【解説】はやぶさ2着地 太陽系の進化 謎に迫る
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日本の探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウへの初着地に成功した。地球から遠く離れた天体から試料を採取する日本独自の技術が確立しつつあることを示すとともに、今後の試料分析で太陽系の進化や生命の起源に迫れる可能性がある。
探査機を数億キロ・メートル以上離れた小天体に送り込み、地表面などの試料を採取して地球に持ち帰る探査は、「サンプルリターン」と呼ばれる。数ある宇宙探査の方法でも最も難しい。
2014年12月に打ち上げられたはやぶさ2が、昨年6月のリュウグウ到着までの総飛行距離は約32億キロ・メートルに及んだ。地球と太陽の距離の21倍に相当する。直径わずか900メートルのリュウグウに正確に到着するには、日本からブラジルにある直径6センチの的を狙うほどの飛行技術が求められる。
さらに、今回成功した着地の運用では、通信に往復40分かかる中で、着地寸前には誤差数メートル以内という極めて精密な制御が求められた。05年に別の小惑星に着地した初代はやぶさは、着地時の衝撃でたまたま微粒子が回収できた。この反省をいかし、小惑星滞在期間を1年半と長めにとって、「しつこいぐらいの準備」(はやぶさ2チーム)で慎重に着地場所を選んだ。
JAXAは今回、初代では故障したイオンエンジンや制御装置を強化するなど、機体の改良を重ねた。初代はやぶさを経験した若手メンバーがチームの核となり、あらゆるトラブルの可能性を訓練でつぶしていった。着地成功は、日本の小惑星探査技術が成熟しつつあることを示すものだ。
リュウグウなどの小惑星は、宇宙に漂うちりが集まってできた小天体が繰り返し合体してつくられ、太陽系誕生初期の様々な情報が詰まった宝庫だ。特に、リュウグウは、たんぱく質など生命をつくるのに欠かせない有機物や、水を多く含んでいると考えられている。
同様の小惑星探査は、米国も並行して進めており、これらの試料を地球に持ち帰って詳しく調べれば、どのように太陽系が進化していったか、生命の「原材料」はどこから来たのかといった謎に迫ることができる。
初代はやぶさからはやぶさ2に継承、蓄積された探査技術は、日本の大きな強みだ。この経験をいかし、宇宙探査や宇宙科学の研究をリードしていってほしい。(科学部 野依英治、冨山優介)