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女性受刑者と向き合う人たち[女性刑務所7]

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 女性受刑者の生活を支えているのが、刑務官ら女性刑務所で働く職員たちだ。どんな仕事をし、どんなことを思っているのか。2人の声をご紹介したい。(編集委員・猪熊律子)

刑務官…栃木刑務所・20代・2年目

「仕事はすごく厳しい。でも、やりがいはある」

 大学を出て事務や飲食関係で働きましたが、もっと社会のためにできることはないかと考え、刑務官になりました。警察官だった身内から法を犯した人の話を聞くうちに、その人たちを社会に戻す仕事が魅力的に思えてきたんです。

 刑務所は怖いイメージが強かったけど、普通に社会にいるような人が多くて驚きました。お年寄りも多い。受刑者は刑務官の名前は知らされていないので、刑務官のことを「先生」と呼びます。祖母と同じような年齢の人から「先生」と呼ばれるのは、最初はすごく違和感がありました。

 夜間、受刑者が眠る「寮」を1人で巡回する時はすごく緊張します。自殺を考える受刑者がいると聞いてはいましたが、実際にカーテンレールが壊れた現場を見た時は衝撃でした。未遂で良かったけど、本当にあるんだと思って。全くそういう感じを見せなかったから、人って何を考えているのかわからないと思いました。仕事を続けていけるか不安になったけど、上司が気遣ってくれて切り抜けました。自分勝手に「大丈夫」と思ってしまうのが一番危険。それから勤務態度が変わりました。

 仕事は、すごく厳しい世界です。命を預かっているし、指導しなくてはいけないので、楽しく感じることがなかなか難しい職場です。

 でも、やりがいはあります。何度言っても規則を守らなかった人が、声をかけるうち、態度が良い方向に変わるのを見るのはうれしい。人によって言い方を変えるなど、頭も使います。先輩を見ていると、言葉に説得力があり、受刑者も信頼して言うことを聞いている。私も誰かの心を動かせるようになりたい。犯罪を減らし、みんなが過ごしやすい社会を作る一員になれたらと思います。

 女性の犯罪は男性絡みが多い。無職で来る人が多いので、仕事と生活の支援が入所者を減らすカギではないかと感じています。

矯正医官…栃木刑務所・50代・1年目

「健康に罪を償わせる」

婦人科の診察室で、刑務所の中での医療について説明する矯正医官(昨年11月、栃木市の栃木刑務所で)=池谷美帆撮影
婦人科の診察室で、刑務所の中での医療について説明する矯正医官(昨年11月、栃木市の栃木刑務所で)=池谷美帆撮影

 大学病院で内科の臨床や研究の仕事をしてきました。人生半ばを過ぎ、別の形で世の中の役に立てないかと思い、医者が足りずに困っているところを探したら、そこが刑務所でした。全くの異世界に飛び込みました。

 全額国庫負担で賄う矯正医療は、予算や設備の制約が厳しく、ある意味、離島の医療に似ています。ふだんは住民のよろず相談にあたっているが、そこでの治療が難しくなると他の施設に患者を移送する。それと同じで、ふだんは不眠の訴えからがんの診療まで様々なことに対応し、必要に応じて患者を外部の病院や医療刑務所に送ります。

 受刑者を診ていると、貧困、親からの虐待、性暴力被害など、劣悪な成育環境で育った人が多い。精神的な脆弱ぜいじゃく性を抱え、認知にゆがみが出ている人もいます。自己肯定感が低い人が多いのが気になります。

 女性刑務所は男性と違い、刑期や犯罪傾向などによる区別がなく、初犯も累犯もみんな一緒に収容されます。男性より数が少ないから仕方ないのかもしれませんが、刑期や犯罪の内容によって場所を分けた方が治療効果を上げるためにはいいように感じます。

 また、受刑者の中には「刑罰」の意味がわからなくなった認知症の高齢者もいれば、摂食障害や薬物依存の若い受刑者もいます。刑罰を科すよりも、社会で福祉や治療、教育を受けさせた方がよいのではと個人的には思います。

 医者として罪を犯した人を助ける仕事に就くことに、正直、複雑な思いはありました。でも、ある時、犯罪被害で子供を失った方から「私は受刑者が心身ともに健康で罪を償ってくれることを一番願っている」と言われて、自分の仕事はこれでいいのだと、救われた思いがしました。

 1日3度の食事が出て、医療も税金で受けられる受刑者は恵まれ過ぎとの批判があります。でも、犯罪防止の観点からみれば、出所者が罪を償いながら心身ともに健康で善良な市民や納税者になるのが一番いい。そう思って受刑者の医療に向き合っています。

受刑者の生活・教育指導や、就労支援などにあたる職員たち

 受刑者の健康を守る医師や看護師、作業療法士なども所内で働く。写真は札幌刑務支所(北海道)、栃木刑務所(栃木)、東日本成人矯正医療センター(東京)、笠松刑務所(岐阜)で、いずれも2020年11月に撮影

(2021年4月8日読売新聞夕刊<東京本社版>掲載)

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2051774 0 トピックス 2021/05/16 08:07:00 2021/05/16 08:07:00 インタビューに答える作業療法士(匿名)(11月2日、東京都昭島市の東日本成人矯正医療センターで)=池谷美帆撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210408-OYT8I50075-T.jpg?type=thumbnail

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