電車へのあこがれ乗せて60年~「プラレール」を生む裏側とは

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 プラスチック製のレールをつないで列車を走らせるおもちゃ「プラレール」が、今年で発売60周年を迎えた。青いレールを床に敷き詰め、車両を走らせて遊んだ人も多いだろう。鉄道網の発達とともに、日本の家庭を走り続けたプラレール。開発を担うタカラトミープラレールマーケティング部の平林思問(しもん)さんに、プラレール作りの秘話を聞いた。

走ったレールは地球2周半!

1959年に発売された「プラスチック汽車・レールセット」。当時は手ころがし式だった(タカラトミー提供)
1959年に発売された「プラスチック汽車・レールセット」。当時は手ころがし式だった(タカラトミー提供)

 「シャーッ」という乾いたモーター音と共に、小さな新幹線や機関車が走り出す。同時に何両も走らせたり、好きな角度から眺めたり……。日本の家庭になじみのおもちゃ「プラレール」が、今年で発売60周年を迎えた。60年間で発売された商品は約1480種類、1億6900万個以上。レールを全てつなげると、総距離は9万8700キロ・メートル以上で、地球の約2周半に相当する。タカラトミーの中でも一番古いブランドだ。

 原型は1959年に発売された「プラスチック汽車 レールセット」。金属のおもちゃが主流だった時代に、当時の最新素材だったプラスチックを使って作られた。曲線レールを8本つなげると、直径47センチの円になる。家族だんらんの場だった「ちゃぶ台」の上で遊べる大きさとして設計されている。レールの青色にも意味がある。レールのサンプルに何色かの色を塗装し、おもちゃ売り場の蛍光灯の下で比較したところ、最も見栄えが良かったのが青色だった。

 以降、レールの規格は60年間変わっていない。そのため、60年前のレールと最新のレールをつなげて遊ぶこともできる。親が昔遊んでいたレールを使ったり、近所のお兄ちゃんが別の家の子どもに譲るなどして、プラレールを次の世代につなげていく。「遊ぶ楽しさはどの世代でも同じ。親御さんが『昔こうやって遊んだなあ』と懐かしみながら、子どもと一緒に遊ぶなど、プラレールと一緒に、遊びの楽しさも継承していってほしい」と、平林さんは語る。

実際の車両をリアルに再現~開発期間は1年以上

長いノーズが特徴の700系新幹線(タカラトミー提供)
長いノーズが特徴の700系新幹線(タカラトミー提供)

 プラレールの魅力のひとつが、実際の電車を再現した車両だ。プラレール開発の中心的役割を果たしたタカラトミー2代目社長の富山允就(まさなり)さんも生前、「本物の車体の持つカッコよさと実物感を強調しつつも、可愛(かわい)さを出すデザインが一番大事」と振り返っている。

 鉄道会社にとって、車両がいかに忠実にプラレール化されるかは大切なポイント。形だけでなく、複雑化している車両の模様なども鉄道会社の「こだわり」だ。一方で、プラレールとして走らなければいけない。特に新幹線では、極端に長いノーズ(先頭車両のとがった部分)をそのまま再現すると、走れなかったり曲がれなかったりすることがあるため、多少のデフォルメが必須になる。子どもが遊ぶ時の安全性を考え、とがった部分を丸くすることもある。

 開発では何度もテスト模型を作り、色や形を調整しながら、完成を目指す。プラレール化の決定から発売までにかかる時間は1年以上。「実際の車両を再現しながら、プラレールらしい、愛らしくてふんわりとした絶妙な形を目指します」と、平林さんは語る。鉄道会社にとっても、自社の車両がプラレールになることは大きなPR効果につながる。プラレールの知名度もあって、プラレール化の提案は鉄道会社に好意的に受け取られやすいそうだ。

 実際の車両の再現にこだわる一方、新しい取り組みにも挑戦している。大きな「ドクターイエロー」の車体が変形し、屋根や壁が開いて車両基地になるアイテムや、「きかんしゃトーマス」シリーズの車体、アニメ「シンカリオン」(※)に登場するロボットを再現したプラレールも発売している。特にシンカリオンのプラレールは、車両が変形合体し、ロボットになるという商品だ。

