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読売新聞×中央公論新社~連載小説の全てを語る

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 読売新聞オンラインの人気コーナーである連載小説には、朝夕刊に連載中の小説に加え、読売新聞オンラインオリジナルの作品もあり、多くの方にご愛読いただいています。今回は、「幸村を討て」を担当する中央公論新社・根本篤さんと、「タラント」を担当する読売新聞東京本社文化部・待田晋哉記者の対談を通じ、連載小説の舞台裏や編集者の仕事の魅力について深掘りします。

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取材や会話で作家をサポート

――読売新聞オンラインで連載された池上永一先生の「海神(わだつみ)の島」が、出版されました。

根本篤(ねもと・あつし) 。中央公論新社文芸編集部。現在は今村翔吾「幸村を討て」を担当。

根本 山田風太郎賞を受賞された前作「ヒストリア」以来、3年ぶりの新作です。多作とは言えない池上さんの受賞後第1作という節目の作品を担当させていただくということで、連載開始前から緊張感を持って臨みました。池上さんとの原稿のやり取りは初めてだったので、最初は、互いに相手の出方をうかがうようなところもあったかもしれません(笑)。連載が始まった2019年4月は、読売新聞オンラインの誕生直後ということもあり、それぞれにより気合いが入って、白熱した言葉のやり取りを重ねました。

――文芸編集者とはどのような仕事をするのですか?

根本 ケースバイケースですが、一般的に、連載前に作家の方とたくさん話をすることから、作品作りのサポートが始まります。テーマやモチーフしか決まっていなければ、「ここに取材に行きませんか」と提案したり、資料を探してお渡ししたり。「海神の島」では、同世代の池上さんと話す中で、作品につながる共通言語がたくさん出てきました。例えば、池上さんから「トレジャーハンター」というキーワードが出て「インディ・ジョーンズですね!」と返したり、「三姉妹」と言われて「キャッツ・アイですか!?」と納得したり(笑)。そうしたキャッチボールから、池上さんの中で徐々にイメージが固まっていった部分もあると思います。
 連載中ですと、時には「ここの心情描写をもう一歩踏み込んで書いていただけませんか」などと、リクエストすることもあります。中央公論新社の場合は、連載前から書籍化まで一人の編集者が担当することがほとんどです。作品作りにずっと伴走した立場からすると、書籍になった時の喜びは計り知れません。作家の方がよく作品を我が子に例えますが、編集者にとっては甥や姪に例えられるくらい、愛情を感じます。

――同じ編集担当でも、出版社と新聞社で、仕事の内容は違いますか?

待田晋哉(まちだ・しんや) 。読売新聞文化部記者。現在は角田光代「タラント」を担当。

待田 私が大切にしていることは、文化部の新聞記者として原稿をいただくことです。記者の仕事の根本には、「このニュースを読者に伝えたい」と思う強い気持ちがあります。同じように連載小説の仕事も、「この小説を読者に届けたい」と熱く思うことが一番大切です。
 具体的な仕事としては、電子メールなどで原稿をいただき、出稿の作業をしていきます。言葉の遣い方などに気を配り、締め切りを守って作業をするのが基本なのは、ニュース原稿を扱っているときと変わりません。気持ちよく執筆をしていただくように心掛けるのも、ほかの寄稿をいただくときと同じです。執筆に絡んだ事務作業がご負担にならないよう気をつけたり、原稿をいただけば感想を送ったりもします。出版社の編集者のように細かなサポートはできていないかもしれませんが、普段ニュースの現場で取材している記者が小説の担当をすることで、作家の方にもし刺激になるようなことがあればうれしく思います。ただ自分の担当している小説が面白いと思う気持ちだけは、誰にも負けないつもりです。

