文字サイズ
    ちょっと気になるニュース、インターネットやSNSで話題のトピックス……。世の中の「今」をお届けします。
    文化

    ルフィは僕の理想の子供~「ONE PIECE」作者、尾田栄一郎さん

    • (C)尾田栄一郎/集英社
      (C)尾田栄一郎/集英社

     人気も、発行部数も、物語のスケールも、全てがケタ外れ。週刊少年ジャンプで連載21周年を迎えた「ONE PIECE」の勢いは、なおとどまるところを知らない。作者の尾田栄一郎さんが、これまでを振り返り、ルフィたち一味について語った。海賊王を目指す大いなる航海は、いよいよクライマックスにさしかかろうとしている。(川床弥生)

     読売新聞社は「ONE PIECE」とコラボレーションしたプロジェクト「3D2Y to 2020 KISEKI」を始めます。詳しくはこちらへ。

     ――連載21周年、900回以上。長い航海に実感はありますか。

     ジャンプの新人漫画賞の受賞者や、仕事場のスタッフに「『ONE PIECE』が始まってから生まれたんです」と言われるとびっくりします。そんなことで少しずつ実感しますね。

    • ルフィが、白ひげ海賊団と海軍が戦った頂上戦争の犠牲者を追悼する姿として、新聞に掲載された写真。よく見ると右肩に「3D2Y」の文字が(C)尾田栄一郎/集英社
      ルフィが、白ひげ海賊団と海軍が戦った頂上戦争の犠牲者を追悼する姿として、新聞に掲載された写真。よく見ると右肩に「3D2Y」の文字が(C)尾田栄一郎/集英社

     ――物語が息長く続く理由は何でしょうか。

     キャラクターが勝手に動くからですかね……。仲間集め一つとっても、連載当初は、悪人をやっつけて、そいつを仲間にして、とゲーム感覚で考えていたんです。でも、真剣に人間に向き合ってみると、いきなりやってきた少年から「俺と海賊になろう」と言われても、自分はついて行かない。物語に説得力がないと、仲間にならないとわかった。最初は10人の仲間を1年半で集めようと思っていました。20年以上かかって物語は80%くらいまで来ましたが、仲間はまだ9人です。

     ――ルフィは、尾田さんにとってどんな存在?

     ルフィは僕の理想の子供。子供はこうあってほしいという願いそのものです。みんなを説得するようなセリフを時々言うけれど、あとはずっと子供でいてほしい。僕にとってミステリアスな部分もあります。また、そうでなきゃ困る。僕が全部理解できてたら、読者にも飽きられちゃいますからね。

    • ルフィからのメッセージを読み取った麦わらの一味、ゾロ(C)尾田栄一郎/集英社
      ルフィからのメッセージを読み取った麦わらの一味、ゾロ(C)尾田栄一郎/集英社

     ――好きなキャラを教えてください。

     インペルダウンでルフィたちを助けたイワンコフ、ボン・クレーといったオネエキャラたちは好きです。何をやってもギャップが生まれて面白いし、熱く描きたくなる。おじゃまキャラのバギーもずる賢いところが愛らしい。

     キャラが女性に人気があるのはありがたいですが、基本的には少年読者がかっこいい、面白いと思えるように描きたいと思っています。例えばサンジはかっこいいだけではなく、エロかったりもする。同性に好かれるやつは信頼できます。

     ――ルフィの兄、エースの死は、読者に衝撃を与えました。

     ここは本当に悩みました。ルフィが前に進むためには、大きな試練を経験させる必要があった。読者からの反響は僕の想像以上でした。僕も、ルフィと一緒に乗り越えなきゃいけなかったところです。でも、楽しいばっかりでは、長い連載はやっていけないんです。

    • 目の前で最愛の兄・エースを失い、ルフィは自分の弱さを自覚する(C)尾田栄一郎/集英社
      目の前で最愛の兄・エースを失い、ルフィは自分の弱さを自覚する(C)尾田栄一郎/集英社

     ――普段は、敵も味方もほとんど死なないだけに、なおさら驚きでした。

     人が死ぬ場面を描きたくないのは、戦いの後に「宴(うたげ)」を描きたいからです。誰かが死ぬと、楽しい宴はできないじゃないですか。宴は僕の理想の友情の形です。最後も大宴会で終わりたい。

     ――エースの死後、ルフィが出したメッセージ「3D2Y」で、大きな転機を迎えます。

     17歳のルフィのままでは、四皇などの強敵に勝てるはずがない。だから2年間が必要でした。ルフィたちの成長を想像で補ってもらうためです。再会までの期間を2年にしたのは、ルフィをそこまで大人にしたくなかったから。少年漫画であることにこだわりたかったんです。

     ――ルフィの夢、海賊王って何でしょうか。

     ルフィにとっては「世界で一番自由に生きるやつ」が海賊王じゃないでしょうか。反面、ルフィはいつも、誰かのために行動します。目の前の人を助けることはかっこいい。人に喜んでもらえると自分もうれしい。恩を受けた人は恩を返す。そんなサムライの精神、人のために生きる「任侠(にんきょう)」の心は、世代を超えて伝わってほしいなと思います。

     僕は昔の任侠映画が好きなんです。世界一のイケメンは菅原文太さん(海軍大将・赤犬のモデル)だと思っているくらいです。

     ――子供たちに、自分の夢を実現するために、何を伝えたいですか。

     僕は漫画にメッセージを込めない主義です。でも、ルフィたちを見て感じることがあったら、受け止めてほしい。100人いたら、100通りの受け止め方でいいんです。

    • ルフィからメッセージを受け取り、2年後の再会を誓う麦わらの一味(右上から時計回りでゾロ、ブルック、ロビン、サンジ、ウソップ、ナミ、フランキー、チョッパー)(C)尾田栄一郎/集英社
      ルフィからメッセージを受け取り、2年後の再会を誓う麦わらの一味(右上から時計回りでゾロ、ブルック、ロビン、サンジ、ウソップ、ナミ、フランキー、チョッパー)(C)尾田栄一郎/集英社

    【ONE PIECE】
     1997年7月、週刊少年ジャンプ(集英社)で連載スタート。海賊王を目指す少年ルフィが、「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を求め、麦わらの一味を結成して冒険の航海を続ける。単行本は既刊89巻、全世界での累計発行部数は4億4000万部以上。2015年には「最も多く発行された単一作者によるコミックシリーズ」としてギネス世界記録にも認定された。ハリウッドで海外実写ドラマ化プロジェクトも決まっている。

    【3D2Y】
     ルフィの兄で、白ひげ海賊団2番隊隊長エースが海軍に捕らえられ、白ひげ対海軍の頂上戦争が勃発。ルフィは処刑直前のエースを救おうとするが、戦いの中でエースは倒れる。強くなることを決意したルフィは、散り散りになっていた麦わらの一味との再会を2年後と決め、新聞の写真で「3D2Y」(集合は3日後じゃなく2年後)という、仲間にだけわかるメッセージで知らせる。

    おだ・えいいちろう
     1975年1月1日生まれ、熊本県出身。高校在学中に新人賞の「手塚賞」準入選。「ONE PIECE」が初連載作品。

    2018年07月24日 09時45分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR情報
    PR
    今週のPICK UP