読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

女性受刑者と接して…村木厚子さんインタビュー[女性刑務所8]

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 刑務所は「社会を映す鏡」といわれる。女性刑務所の中に入って鏡をのぞいたら、「生きづらさ」という文字が拡大版で映っていた――というのが、取材をしてみての実感だ。女性の犯罪をなくすにはどうしたらよいのか。冤罪(えんざい)により半年近く拘置所で過ごした経験があり、厚生労働省を退官後、生きづらさを抱える若い女性の支援に取り組む村木厚子さんに話を聞いた。(編集委員・猪熊律子)

受刑者、不遇な過去も

村木厚子さん=平博之撮影
村木厚子さん=平博之撮影

 ――覚醒剤使用や窃盗などで服役中の女性に会い、なぜこの人たちは犯罪に手を染めたのだろうと改めて思いました。「極悪非道な犯罪者」というイメージとは随分異なる印象を受けたからです。法務省の調査を見ると、親から虐待されるなど不遇な家庭環境で育った人が多い。学校も中学までの人が少なからずいて驚きました。

 村木 受刑者の学歴や知的能力などのデータを見ると、ハンディキャップを抱えた人が多いですね。女性の受刑者に接したり、各地の刑務所を視察したりして思うのは、現実社会の中で生きづらさを抱えた人が、自分の弱さもあって逃げ込んだ場所が刑務所ではないか、ということです。

 ――貧困、虐待、いじめ、失業、孤独など、生きる上での困難は男性にもありますよね。

 村木 女性はより困難が多いと思います。妊娠・出産があるし、性被害に遭いやすいので。雇用の面でも、今回のコロナ禍で女性がいかに足場の悪いところで働いていたかが露呈しました。賃金が低く、すぐに首を切られるなど立場が弱い。経済的な基盤が十分でないので、夫や親に依存せざるを得ず、自分の頑張りよりも境遇に左右されやすい。

 生きる上で多くの困難を抱えた人はみな逃げ場を探していて、その一つの形が犯罪ではと感じます。逃げ場が自殺の場合もあれば、ホームレスの場合もある。自殺すると弱い人、ホームレスになると怠けている人、刑務所に行くと悪い人と言われますが、ベースは同じ。表れ方が違うだけではないでしょうか。

寄り添う…入所させないために

 ――ただ、生きるのが難しいと感じた人がみな罪を犯すわけではありません。犯罪に走ってしまう人とそうでない人では、何が違うと考えますか。

 村木 困難に寄り添ってくれる人がいるかどうかが決定的に大きいと感じます。生きづらさを抱えた若い女性を支援する「若草プロジェクト」(一般社団法人)の活動を始めて5年になりますが、相談内容を見ていると家庭環境が不遇で親に頼れない場合、一人で頑張ってしまう女性が多い。でも、女性が一人で社会で頑張ろうとすると風俗やクスリへの誘惑やわなが近づいてきます。困っている人に伴走して、背負っている荷物を一緒に抱える人や場をどれだけ用意できるか。問われているのは社会の方だと思います。

 ――困っている人を取り残さないということですね。「自分を見てくれている人がいたら何度もここに来なかった」と話す受刑者が複数いたことを思い出しました。あと、女性の犯罪をなくすためには就労支援や職業訓練が重要と感じます。ハローワークの職員が刑務所の中に入って出所後の仕事を紹介している姿は新鮮でした。

 村木 常駐して、成果を上げています。

刑罰と教育バランス議論を

 ――覚醒剤や摂食障害による窃盗で何度も刑務所に来る女性がいます。「犯罪の自覚を持たせるために刑罰は欠かせない」という声がある一方で、「刑罰よりも、治療や教育、指導にもっと力を入れるべきだ」という声も現場で聞きました。犯罪防止の観点から、どう思われますか。

 村木 刑罰は刑法の根幹部分ですし、犯した罪の重さにもよるのでしょうが、クスリに頼るしかない人生を送ってきた人に、ただやめなさいと言って刑務作業ばかりさせても依存からの回復は難しい。クスリに頼らず生きていける方法を本人が見つけるのを、一緒に手伝ってあげることが本質的に重要だと思います。刑罰と治療や教育、指導とのバランスや、刑務所の役割について、もっと議論すべきでしょう。

 ――人口が減り、女性活躍が望まれる時代に、女性たちが法を破り、逃げ込んだ塀の中で何年も過ごすのはもったいない。罪を犯させないよう、また、刑務所に入ったとしても、出所後、活躍できる社会にしたいと思いました。

 村木 そう、刑務所に入らせないようにすることが一番大事。たとえ恵まれない環境に育っても、支援の手が伸びて活躍できる。そうなって、初めて女性活躍といえると思います。

拘置所 …刑務所と違い、刑が確定していない人を主に収容する刑事施設。取り調べ中の容疑者や検察官により起訴された被告人などがいる。

プロフィル
村木厚子(むらき・あつこ)
 厚生労働省で局長をしていた2009年、郵便不正事件で逮捕され、164日間、拘置所に勾留された(後に検察による冤罪と判明)。10年に無罪が確定し、13年に厚労次官、15年に退官した。困難を抱える若い女性や累犯障害者の支援活動に携わる。法務省の再犯防止推進計画等検討会委員。津田塾大客員教授。

女性刑務所の表情

受刑者が寝起きする定員6人の共同室。単独室や、鍵がかかる部屋もあるが、この共同室は鍵がないタイプ(画像は一部修整しています)
受刑者が寝起きする定員6人の共同室。単独室や、鍵がかかる部屋もあるが、この共同室は鍵がないタイプ(画像は一部修整しています)
宗教上の理由で豚肉が食べられない受刑者には、豚肉の代わりに大豆を使ったおかず(皿の下部分)が用意されていた。皿の上部分のおかずはサツマイモのパイン煮
宗教上の理由で豚肉が食べられない受刑者には、豚肉の代わりに大豆を使ったおかず(皿の下部分)が用意されていた。皿の上部分のおかずはサツマイモのパイン煮

受刑者が手入れをしている刑務所内の花
受刑者が手入れをしている刑務所内の花

(写真はいずれも2020年11月、栃木県の栃木刑務所で=池谷美帆撮影)

(2021年4月22日読売新聞夕刊<東京本社版>掲載)

無断転載・複製を禁じます
2051783 0 トピックス 2021/05/16 08:08:00 2021/05/16 08:08:00 女子矯正施設について語る村木厚子さん(3月29日)=平博之撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210422-OYT8I50047-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)