――連載小説は毎日一話ずつ更新されていきます。どこで区切るかなどは、誰が決めているのでしょうか。

根本 ご自分で区切って原稿を送ってくださる作家の方もいらっしゃいます。「海神の島」の場合、池上さんから一か月分の原稿をいただき、私が区切っていました。もちろん、区切る場所については、校正の過程で池上さんにご確認いただくわけですが。できるだけ最後の一文を、「この後どうなるの?」と思わせるよう区切ることを心掛けていました。オンラインだと紙面に比べ、一回あたりの文字量の融通が利く点がありがたかったですね。

待田 連載小説は毎日読まれていくものです。作家の方々によって、それぞれの形で工夫をされているように感じます。一話ごとに山場を作る方もいれば、毎日話を展開させながらも、とりわけ一週間や十日などの流れの中で大きな山場を作る方もいらっしゃいます。

――読売新聞オンラインでは、小説を第一話からまとめ読みできますね。

待田 紙面では読み逃すと月に一度載る「あらすじ」を待つ必要がありました。オンラインがあればすぐに第一話から読み返せるので、紙面と組み合わせて楽しみが増します。読売新聞オンラインの「タラント」のページには、詳しいあらすじや人物相関図も掲載されているので、小説を読む手助けにしていただけたらと思います。

根本 このバラエティ豊かな4人の連載陣は、今、どの小説誌でも同時には読めません! まさに、読売新聞オンラインならではです。文壇のトップランナー・角田光代さん、玄人筋もうならせる実力派の中島京子さん、ファンタジー小説の匠・茅田砂胡さん、そして今まさに文学賞レースまっただ中の新進気鋭・今村翔吾さん。この豪華ラインナップの最新作を、オンラインで第1話から読み返せることのすごさは、大いに強調したいですね。

大震災で気が付いた、連載小説の役割

――昨今は多くの媒体で、ウェブ小説を読むことができます。そのような中、新聞や新聞社のサイトに小説が載っている意義をどうお考えですか?

秘宝を巡り、三姉妹が大冒険。単行本が9日、中央公論新社から発売された。

待田 「海神の島」からは、沖縄に住む人々の生きる力を感じました。新聞記事で沖縄について書くとき、例えば「那覇でこういう出来事がありました」というように、ストレートニュースの形を取って伝えていきますよね。小説ではその根本にある、想像力や生きるエネルギーなど、ニュースにつながる核のようなものが描かれているように感じます。そのような意味で、新聞に載っている新聞小説は、記事と同じくニュースと言えるのではないかと思っています。

根本 作家という非常に優れたフィルターを通じ、現代社会のあれこれが言葉で紡ぎだされているという意味では、まさにニュースと言えるでしょうね。「幸村を討て」の今村さんは、歴史・時代小説の書き手ですが、現代に通ずる人間の本質を描くことへの眼差しを常に感じます。

待田 記者の立場からは見えない風景を、作家の方は心の目で捉え、小説の形で描き出しているのではないでしょうか。現代ものの小説はもちろん、たとえ時代小説やファンタジーであっても、作家が持つ社会へのまなざしが作品に投影されているような気がします。

根本 池上さんは「ニュースの中に連載小説があるのが新鮮だ」とおっしゃっていました。日本や世界についてのニュース、つまり現代社会そのものの中に、フィクションである小説があることが興味深かったそうです。普天間基地や尖閣諸島に関するニュースと、沖縄出身の三姉妹が主人公の「海神の島」が並立していることに、書き手としてそそられるものがあったのでしょう。普段は、小説誌など小説専門の媒体で書いているからこその発想でしょうか。作家は色々なことに刺激を受けながら執筆されますので、掲載される媒体によって、表現や作品をチューニングしたとしても不思議ではありません。

