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    経済

    “ダイエー帝国”の遺産…パブに息づく中内イズム

    読売新聞大阪本社編集委員 中村宏之
     かつて流通界を席巻したダイエー。その傘下にあった企業の一つが、創業時の屋号を守って奮戦し、昨年末に東証1部昇格を果たした。「ハブ(HUB)」の名で、関東地方を中心に英国風パブを展開する会社だ。

    「英国のように人々が集う場を」

    • ハブの100店目となった東京・上野店
      ハブの100店目となった東京・上野店

     ハブ(本社・東京)は、ダイエーに勢いがあった1980年、中内功氏の「英国のパブのように人々が集い、コミュニティーとなる場所を」というアイデアから設立された。当初は神戸や東京・六本木、札幌などに展開していた。

     現在、社長を務める太田剛さん(57)は当時、客として神戸の店に来ていた一人だった。店の客の約半数は外国人で、ビールやウイスキーを片手におしゃべりやダーツに興じている。そんな雰囲気だった。

     ビール1杯が180円、当時の週刊誌と同じ価格だった。英国にならってキャッシュ・オン・デリバリー(カウンターで1杯ずつ注文払いすること)という当時の日本では斬新な支払い方法を導入した。会社説明会に参加した太田さんは「10年で1000店舗にする」という幹部の発言に勢いを感じ、83年に入社した。

     しかし、時代が早すぎたのか、ビジネスベースに乗らない赤字店も多く、86年に事業はいったん清算され、ハブはダイエーの子会社の一事業部となった。それでも、屋号は残り、一部店舗は営業を続けたが、「英国風パブを目指す」というコンセプトからは離れていた時期もあった。

     その後、前社長が着任し、ダイエーの子会社として再出発するようになったので、もう一度原点を目指すことになる。太田さんは社長の指示でイギリスに渡り、各地のパブを回って本場の実態を学び直すなどして、「英国のパブ文化を定着させる」という目指すべき方向を再確認した。

    「店はお客様のためにある」

    • ハブ社長の太田剛さん(57)
      ハブ社長の太田剛さん(57)

     ダイエー本体の経営が苦しくなっていく中でも、ハブは優良子会社として成長。2006年、株式上場を果たした。その後、親会社が変わっても、「店はお客様のためにある」という中内氏の精神を守り続け、現在は外食大手のロイヤルホールディングスの傘下で成長を続けている。

     創業当時はビール1杯=180円という「週刊誌価格」を売りにしていた。太田社長は「今では400円を超える週刊誌もありますが、ウチの店には390円で楽しめるメニューも多くあります」と笑う。若者たちにも気軽に楽しんでもらうための価格設定で、顧客は30歳前後が中心だが、女性客も増えているという。開業当初はなかなか根付かなかったキャッシュ・オン・デリバリーのスタイルが、ファストフードの普及などで国内に定着したことも大きい。

     入社式をイギリスで行うなど、英国のパブ文化を日本に広めたいという創業の精神はいまも継承されている。現在は関東を中心に103店舗を展開するが、すべて「英国風パブ」という単一形態を堅持しながら、24年までに200店舗まで増やす計画だ。

     ただ、出店に関しては、いたずらに規模を追っているわけではない。年間で既存店舗数の10%前後という堅実なペースで、01年から業績不振による退店は1店舗もないのも強みだ。

     サービスも充実を図っており、飲料はオリジナルのビールやカクテルなど100種類を超える。一方で食事は提供しないが、酒に合うつまみなどの種類は豊富だ。

     太田社長は「日本の質の高いサービスを保ちつつ、今後も多くのお客さんにパブ文化を広めていきたい」と抱負を語る。


    太田剛(おおた・つよし)
     1961年、神戸市生まれ。大阪経済大学卒。83年、旧ハブ入社。2009年、現在の株式会社ハブの社長に就任。

    2018年01月30日 10時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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