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摂食障害の女性受刑者たち…食品盗み、過食の日々[女性刑務所5]

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 女性刑務所が抱える悩みの一つが、摂食障害がある受刑者への対応だ。女性受刑者全体の5%程度(推計約170人)とされ、その多くが窃盗の累犯として服役している。なぜ彼女たちは犯罪行為に及んだのか――。この問題を2回にわたって取り上げたい。まずは、受刑者の話から。(編集委員・猪熊律子)

いろいろ考えて、行き着くのは…40代累犯

「食べたい、吐きたいという欲求がすごく強くて、それに負けてしまった」と話す受刑者(昨年11月、東京都昭島市の東日本成人矯正医療センターで)=池谷美帆撮影
「食べたい、吐きたいという欲求がすごく強くて、それに負けてしまった」と話す受刑者(昨年11月、東京都昭島市の東日本成人矯正医療センターで)=池谷美帆撮影

 最初に刑務所に入ったのはおよそ10年前。今回で4度目です。関西にある女性刑務所に入りましたが、摂食障害で体重が減り、刑務作業ができないと言われて、1年半ほど前、東京にあるこの医療刑務所に移されました。身長は150センチ以上ありますが、体重は30キロあるかないかだったはずです。

 罪名はいずれも窃盗です。過食嘔吐(おうと)といってたくさん食べて全部吐くために食費がかかりました。ひどい時は、月に10万円以上かかっていたと思います。

 スーパーやコンビニで菓子パンやおにぎり、サンドイッチなどを盗みました。同じ店に何度も行けないから、店をはしごして。1回1000円未満の時もあれば3000円を超えた時もありました。

 摂食障害が始まったのは20歳を過ぎた頃。母と父方の祖母、つまり嫁(しゅうとめ)の仲がものすごく悪くて、父親が単身赴任中だったため、双方の愚痴や不満の聞き役が大学生の私に回ってきました。

 「あのばばあ殺してやりたい」「もう死にたい」

 そんな言葉を毎日聞かされるうち、ものが食べられなくなりました。食べ物がプラスチックでできたおもちゃのように見えてきて、1か月で体重が20キロぐらい減りました。当時、摂食障害はあまり知られてなくて、なかなか正確な診断にたどり着けませんでした。

 祖母が施設に入り、拒食は回復しましたが、職場の人間関係のストレスで、今度は過食嘔吐になりました。お金はあるけど、今ここで使ったらあした食べて吐くためのお金がなくなってしまう。その恐怖心の方が強くて。万引きはいけないことだとわかっているのに、食べ物を前にすると「これを食べて吐かなければいけない」という強迫観念に襲われました。

 私、発達障害もあるんです。いろいろ考えると、どうやっても自分は最後はここにたどり着くしかなかった。そんな諦めの気持ちが強いです。発達障害がなければもうちょっと生きやすかったとも思いますが、発達障害がない私は想像できないし、摂食障害がない自分もイメージできません。完治は無理だと感じます。家族と暮らすのは難しいので、出所したら自分の障害を理解してもらえる場所で、何とか自活できればと思っています。

 <中学生の頃、壮絶ないじめと性暴力被害を受けたという受刑者。「毎日、殴られるために登校した」「人間はモンスター。怖すぎる」と主治医に語った。幼い頃から本を読むのが好き。自閉症の診断を受けている。摂食障害者の発達障害の合併率は2割前後といわれている>

盗みをやめるのも怖くてできず…40代初犯

「痩せてきれいになりたい」。それがきっかけだった
「痩せてきれいになりたい」。それがきっかけだった

 刑務所は初めてです。痩せすぎで拘置所から直接、医療刑務所に来ました。

 摂食障害になったのは10代の時。痩せてきれいになりたいというダイエットがきっかけです。性格からか、ストイックに食事の量を減らして痩せた。でも抑えていた食欲が一気に盛り返し、過食嘔吐になりました。

 万引きを始めたのは20代後半から。数え切れないほどやって、「もう来ないで」と出禁(出入り禁止)になったスーパーもあります。

 働いていたからお金はあったけど、どうせ吐くのだからもったいない。そのうち()る行為に依存して、盗ること自体が大事になった。義務感というか、脅迫されているような感じになり、万引きをやめたいけどやめるのも怖くてできない。過食嘔吐を知った夫には理解できないと言われました。今は離婚しています。

 30代の時、神経性食欲不振症と診断されたけど、結局、何も変わらないのに絶望して、病院には二度と行かなくなりました。

 皮肉ですが、ここに来て初めて本気で治そうとしてくれているのを感じます。お陰で体重が増えました。税金で治療してくれているということは、社会の一員として自分もいていいのだと感じるので、出所したらしっかり働いて納税したい。お店でも買い物をして償いたい。あと、万引きした人が痩せすぎの場合、摂食障害を疑い、治療につなげてくれるような社会ならいいなと思う。そのための活動をしたいと思っています。

摂食障害
 体重や体形へのこだわりやストレスなどから、正常な食生活を送ることができなくなる精神疾患。極端な食事制限(拒食症)や、過度な量の食事摂取(過食症)などを伴う。女性に多く、10代の発症率が高い。死亡率が高い重篤な病気だが、治療を受けていない場合が多い。遺伝や環境的な要因が複雑に絡む。厚生労働省によると、患者数は推計約21万人。

医療刑務所
 専門的な医療行為を必要とする受刑者らを収容する刑務所。全国に4か所ある(東日本成人矯正医療センター、大阪医療刑務所、岡崎医療刑務所、北九州医療刑務所)。一般の刑務所で治療が難しくなった受刑者が、治療に専念するために移送されてくる。

(2021年3月11日読売新聞夕刊<東京本社版>掲載)

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2051598 0 トピックス 2021/05/16 08:05:00 2021/05/16 08:05:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210401-OYT8I50063-T.jpg?type=thumbnail

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