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    シングルスタイル

    20代で結婚したい!

     30歳までに結婚したい若者が、増えているという。未婚化・晩婚化は終わるのか? せっかく「ひとり」のページを作ったのに、どうなる、この企画。大学や企業の独身寮で、若い人の結婚観を聞いてみた。(宮下悠樹)

    上の世代を見て不安に?

     三菱総合研究所「生活者市場予測システム」が昨年6月、20代の男女3676人に尋ねた調査で、「30歳までに結婚したい」が男女とも、2011年の調査開始以降最も高い割合となった。11年といえば、東日本大震災後、家族や結婚への熱が高まったとされる時期。そこを超えたわけだ。

     佐野紳也・主席研究部長は、「景気回復による所得増や、出会いの場の増加、保育環境の改善などが、若者を結婚に前向きにしたのではないか」とみる。

    加齢による不妊や、独居高齢者の孤独死などの情報も広まり、「上の世代を見て不安を感じ、結婚したいという心理があるかもしれない」とも。

    「老後が寂しそう」「社会的信用」

    • 結婚のメリットとデメリットを考える学生。さまざまな意見が出た(東京都千代田区の法政大で=岩佐譲撮影)
      結婚のメリットとデメリットを考える学生。さまざまな意見が出た(東京都千代田区の法政大で=岩佐譲撮影)

     学生さんたちの話を聞いてみた。法政大キャリアデザイン学部の斎藤嘉孝教授(家族社会学)にお願いして、ゼミ生に結婚観を話し合ってもらった。

     「いつかは結婚したいな。親はいなくなっちゃうし、子どもがいないと老後が寂しそう」「稼ぎが自分で使えなくなる」。12人(男性3人、女性9人)が1人ずつ、結婚のメリット、デメリットを挙げてくれた。

     「結婚という形にはこだわらない」という女子学生1人を除き、11人が「将来的に結婚したい」という考えだった。今の自分の家族が好きで、将来同じように家族を築きたいという学生が多いようだ。「結婚することで社会的信頼を得られる」と、ある種昔ながらの意見も。家族を研究するゼミだから特にそうなのかもしれないが、温かい家庭へのあこがれを語る様子からは、素直な結婚願望が伝わってきた。

    「仕事も家庭も」がリアルに

     斎藤教授は「今の学生は、仕事も家庭も趣味もバランスよく、という傾向が強い。男子学生も、仕事一辺倒より家のこともちゃんとやる方がかっこいいと思っているようです」と話す。

     これを書いている記者は31歳女性。28歳で結婚、出産したのは、同期の女性記者の中では早いほうだと思う。それでも、大学時代を思い起こせば結婚や子どもなんて遠い未来の話だったし、たぶん周囲もそうだった。10歳しか違わない学生たちの将来を見据えた考え方に、やっぱり時代は変わってきたのかと感じた。

     仕事と家庭のバランスは、就活でも重要なキーワードだ。就職情報大手「マイナビ」が来春卒業予定の大学生に就職観を尋ねたところ、「楽しく働きたい」(33・3%)に次ぐ2位が「個人の生活と仕事を両立させたい」(24・2%)。「出世したい」は1%だ。ワーク・ライフ・バランスをとり、堅実に。「モーレツ社員」なんて言葉はもう遠い。

    独身寮「結婚は意識しません」「帰れる場所がほしい」

     社会に出た若者たちの話も聞こう。シングルを求めて、相模原市の三菱重工独身寮を訪ねた。

     高校卒業から11年寮生活だという有村聡さん(29)は「特に結婚は意識していません。時間とお金が自由に使えるので、まだここに住みたい」。女子寮に住む加藤慶子さん(29)は、「ここに不満はないんですが、早く結婚して出たい。実家以外に安心して帰れる場所がほしいから」と。

     当然ながらイメージする「あした」はさまざまだ。それでも、何人もの話を聞いていると、やっぱり女性の方が結婚を切実に考えているように思えてくる。

    経済的リスクと、孤独への恐怖

     「独身を経済的なリスクと捉えるからです」と、東京都千代田区のファイナンシャルプランナー、加藤梨里さん(36)は指摘する。

     加藤さんのもとには、多くの20代独身女性が、貯蓄の相談に来る。話は人生相談のようになる。女性の相談は男性に比べ、働き方や家族計画など、資金計画以外の分野へ広がりやすい傾向があるそうだ。

     「派遣社員ですが、この先ずっと一人でもお金は足りますか」「退職までにいくらあれば安心ですか」

     加藤さんは既婚だが、20代後半は結婚や将来の生き方に悩んだ一人。相談者の不安がわかる。相手の様子を見ながら、少しずつ本音を引き出すことを心がけている。「根本にあるのは孤独でいる不安、恐怖だと思う。それを打ち消すために、計画的な貯金という対策を選ぼうとする人が、相談に来られるのでしょう」

    年長者は、背中を見られている

     取材で感じた結婚願望の高まり。でも、「希望と、実際に結婚するのとは別じゃないかな。私たちだって結婚願望がなかったわけじゃないし」と、編集長(52歳独身)が悪魔みたいに水を差した。確かに……。堅実ゆえに「経済基盤が固まらないから」と踏み切らない可能性もあるだろう。平均初婚年齢は近年横ばいだが、下がるには至っていない。

     気づいたのは、思った以上に若い人が、報道やドラマ、身近な人を通じて上の世代をよく見ているということ。結婚している人もシングルも、年長者はそれぞれのライフスタイルを楽しむ責任がありそうだ。背中が、見られている。

    「希望」が高止まりしても、初婚年齢は上がり続けた

     独身者(18~34歳)の「平均希望結婚年齢」と、実際の「平均初婚年齢」を重ねてみた。いわば、結婚年齢の「希望」と「現実」を示すグラフだ。

    1982年には男女ともに、平均初婚年齢より、0・3歳「遅く」結婚したいと希望していた。それが、2010年時点では逆転が起きて実際の初婚年齢の方が遅くなっている。15年にはその差が広がり、男性が0・7歳、女性が0・8歳、希望より遅い結婚をしていることになる。

     三菱総研の佐野主席研究部長は、「男女雇用機会均等法(1986年施行)後に女性が社会進出したことで希望年齢が上がり、初婚年齢も上がったのでは。希望の高止まり後も、経済事情などで初婚年齢が上がり続けた可能性がある」と話す。

    祝賀ムードが後押しする?

     その初婚年齢も、14年以降は横ばいが続く。結婚したい若い人が増えているのなら、そろそろ初婚年齢が下がる可能性はないのだろうか? 希望年齢のデータをまとめている国立社会保障・人口問題研究所の担当者は、先々の見通しについては「わからない」とするが、有名人の結婚につられてブームが起きるなど、結婚の希望は、世相を反映しやすいといい、「来年は、元号が改まる。祝賀ムードが生まれれば、結婚する人が増える可能性はある」と話している。

    ◇◇◇

     「シングルスタイル」は独身、一人暮らしがテーマのページです。裏表となる結婚、家族、行動様式としての「ひとり」についても考えています。みなさんのご体験やご意見、「こんなことを知りたい」「こんな人の話を聞きたい」などのご要望をお寄せください。

    宛先 〒100・8055(住所不要)読売新聞東京本社編集委員室「シングルスタイル」係、ファクス03・3217・8029、メールはこちらへ。

    2018年06月22日 17時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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