1960年代「柏鵬時代」の幕開けをカラーで再現
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読売新聞の企画「Color the News」では、モノクロ(白黒)でしか見ることができなかった昔のニュース写真を、AIの力を借りてカラー化している。今回カラー化したのは1961年(昭和36年)と翌62年(同37年)、大相撲の「柏鵬時代」が幕を開けた頃の光景だ。
「初日あいさつ」に初代の若乃花らズラリ
1枚目の写真は1961年6月25日、大相撲名古屋場所の「初日あいさつ」。前列に並んでいる力士たちを左から順に紹介すると、大関・琴ヶ浜、同・北葉山、同・大鵬、横綱・若乃花、あいさつを述べる時津風理事長(元横綱・双葉山)、横綱・朝潮、大関・柏戸、同・若羽黒である。すべて言い当てられる人は70代以上か、かなりの相撲通だろう。念のため、「横綱・若乃花」はもちろん初代の若乃花(のちの二子山理事長)だ。
当時の名古屋場所の会場は現在の愛知県体育館ではなく、かつてあった名古屋市金山体育館。冷房がなく、氷柱を立てて暑さをしのいだという。
観客席上の看板、「ローマの休日」にあやかる映画広告も
観客席の上部にある広告看板が時代を感じさせる。だが、カラー化する際にはここが最も苦労した。
原画のモノクロ写真はフラッシュ撮影しているため、土俵上の力士は鮮明だが、フラッシュ光が届かない観客席や広告看板は暗く、そのままでは何が写っているのかほとんどわからない。このため、力士たちの背後の明度を上げる画像処理をした上でカラーリングしている。現在は本場所の会場にこのような広告看板はない。「ローマの休日」にあやかったらしい「舞妓の休日」というタイトルの映画広告なども、くっきりとカラー化したことで、時代の雰囲気もまた鮮明になった。
大鵬と柏戸、力強く美しい「三段構え」
2枚目は翌1962年4月、新装なった二所ノ関部屋の土俵開き。大鵬(左)と柏戸は、2人ともすでに横綱だ。力強く美しい「三段構え」である。
カラー化に際して悩んだのは、行司の装束だった。取組を裁く時のものとは違う。そこで、長く角界を取材してきたベテラン編集委員に尋ねたところ、これは行司が祭主として土俵上の祭事を執り行う時に着る金色の神官装束とわかった。相撲協会が用いる桜の紋があしらわれている。
壁には大鵬以下70人を超える所属力士の名前が掲げられている。現在の相撲部屋は多くて20~30人、大半は10~20人だ。当時の相撲部屋は相当な大所帯であった。