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出所後に採用してもらえたら…女性刑務所にハローワークが駐在[女性刑務所3]

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 職がない人の再犯率はある人より高い。仕事を持つことは、犯罪防止の観点からも重要だ。ハローワークの職員が刑務所の中で受刑者の就労相談や職業紹介をしていると聞き、現場を訪れた。(編集委員・猪熊律子)

就労相談1人目

ハローワークの職員(奥)から、書類の書き方の説明を受ける受刑者(昨年11月、岐阜県の笠松刑務所で)=池谷美帆撮影(画像は一部修整しています)
ハローワークの職員(奥)から、書類の書き方の説明を受ける受刑者(昨年11月、岐阜県の笠松刑務所で)=池谷美帆撮影(画像は一部修整しています)

 ハローワークの職員「今日は求職票をお持ちしました。ご本人さんのご意向を確認したい。仕事は何が希望ですか?」

 女性受刑者「介護です。次が製造、その次が建築。寮付きでお願いします」

 職員「関西圏で寮付きの介護の仕事を探してみます。何か資格はありますか?」

 受刑者「ないです」

 <受刑者は30代。覚醒剤取締法違反、無免許過失運転致傷などで服役した。刑務所に入ったのは4回目。
 中学校を卒業後、飲食店や建築現場などで働いた。親が自殺するなどして両親はなく、祖母に育てられた。
 「刑務所にはおばあさんの受刑者もたくさんいる。自分はおばあちゃん子だからか、下の世話が苦にならないタイプ。大変だけど、下着が汚れたままでいるよりずっといい」と、介護を志望する理由をインタビューで語った>

 職員「正社員として働く機会に恵まれなかった就職氷河期世代向けの助成金があります。正社員を希望されているので検討しましょう。それと、精神障害者保健福祉手帳をお持ちと聞きました。病名は何ですか」

 受刑者「統合失調症です」

 職員「わかりました。ここで紹介できるのは受刑者等専用求人です。もし、刑務所にいたことを誰にも言いたくなければそれを使わずに、出所後、一般の求人で仕事を探す方法もあります。その際、障害者専用の求人を使うこともできます」

 <受刑者等専用求人は、受刑者や少年院在院者などを対象にした求人。雇用を希望する事業主が刑務所を指定し、その刑務所にハローワークを通じて求人情報が提供される。マッチングがうまく進めば事業主が刑務所を訪れて面接し、出所前に就職先が決まる。
 ハローワークの職員によると、コロナの影響で昨年以降はテレビ面接が増えた。求人で多いのは、男性は建築土木、女性は介護。コロナ禍で飲食関係の求人が激減したという。
 この受刑者は「刑務所にいたことをオープンにすればこうした形の職探しもOKなんやと初めて知った。今度こそ生活の基盤を作りたい」と語る>

就労相談2人目

 <次に職員が面談したのは刑務所に入ったのは2回目、いずれも覚醒剤取締法違反という30代の女性受刑者>

 職員「希望の職種は」

 受刑者「スーパーやパン屋さんの接客。パート希望です」

 職員「出所後、帰るところはありますか」

 受刑者「はい。母が身元引受人になってくれています」

 職員「タトゥー(入れ墨)があるそうですが、どこに」

 受刑者「(袖をまくって)ここです」

 職員「半袖だと出ちゃうかな。ワードとエクセルはどれぐらいできますか」

 受刑者「入力はできます」

 <ほぼ水商売で生きてきたと話す受刑者。パートを希望したのは、保護司との面会や通院、薬物依存からの回復を目指す自助グループに通うことを考えたためという。
 「水商売での接客は楽で給料もいいけど生活が安定しない。今度出所したら朝から働く普通の仕事をしたい」「中卒なので履歴書の欄がすぐ終わり、書くのをためらってしまう。刑務所で勉強を教わってるけど苦手。でも、どこかに採用してもらえたらすごくうれしい」と話す>

仕事の有無、再犯の背景に

 ハローワークと刑務所と保護観察所などが連携した政府の「刑務所出所者等総合的就労支援対策」は2006年度に始まった。04年頃から重大な再犯事件が相次ぎ、再犯者が無職状態だったことが問題視されたためだ。

 20年版犯罪白書によると、19年に刑務所に再入所した男性の69.7%、女性は86.2%が再犯時に無職だった。また、法務省によると無職者の再犯率は有職者の約3倍。仕事の有無が再犯の要因に影響していることがうかがえる。

 刑務所にハローワークの職員が駐在し、刑務所と一体となって就労支援をする「就労支援強化矯正施設」の取り組みは15年度に始まった。現在、全国に36か所(1か所は少年院)ある。

 女性受刑者が入る笠松刑務所(岐阜県笠松町)もその一つ。ハローワークの職員が駐在官として週1回、勤務している。

 笠松刑務所では、就労支援などの業務の一部を民間事業者(小学館集英社プロダクション)に委託している。事業者は「ジョブソニック」と呼ばれる出所者就労支援プロジェクトを展開。企業説明会のほか、マナーやメーキャップ講座なども開いている。キャリアコンサルタントの資格を持つ民間職員が履歴書の書き方や採用面接の受け方の指導もしている。

 就労支援の課題の一つが、前歴がある人を受け入れてくれる事業所の開拓だ。就職が決まっても長続きせず、突然やめてしまうケースもあるため、「出所者が働き続けていける力をどう養うか」(笠松刑務所の鈴木俊広・首席矯正処遇官)も課題となっている。

(2021年2月12日読売新聞夕刊<東京本社版>掲載)

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2051538 0 トピックス 2021/05/16 08:03:00 2021/05/16 08:03:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210512-OYT8I50063-T.jpg?type=thumbnail

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