変形合体する「シンカリオンE5はやぶさ」(タカラトミー提供)
変形合体する「シンカリオンE5はやぶさ」(タカラトミー提供)

 変形や合体など、子どもが「カッコいい」と思うギミックにどんどん挑戦する一方、「実際の車両をモデルにした商品なので、実際の鉄道に置き換えたときの『安全性』についてもしっかり考慮しています。だから、事故や脱線を想起させるような表現は、絶対に使いません」と平林さんは強く語る。「トーマス」シリーズでは世界観を踏襲し、落石のギミックを組み込んだ新製品を予定しているが、本物の鉄道をモチーフにした製品では、鉄道会社が大切にする「安心・安全に運行する」という理念を守っている。「新しいことに挑戦する一方、基本の部分は大切にしたい」と平林さんは話す。

(※)シンカリオン=「新幹線変形ロボ シンカリオン」として2015年から展開されているプラレールシリーズ。「新幹線の車両からロボットに変形し、巨大怪物と戦う」というコンセプトで商品を展開している。18年からテレビアニメが放送されている。

電車への「あこがれ」を手元に

「プラレール博」での巨大ジオラマ(タカラトミー提供)
「プラレール博」での巨大ジオラマ(タカラトミー提供)

 多くの子どもたちは、電車をはじめとした乗り物に夢中になる時期を一度は経ている。平林さんはその理由を「子どもにとって電車は、『大きなものが格好良く走って、活躍する存在』。その姿にあこがれるのではないでしょうか」と推測する。プラレールはそのあこがれを、手元で再現できるおもちゃだ。

 そのため、プラレールでは「動き」を大切にしている。おもちゃ屋ではプラレールが走る小さなコースがあったり、宣伝ビデオが流されている風景をよく見かける。大型イベント「プラレール博」では巨大なジオラマが展示され、数百の車両が同時に走っている。動く様子を見せることで、子どもが実際に走る電車の姿を想像し、購入につながる場合が多い。

 子どもだけでなく、大人の持つ電車へのあこがれにも応える。「四季島」などの観光列車のプラレールは、食堂車を再現し、車両のライトを点灯させることもでき、大人も楽しめる豪華な仕様にしている。子どもと遊べるように、2012年まで走った300系と現役の700系ののぞみがセットになった商品もある。昔遊んでいたプラレールの思い出を、子どもと一緒に遊びながら再現するのは、親にとっての喜びのひとつだ。

変わらない遊びをこれからも

「もっと多くの人にプラレールを知ってほしい」と笑顔の平林さん
「もっと多くの人にプラレールを知ってほしい」と笑顔の平林さん

 子どもの遊びは多様化し、最近はスマートフォンやタブレット端末などの電子機器が、遊びの中に組み込まれ始めている。そのような中でも、プラレールは60年の間、多くの子どもに遊ばれてきた。長寿の理由を平林さんは「目で見て、自分の手で作ること」だという。「直線や曲線、立体のレールを使って、自分でコースを予測しながら、体を動かしてレールを並べる遊びは、タブレット端末ではできない」と語る。並べたレールにさまざまな電車を走らせる楽しみは、60年間変わらない。

 発売60周年の今年は、大型イベントや限定商品の展開に力を入れる。同じく60周年の菓子「ベビースターラーメン」とのコラボレーションを行っているほか、3月23日には京都鉄道博物館に実物大の「青いレール」を敷く予定だ。その一方で、時代に合った車両を作ったり、変形や合体したりする車両など、新しいチャレンジも続けていく。

 「プラレールをまだ知らない、知っていても遊んだことのない人は、まだまだたくさんいると思う。60年という節目を機に、プラレールを知らない方に興味を持ってほしい」子どもたちの電車への「あこがれ」を乗せて、プラレールはこれからも走り続ける。

【あわせて読みたい】
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481609 0 トピックス 2019/03/11 11:00:00 2019/03/12 13:31:51 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190311-OYT8I50019-T.jpg?type=thumbnail

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