――ニュースの中に小説があるという視点は面白いですね。

待田 小説を読むことは、人の心を穏やかに和らげる効果があると思います。2011年3月11日に東日本大震災が発生したとき、私は文化部の若手記者として連載小説を担当していました。当時の紙面には大きな被害の状況を伝える記事と写真が並んでいました。そんな中、いつもと変わらず掲載されていたのが連載小説です。青山七恵さんの「あかりの湖畔」が木村彩子さんの美しい挿絵と一緒に載っていて、被災地の被害状況にやりきれない気持ちになりながら、少しだけ救われるような気持ちになったことを覚えています。そのとき、新聞小説の役割に気づきました。新聞小説は、新聞を読む私たちの心の重心を保ってくれるような存在なのだと。
 最近の読売新聞オンラインでも、新型コロナウイルスの問題をはじめ、日々、心が落ち着かなくなるようなニュースが並んでいます。そのような中でも、連載小説は毎日変わらずに更新され続け、読むとホッとして、ざわついた心が静かになっていきますよね。こうした役割は、小説にしかできないのではないでしょうか。

「読売新聞オンライン」連載小説裏話

――連載陣の人選は、どのような基準で行われているのでしょう?

根本 読売新聞オンライン限定という連載枠なので、紙面小説と違うことにもチャレンジしていこう、というのが基本的な考えです。茅田砂胡さんの連載はその一例と言えるかもしれません。ファンタジー小説、最近でいうところのライトノベルに含まれる作品を、読売新聞が持つ媒体で連載するのは、オンラインならではの挑戦だと思います。
 もしかしたら、紙面連載に比べて表現でもチャレンジしているかもしれませんね。池上さんの作風の一つとして、やや過激な表現がありますが、よくぞ許されたな、と(笑)。読売新聞オンラインという新しい媒体に掲載される作品だからこそ、作家も編集者も、新たな挑戦ができる余地があるように思います。

待田 紙面小説の作者の人選は、原則として文化部の記者が進めていきます。自分が心の底から面白いと思わなければ、読者の方にも喜んでもらえないからです。また長丁場の連載は、作家の方に大きな負担をかけますし、記者にとっても大きな仕事です。本当に好きな尊敬する作家でなければ、担当はつとまりません。
 文化部の文芸担当は、社内の誰よりも色々な小説を読み、情報を集め、より良い小説を読者に届けられるよう努力をしています。最終的には、部内や社内で丁寧に話を詰め、みんなで「この人の作品が読みたい」と思えるように納得された作家が選ばれています。

――過去に読売新聞オンラインや読売プレミアムに掲載されていた作品で、話題になったり、印象に残ったりしている作品はありますか?

連載中から大きな反響を呼び、映画化もされるなどロングセラーとなった「Red」(中公文庫)。

根本 島本理生さんの「Red」(読売プレミアムで2013年~14年連載)は、30代の主婦の性愛と苦悩を描いた作品なのですが、連載時にものすごく反響があったと聞いています。その後、単行本・文庫共にロングセラーとなり、今年映画化され改めて話題になるなど、長く読まれ続けています。デビュー以来、思春期の少女を描き続けてきた島本さんが、初めて大人の女性の官能に挑戦したことで、単行本刊行時には新境地とも言われました。また、「盤上の向日葵」(読売プレミアムで2015年~17年連載)も、中央公論新社が担当した連載の中で、とても注目された作品です。こちらもドラマ化されましたが、藤井聡太二冠の活躍で将棋ブームが熱を帯びている中、このたび文庫化されますので、さらに話題となるのではないでしょうか。
 読売新聞オンライン立ち上げの際には、編集部で協議のうえ、まずは今野敏さんと上田秀人さんにご執筆を依頼しました。読売新聞オンラインは購読者であれば誰もが無料で利用できるサービスなので、非常に多くの方に読んでいただけます。だからこそ、警察小説をはじめエンタメ小説の雄である今野さんと、歴史・時代小説の大家である上田さんという、知名度、実力共にトップクラスの2先生にお引き受けいただけたのだと思います。

