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福島宿 道に城下の面影

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 「鉄道員(ぽっぽや)」などで知られる作家・浅田次郎さんの本紙朝刊連載小説「流人道中記」で1月上旬、奥州街道「福島宿」(福島市)が登場した。いまの県庁の場所に福島城があった、幕末の福島市。当時の建物は姿を消しても、道の形などに面影が残る。地元の人たちは「小説をきっかけに歴史を知れば、町を歩くのが楽しくなる」と、浅田小説の魅力が持つ影響力に期待している。

奥州街道の要衝

江戸時代後期、奥州街道・福島宿の北南待ちにあった割烹旅館「客自軒」。現在は移築されている(2019年2月9日、福島市上名倉の市民家園で)
江戸時代後期、奥州街道・福島宿の北南待ちにあった割烹旅館「客自軒」。現在は移築されている(2019年2月9日、福島市上名倉の市民家園で)

 物語の舞台は1860年。蝦夷(えぞ)地へ流罪となった旗本・青山玄蕃と、押送役の若い与力・石川乙次郎が江戸を旅立ち、奥州街道を下る途中で立ち寄ったという設定だ。乙次郎が江戸に残してきた妻に宛てた手紙には、こうつづられている。

 「四方を山に囲まれているせいでしょうか、湿気がこもってひどく蒸し暑い晩です。ここは板倉内膳正様三万石の御城下、会津やら米沢やら相馬やらへの街道が岐れている要衝なので、古来御譜代の大名家が治めておられるそうです。これまではなるたけ御城下の宿場は避けてきたのですが、くたびれ果てるわ日が昏れるわで、この福島に宿を取ることとしました」

カギ形で敵に備え

古地図を眺め、「歴史を知って町歩きを楽しんで」と語る江代さん
古地図を眺め、「歴史を知って町歩きを楽しんで」と語る江代さん

 福島宿は、福島城の城下町。奥州街道には、荒川にかかる信夫橋を渡ったところに検問所「江戸口」があり、カギのような形に曲がりながら歩いて行くと、いまの福島豊田町郵便局付近に同「仙台口」があった。二つの検問所の間(約1・9キロ)には、七つの町があった。

 国見町山崎の郷土史家江代正一さん(70)によると、検問所を通れるのは日の出から日の入りまで。「宿場には、日が高いうちに入りたい。乙次郎らも時間を考えて前の宿場町を出発していたはずだ」と語る。町の中心部には次の宿場までの距離を書いた石「里程元標」があり、参勤交代などではこの石を見て旅程を決めていた。

 道がカギ形なのにも理由がある。侵入してきた敵に、城下町の姿を奥まで見えにくくする防御のための構造だ。七つの町にもそれぞれ役割があった。旅人が最初に入るいまの柳町付近には、長旅に疲れた旅人を目当てにした茶屋などが並んだ。当時の北南町には宿屋や歓楽街があり、俳人の松尾芭蕉も泊まったと伝えられる。小説の中で、乙次郎らはここに泊まったとみられる。

「小説機に歴史知って」

 歴史の面影は地名にも残る。市教育委員会によると、江戸時代から人が住んでいた町は「まち」、明治以降にできた町は「ちょう」と読む。いまの本町には、大名らが泊まる本陣があった。

郷土史をまとめた資料を手に、「若い人にも歴史を知ってほしい」と語る長沢さん
郷土史をまとめた資料を手に、「若い人にも歴史を知ってほしい」と語る長沢さん

 同市万世町で衣料品店「Habit」を営む長沢純子さん(68)は、先祖がいまの柳町の辺りで薬やしょうゆを商っていたという。当時のことを調べようと町を歩き、冊子にまとめている。「福島市って何もないと思っていたけど、調べてからは町を歩くのが楽しくなった。小説をきっかけに、若い人にも歴史を知ってほしい」と語る。

 また、奥州街道を現代に伝えようと写真コンテストなどを開催してきた団体「奥州街道福嶋村」会長の飯沼信行さん(72)は、「人気作家の浅田次郎さんの小説に福島宿の名が登場するなんて、大変うれしいことだ。読者の皆さんには、ぜひ主人公になりきって奥州街道のいまを歩いてみてほしい」と話している。

奥州街道

 江戸・日本橋から北上して陸奥国を縦断し、津軽半島の三厩(みんまや)(青森県外ヶ浜町)を経て、海路で松前(北海道松前町)に達する。現在の国道4号とおおむね一致し、総延長は900キロを超える。幕府が整備したのは白河(福島県白河市)まで。これより北は諸藩が整備したが、一般には奥州街道の延長とみなされている。参勤交代の大名や、松尾芭蕉らの文人、日光などを目指す庶民たちも盛んに往来した。

 (2019年2月10日付の福島県版に掲載)

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445140 1 トピックス 2019/02/15 10:30:00 2019/02/15 10:30:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190214-OYT8I50045-T.jpg?type=thumbnail

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