[長崎原爆]<下>被爆語る 自ら世界に

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

80歳を超えて英語学び

外国人留学生を前に、英語で被爆体験を語る計屋道夫さん(7月20日、長崎市の長崎外国語大で)=坂口祐治撮影
外国人留学生を前に、英語で被爆体験を語る計屋道夫さん(7月20日、長崎市の長崎外国語大で)=坂口祐治撮影

 80歳を超えて本格的に英語を学びだしたのは、どうしても直接、世界に訴えたかったからだ。

 「Humanity cannot co-exist with nuclear weapons(人類は核兵器と共存できません)」

 7月20日、長崎市の長崎外国語大。同市の計屋はかりや道夫さん(83)が英語で語る被爆体験を、米国やフランスの留学生が真剣な表情で聞いていた。

 8歳の時、爆心地から3・8キロの自宅で被爆した。友達と爆心地近くを流れる浦上川で遊ぶ約束をしていたが、母親から「宿題をやって行きなさい」と叱られ、自宅で絵日記を書いている時だった。その友達とは二度と会えなかった。近所の広場では、毎日誰かが犠牲になった家族を焼いていた。

 大学卒業後、高校の理科教諭となり、生徒には折に触れて被爆体験を話した。「より多くの人に伝えたい」と2008年、修学旅行生らに講話を行う長崎平和推進協会継承部会に入った。

 海外で講話する機会も得た。ただ、通訳の言葉には友達を亡くした悲しみや、次々に遺体が焼かれていく悲惨さを伝える重みが感じられなかった。「原爆の恐ろしさが伝わっていない」。歯がゆかった。

 転機は17年に国連で核兵器禁止条約が採択されたこと。海外の若者を中心とした市民団体の連合体「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICANアイキャン)」の精力的な働きかけが、条約実現に向けた大きな力になったと知った。国内だけに目を向けていては駄目だ。被爆者の間で「海外に自らの言葉で被爆体験を発信すべきだ」との声が高まった。

 18年4月、他の被爆者と共に継承部会内に英語研修班を発足させた。現在、70~90歳代の6人が講師の指導の下、被爆講話の英訳や発音チェックなどを重ねる。

 体験を聞いた留学生や外国人観光客から「直接話しかけられると心に響く」と言われるたび、奮い立つ。「下手な英語でも気持ちは伝わる。核兵器に対する怒りや平和への願いを自ら伝えることが核廃絶につながる」と信じている。

核兵器廃絶 思い次世代へ

「Peace」と織り込んだ帯を手にする福島富子さん。海外で核兵器廃絶を訴える際に着けるつもりだ(7月24日、神奈川県葉山町で)
「Peace」と織り込んだ帯を手にする福島富子さん。海外で核兵器廃絶を訴える際に着けるつもりだ(7月24日、神奈川県葉山町で)

 神奈川県葉山町の福島富子さん(75)は生後7か月で被爆した。爆心地から2・5キロの自宅で寝かされていた時、爆風で天井が崩れ落ちた。奇跡的に無傷だったと兄から聞いた。物心がつく前に五島列島の親類宅に預けられ、被爆者という自覚はなかった。

 移り住んだ神奈川の被爆者団体から誘いを受け、30歳代で活動に参加。体験を語る被爆者を支える一方で、「原爆は人ごと」という意識は変わらなかった。しかし、12年の平和祈念式典で変化が生じた。代表で献花を任され、「私は被爆者なんだ」という意識がようやく芽生えた。

 15年には核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせて渡米。現地の大学で初めて被爆体験を語ったが、記憶がない自分が人前に立つことに気後れした。帰国後、記憶を補うために原爆や戦争に関する本を読んで知識を深めた。

 ICANのノーベル平和賞授賞式で、17年にノルウェーのオスロを訪れた時だ。「生きていて良かった」。一緒に式典を見ていた被爆者が漏らした一言にハッとした。「核兵器禁止条約ができたのも、ICANが活動を始めたのも、全ては『同じ苦しみを負わせたくない』と声を上げ続けた人たちがいたからだ」。被爆者が世界を動かしたと実感し、自分の役割を自覚した。

 今年、高齢になった被爆者の証言を聞き取る活動を始める。「思いを次世代に伝える。それが記憶のない私にできる唯一のこと」。先輩たちと同じように、核なき世界に向けた歩みを進めていく。(遠藤信葉、牟田口洸介が担当しました)

無断転載・複製を禁じます
1386146 0 トピックス 2020/08/02 05:00:00 2020/08/04 09:58:41 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200803-OYT8I50106-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

新着クーポン

NEW
参考画像
500円400円
参考画像
ランチでご来店のお客様にジェラートをサービス
参考画像
アクティビティご利用でソフトドリンク1本サービス

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