待田 10月末に中央公論新社から刊行される予定の星野智幸さんの「だまされ屋さん」は、みなさんの記憶にも新しいと思います。題名からして、これは一体何を意味しているのだろうと思わせるような魅力があるのではないでしょうか。現代社会を舞台にしながら、家族や人のつながりのあり方を考えさせるすばらしい作品です。
 また、中村文則さんの「R帝国」は、近未来社会を舞台にしたアンチ・ユートピア(反理想郷)小説です。戦争が日常的に行われるようになった社会での人間の尊厳とは何かを問います。この作品は紀伊國屋書店のスタッフが選ぶ「キノベス!2018」の1位にも輝きました。星野さんや中村さんのような現代文学の最前線をゆく作品も、連載されています。
 また、2019年にお亡くなりになった橋本治さんの「黄金夜界」も忘れてはならない作品です。明治の読売新聞の名声を高めた尾崎紅葉の「金色夜叉」を現代に鮮やかによみがえらせた作品でした。思い返せば思い返すほど、すばらしい小説が連載されているなと実感させられます。いずれも単行本は、中央公論新社から刊行されています。

――現在連載中の作品について、魅力や読みどころを教えて下さい。

待田 「タラント」は、「源氏物語」の現代語訳を経た角田さんが5年ぶりに挑む連載小説です。角田さんは「八日目の蝉」や「対岸の彼女」など、現代社会で生きる女性の喜びや悲しみを書くことを得意としてきましたが、近年は、日本の近代史と向き合った「ツリーハウス」など、時代や歴史といった要素を織り込んだ作品も執筆されています。今作では、現代女性の感情を細やかに書く持ち味はそのままに、パラスポーツや歴史、戦争といった様々なテーマが折り重なった作品になっています。長い時間をかけて「源氏物語」を訳された経験も、直接には目に見えない形で新しい作品に深みを添えています。
 木内達朗さんが手掛ける挿絵にも注目です。重松清さんや池井戸潤さんなどの挿絵を担当されているベテランで、ノスタルジックな味わいのある画風が魅力的です。連載小説では、作家と挿絵を描く人との相性がとても大切です。作家にとって挿絵とは、創作を刺激してくれる重要な存在です。その意味では、角田さんと木内さんは理想的な関係ではないでしょうか。メイキング動画をオンラインに公開しているので、ぜひご覧ください。

根本 「幸村を討て」の今村さんは、今年吉川英治文学新人賞を受賞され、直木賞にノミネートされるなど、まさに今、最注目の作家です。18年春の初対面の打ち合わせ時、今村さんの口から「幸村を討て」というタイトルがポロっと出てきて、「それ、書いてもらえませんか」と持ち掛けました。その後、読売新聞オンラインの立ち上げが決まり、連載をお願いしたのですが、今の今村さんの人気ぶりなら、お願いしても数年待ちでしょう……。奇跡的なタイミングで連載が実現して、ラッキーでした。
 「幸村を討て」では、大坂の陣を舞台に多くの武将が登場しますが、その全員がどこかで「幸村を討て」と言います。どういうシチュエーション、どのタイミングで口にするのか、注目してください。

――最後に、オンラインの読者の皆様に対して一言ずつお願いします。

待田 「タラント」は、世の中で一番面白い小説だと、誰よりも自信を持って皆様にお届けしています。このすばらしい小説が毎日紡ぎ出されてゆく時間を、読者の方と一緒に分かち合えたら何よりもうれしいです。ぜひお楽しみいただけたらと思います。

根本 同じ媒体に、個性的な4人の作家が並んでいて、コース料理に例えるなら、全てがメインディッシュです。一気読みするとお腹いっぱいになるかもしれません(笑)。全作品を最初から読む場合には、毎日少しずつ召し上がることをおすすめします。日々、心の重心を保つのに最適だと思います。

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1465209 0 トピックス 2020/09/11 15:15:10 2020/09/11 18:48:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/海神n_1-1.jpg?type=thumbnail

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