピーターや長期滞在者を狙うのがセオリー」と強調。そのうえで「交通機関やホテル、飲食店など観光振興には様々な業者の思惑が絡み、一枚岩になるのが難しい。国際観光地を目指すことは、一丸となって観光振興を進めていく格好の旗印になる」と期待を寄せている。

【動画】「馬の背洞門」をドローンでくぐり抜け!

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39718 0 トピックス 2018/09/04 15:08:00 2018/09/04 15:08:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180904-OYT8I50020-T.jpg?type=thumbnail

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