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AIで来客予測90%的中…経験と勘の何がダメだったのか

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 人工知能(AI)による来客予測システムを活用し、仕入れなどに活用してコスト削減する取り組みが始まっている。ソフトバンクを退社して実家の老舗食堂を継いだ男性が開発した。(津支局 黒岩宏行)

東京の讃岐うどん専門店で導入…的中率は90%

 東京・中野の讃岐うどん専門店。人員配置や仕入れに、人工知能(AI)による来客予測システムを活用してコスト削減を図ってきた。しかし、コロナ禍の昨年、休業や時間短縮営業でデータ不足となり、システムは当てにならなくなった。それでも、AIは地道に売り上げデータを蓄積しては学習を続け、3月上旬には予測的中率も本来の性能に近い90%近くまで回復した。

 店長の北田清さんは「可能性のあるシステム。今回の想定外の事態でAIが得たデータも、将来きっと役立つはず」と話した。

「経験・勘・度胸」頼みからの脱却…膨大なデータ集積

AIによる来客予測システムを開発した「ゑびや」の小田島春樹社長(三重県伊勢市の「おはらい町」で)=尾賀聡撮影
AIによる来客予測システムを開発した「ゑびや」の小田島春樹社長(三重県伊勢市の「おはらい町」で)=尾賀聡撮影

 システムを開発したのは、伊勢神宮(三重県伊勢市)内宮前の「おはらい町」で老舗食堂などを営む「ゑびや」社長の小田島春樹さん。ビジネスや流通に強い関心を抱き、孫正義氏に憧れてソフトバンクに入社したが、結婚を機に2012年、妻の実家が経営するゑびやに入った。

 おはらい町は、正月三が日や行楽シーズンとそれ以外の時期とでは客足に大きな差があり、経営は安定していない。さらに伊勢志摩地方は、南海トラフ巨大地震の脅威と、ほぼ毎年の台風被害にも直面している。「リスク管理をしなければ」。小田島さんは在庫や売れ筋商品、人員配置、売上高などをパソコンに手入力して管理することから始めた。

 その後、経営者らが集う勉強会に参加し、三重大大学院に入学してICT(情報通信技術)に精通する人脈を築くと、従来は「経験・勘・度胸」が頼りだったため、来客予測のシステム化に乗り出した。

 店先を行き交う観光客らをモニター画面で自動解析し、通行量をチェック。曜日や時間帯、月単位で変わる人気メニュー、天候、地元行事など膨大なデータを集積し、それらを基に16年には、AIが95%の的中率で来店者数を予測するシステムを生み出した。

飲食店向けの「混雑予報AI」も

2018年のおはらい町の賑わいの様子
2018年のおはらい町の賑わいの様子

 効果は絶大で、12年に1億円余りだった売上高は、18年には4億8000万円に。余分な仕入れが省け、食品ロスも減った。インターネットや雑誌で紹介され、各地の講演に招かれる機会が増えると、「システムを導入したい」との申し出が相次ぐようになった。

 そこで、システム販売のため新会社「EBILAB(エビラボ)」を18年に設立。オフィスはゑびや2階に置き、システム開発やメンテナンス担当の一部社員は国内外で分散勤務する。

 最初の年、販売実績約30件、売上高4000万円と好調なスタートを切った。コロナ禍の昨年には飲食店向けの「混雑予報AI」の提供も始め、販売実績と売上高も約110件、1億円と成績を大きく伸ばしている。混雑予報AIは、ゑびやでも活用している。

 昨年12月、AIは伊勢神宮の初詣客を「7割減」と予測した。小田島さん自身も信じられず、仕入れを増やした。しかし、人出は例年の3割にとどまり、結果的にAIの予測は正しかった。「人は経験に頼って希望的観測をしてしまう」と実感した小田島さん。「コロナ禍でも、みんなが楽しく日常生活が送れるシステムをつくりたい」と力を込めた。

ゑびや(三重県伊勢市)

「混雑予報AI」を活用し、「ゑびや」店内の空き状況を示すモニター
「混雑予報AI」を活用し、「ゑびや」店内の空き状況を示すモニター

 1912年(大正元年)頃、食堂として創業。伊勢神宮内宮入り口の宇治橋まで徒歩1分の場所に、郷土の味を大切に守る「ゑびや大食堂」と土産物店「ゑびや商店」を構える。社員約20人。このうち、エビラボを兼ねる社員の一部は、東京、名古屋、沖縄、シンガポールに分散勤務している。

    導入取り組み1割未満
  •  独立行政法人・情報処理推進機構(IPA)は2019年、経済産業省の情報処理実態調査対象企業に呼びかけてAIに関するアンケート調査を実施し、協力した全国541社の回答をまとめている。
  •  それによると、「AIを既に導入している」企業は4・2%、「実証実験を行っている」のは4・8%で、導入に取り組んでいる企業は1割に満たない。
  •  ただ、「利用を検討中」が10・5%、「関心はあるがまだ特に予定がない」が51・2%と、AIに注目する企業は少なくない。
  •  IPAは「多くの企業が導入費用やランニングコストに不安を抱いており、AIを扱える人材が不足しているといった事情もある。人材育成が求められる」と指摘している。

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1936221 0 トピックス 2021/03/26 05:00:00 2021/03/26 05:00:00 AIを活用して来客数や売り上げなどを予想し、効率的な経営を行う「ゑびや」の小田島春樹社長(20日、三重県伊勢市で)=尾賀聡撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210322-OYT8I50035-T.jpg?type=thumbnail

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