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ラジオ囲んで歓喜、選手派遣の募金活動…昭和30年代の五輪風景を色付け

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 読売新聞の企画「Color the News」では、モノクロでしか見ることができなかった昔のニュース写真を、AIの力を借りてカラー化している。

 今回カラー化したのは、「ラジオを囲んで歓喜する体操男子・相原選手の家族」と「五輪選手派遣費用の募金活動」の2枚。いずれも昭和30年代の空気が生き生きとよみがえった。

 1枚目より2枚目の方が写っている人物も多く、写真の絵柄が複雑だが、カラー化に難航したのは1枚目の方だった。理由はモノクロ元画像の情報量の差だ。

 大阪・道頓堀で撮影された「募金活動」の元画像は、鮮明なデジタルデータの形で読売新聞のデータベースに残っていた。おそらくネガフィルムから直接、あるいは非常に画質のよいプリントをスキャンしたと思われる。

 これに対して「歓喜する家族」の写真は、残された元画像があまり鮮明ではない「電送写真プリント」だった。

電話回線を使った「電送写真」、画質粗め

 電送写真――といっても説明が必要だろう。1枚目の写真が撮影されたのは群馬県である。当時は、新聞の編集・印刷拠点である東京や大阪から離れた場所で撮った写真を締め切りに間に合わせるため、電話回線につないだ写真電送機で本社に送っていたのだ。

 手順はこうだ。撮った写真のフィルムを現像し、印画紙に焼き付ける。まだ生乾きのプリントを写真電送機の中核部品である「円筒」に巻き付けて電送機にセットし、スイッチを入れると円筒が回転する。

 円筒に接するか接しないかという位置に小さなライトと、その反射光を受ける小さなレンズがついている。それがじわじわと横方向に動いて、回転する円筒に巻き付けられたモノクロ写真の「白黒の濃淡」を読み取っていく。「濃淡」は「ヒョロロ、ヒョロロロ~」といった笛のような音声信号に変換され、電話回線で本社に送られる。受け取った本社は、音声信号から「濃淡」を復元して画像化するのである。

 原理はファクスと同じ、というよりも発明初期の円筒型蓄音機と同じ、というべきだろうか。音声信号によるアナログ電送の画質には限界があった。しかし、新聞そのものが今日のように鮮明には印刷できなかったため、新聞掲載用の写真の画質としてはそれでも十分であった。

 昭和30年代の写真電送機はまだ10キロを超える大きなもので、カメラマンが1人で撮影から電送までできる時代ではなかった。おそらく東京の本社から機材を積み、カメラマン、電話回線技術者、運転手がチームで駆けつけて取材体制を組んだと思われる。当時、現場で回線を確保するのは難しかったはずで、臨時の電話回線を引いたかもしれない。ローマ五輪で体操男子・相原選手の金メダルが、いかに期待され、確実視されていたかがわかる。

 事前に臨時回線を準備できない、事件などの取材では、まだ数少なかった電話のある家を探し、頼み込んで借りたらしい。居間に写真電送機を置き、「ヒョロロ」と電送音を響かせていると、物珍しさに近所の子供たちがたくさん集まってくることもしばしばだったという。記事原稿も当時は電話で読み上げ、受け手に書き取らせる形で送稿していた。

 背景にある当時の取材事情を含めて、カラー化した写真を見ていただければ、時代の空気をより味わえると思う。今ではもちろん、ニュースの光景はデジタルカメラで撮影し、その画像は画質をまったく損なうことなく、瞬時に送受信される。

 2枚目の大阪・道頓堀の写真は、名物の「グリコ看板」がランナーの足しか写っていないのが残念だが、これも当時の戎橋周辺の雰囲気がわかる貴重なものだ。グリコ看板の「1粒300メートル」の下の文字は「ビスコ」になっているが、この文字は回転して、「ビスコ」と「グリコ」が交互に現れたようである。

※本企画のカラー化にあたり、早稲田大学理工学術院・石川博教授の研究室が開発した自動色付けシステムを許諾を得て使用しています。

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2235847 0 トピックス 2021/07/27 09:00:00 2021/08/19 10:39:00

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