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    シングルスタイル

    ひとり旅ってどうですか

     「夏休み、どこか行く?」と、当然のことのように聞かれる。でも実は旅が苦手。準備を始めると出張みたいで心が重くなる。それでも、あまたある「ひとり」ガイドをめくって、出無精でもイケそうなのを見つけた。ツアーの1人参加だ。エイヤッと出かけたら、いろんなことに気がついた。今回はひとり旅・超初級編、まいります。(シングルスタイル編集長 森川暁子)

    はとバスにひとりで乗ってみる

     7月16日、連休最終日の東京は、午前9時の気温が32度。これから日帰り「関越道湯めぐりツアー」で、群馬、埼玉の3温泉に入ると思っただけで笑いがこみあげてくる暑さだった。

     でもバスツアーはすごく簡単。行き先の調整も交通手段の確認もなく、リュックひとつで冷房のきいた車両に乗り込む。この日「はとバス」に乗った32人のうち14人が1人参加というのは、「へー」であった。

     名古屋でひとり暮らしの公務員、恵子さん(52)は、前夜に西武ドームであったアイドルのライブを見て東京で1泊し「連休のあと1日を過ごすのにちょうどいい」と参加した。「旅行は友だちとも行きますけど、1人だと、寄り道とか、自由に動けていいんです」

     なんと自由な連休だろう。そもそも「超初級」なのは私だけで、ツアー参加者はひとり行動に慣れた人が多かった。サービスエリアで休憩するとき、ホットドッグの屋台に直進する人も、バスに残って本を読む人も、他人の視線を気にする様子がない。つくづく自分は、何をするにも周囲を見まわしているのだと思った。

    家族がいてもひとり旅

    • ツアーの自由時間に、ゆったり温泉街を歩く山浦裕美子さん(群馬・伊香保温泉で)
      ツアーの自由時間に、ゆったり温泉街を歩く山浦裕美子さん(群馬・伊香保温泉で)

     1人参加も、いわゆるシングルばかりではない。東京都三鷹市の薬剤師、山浦裕美子さん(59)は、夫と成人した子2人の4人家族だが、「日ごろの気晴らしには1人が気楽」と。伊香保温泉街の石段を歩きながら、アユの塩焼きをおいしそうにかじっていた。

     つかず離れず集団に紛れる。風呂から出てすぐ汗をかく猛暑日も、3か所目の埼玉県小川町の温泉施設に着くころには日がかげっていた。ひとりぼんやり露天風呂につかる。ひとりではあるけれど、ふと「ああ、いい風ですね」と声をかけるツアー仲間がいたのは、私としては少しありがたかった。

     はとバスによると、ツアー全般では1人参加は少数派だが、「温泉三昧」「工場見学」など、テーマがハッキリしたコースは「1人派」に人気らしい。

    ひとり限定ツアーは個性で勝負

     旅好きには常識かもしれないが、「全員1人参加」というツアーを用意する旅行会社も増えてきた。

     「クラブツーリズム」が客の要望を受けて「ひとり限定ツアー」を始めたのは、21年前の1997年。

     宿は1人1室、バスは1人で2席の場合が多く割高になるが、当初2000人程度だった参加者は、昨年5万2000人に増えた。50~70代の女性が多い。

     「香川・小豆島で自分だけのオリーブオイルを作る」「青森でイタコの口寄せ体験」など個性的なツアーはすぐいっぱいになる。

     国内旅行の企画を担当する福島直子さん(39)は、「1人で参加される方は、自分だけの趣味を追求したいという志向が強いように思います」と。今は、秋田の民家で住民と一緒になまはげ来訪を体験するツアーを計画中だ。

    友だちと予定を合わせるのもひと苦労

     川崎市の深谷すづ子さん(74)は、2か月に1回程度こうしたツアーを利用する。20年前に亡くなった夫とも一緒によく出かけた旅行好きだが、友だちと行こうとすると「そこは行ったことがある」「その日はだめ」と調整が難しい。「でも、1人だと不安だし、わからないことも多いからツアーがいい」。年末年始も、出かけていることが多いという。

    旅先なら「ひとりバー」もアリ

     書店には、近所のお出かけから海外旅行まで、さまざまな種類のひとり向けガイドが並ぶ。最近「1泊2日のひとり旅」などムック本2冊を出した「ぴあ」社を訪ねた。林由希子編集長(36)ら女性社員3人に、今どきのひとり旅について聞いたら、こんな話で「あるある!」と盛り上がった。

     ▽みんな忙しくて「ここしか休みが取れない」とき、友だちと予定は合わない▽旅先では、ひとりで行動しても人目が気にならない。近所ではためらう『ひとりバー』もできる▽女性のひとり旅が昔みたいにネガティブに見られなくなった▽心おきなく自分の趣味、好きなことに集中できる。

    「これすごい」はSNSで言う

     そして、広報担当の粟村香織さん(40)の一言がナルホドだった。「ひとり旅で困るのは『すごい』『おいしい』『楽しい』を言える相手がいないこと。それを今はSNSで共有できる。ニッチで熱を持った内容ほど拡散しやすいんです」

     はい。そういえば私も、温泉からツイッターでつぶやきました。

     「ひとりきり」になるのではなく、ツアーに紛れたり、SNSでだれかとつながったりしながら行く、ちょっとマイルドなひとり旅。いいかもしれない。

    「失恋でひとり旅」0%

     JTBが昨年1月に行ったウェブアンケート(有効回答約2800人)の結果によると、仕事以外でひとり旅をしたことがある人の割合は60%だった。

     「どういうときにひとり旅をしたいか」は、「リフレッシュしたい」(36%)が最も多く、「趣味を満喫したい」(21%)、「未知の場所を見たい」(13%)が続く。選択肢には「失恋した」もあったが0%だった。

     ひとり旅をしたことがない人に理由を尋ねると、「ひとりではつまらない」が4割を占めた。

    日常から切り替えてGO

     旅が苦手な理由を考えた。切り替えができないのだ。片づけ下手で、人様に説明できないやりかけの仕事がいくつもあり、頭の中も机の上も散らかっている。忘れてどこかに行きたいと思うけれども、旅先でイロイロ思い出しそうで二の足を踏む。

     でも、ひとり旅の楽しさを語る人たちに会い、ひとりを楽しみきれてないことが、もったいなく思えてきた。もとよりシングルは日々これひとり旅。これを書いたら夏休みを取ろう。コツメカワウソでも見に行こう。

     *見に行ったカワウソの動画をささやかにツイッターでご報告しています。

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     〒100・8055(住所不要)読売新聞東京本社編集委員室「シングルスタイル」係、ファクス03・3217・8029、メールはこちら

    2018年08月10日 17時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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