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    経済

    平成後の課題は…古川貞二郎氏、広論セミナーで熱弁

    読売新聞大阪本社論説・調査研究室
     関西の経済界が目指すべき将来像を有識者と共に考える初の読売広論セミナー(読売新聞大阪本社主催)が、大阪市内のホテルで開かれた。昭和から平成への改元の際に政府で実務を担った古川貞二郎氏が、平成後の時代に取り組むべき課題などについて講演し、企業や大学、行政の関係者ら約200人が聞き入った。

    • 広論セミナーで講演する古川貞二郎・元内閣官房副長官
      広論セミナーで講演する古川貞二郎・元内閣官房副長官

     初の広論セミナーが行われたのは11月6日。登壇した古川氏は、昭和の終わりと平成のスタートという重要局面に内閣の要職として立ち会った体験を明かし、その後の世界の激動や、日本人が考えるべき「平成後」の課題などについて語った。講演後には参加者らとの質疑応答も行われた。


    代替わりの準備

     1988年(昭和63年)9月19日、昭和天皇が吐血された。病状はかなり重いという。首相官邸で首席内閣参事官を務めていた私の緊張の日々が始まった。

     もしものことがあった場合、昭和から新時代への代替わりを直ちに進める必要がある。しかも国民はご回復を祈っており、絶対に外へ漏らしてはならない。

     中学の時、引き揚げ者の激励で佐賀に来られた昭和天皇の誠実なお姿に感動した。敬愛する陛下のご快癒を祈る一方、万一の準備に没頭する。行政官の宿命とは言え、心身が引き裂かれる思いだった。

     その時は来た。89年1月7日午前6時33分。2時間以内に臨時閣議を開き、皇太子皇位継承の内閣告示など必要事項を決議するとの手はずに従い動き出した。

     小渕恵三官房長官が7時55分に記者会見でご崩御を発表し、臨時閣議は8時22分に始まった。会見直前に決めた予定より2分遅れたが、ご崩御から1時間49分後だった。

    プラス思考で

    • 熱弁をふるう古川氏
      熱弁をふるう古川氏

     それから30年。日本は超少子高齢化、人口減社会に突入し、それはさらに加速しようとしている。振り返れば、そうした時代の先駆けとなったのが「平成」と言えるだろう。

     少子化の本質的な原因は経済問題に行き着く。結婚を望む若者が結婚しやすい環境をいかに整えるか。ただ、そのために社会保障制度改革などを強力に進めても、人口減の改善には時間を要する。

     そこで大事なのは、ポスト平成の時代を迎えるのを機に「ピンチをチャンスに変えよう」というプラス思考だ。少子化対策を進める一方で、人口増や経済成長を前提に構築された従来の社会経済の仕組みや制度を見直す機会が到来したと考えてはどうか。

     企業は元気な高齢者や女性が働きやすい環境づくりを進めるべきだ。一定の条件下での外国人労働者の雇用拡大、あるいは人工知能(AI)やロボットの活用による労働力確保といったことも視野に入れてはどうだろう。

     企業の環境づくりに備え、高齢者になっても働けるように、一人一人が自己の能力の再開発に努めたい。例えば、時代の変化について行ける能力だ。中高年の頃から健康管理を継続することも忘れてはならない。

     世界に目を転じると、日本は少子高齢化で内需が減少するのに対し、東南アジアなど開発途上国では、経済発展と生活水準の向上で中間所得層が増加している。企業にとってはグローバルな事業展開のチャンスでもある。もっとも、自社の利益を追い求めるばかりでなく、その国の人々のために寄り添う精神が大事だ。

    三つの課題

     最後に三つお伝えしたい。

     89年(平成元年)、竹下登首相は自身の退陣と引き換えに消費税を導入した。志半ばで辞任する首相の心境を思いながら、閣議で読み上げる辞意表明の文書を書いたことを鮮明に記憶している。少子高齢化が続く限り、社会保障などの財源が必要となり、消費税率の引き上げは課題であり続ける。現在の国民は子孫につけを残さない責務がある。

     次に与野党のあり方。現在の日本における不幸の一つは、与党と野党の力の不均衡だと思う。二大政党制を目指す小選挙区制の下で、今のような状況が続くのは良くない。野党は政権を批判するだけでなく、日本をどういう方向に持って行くのかという目標を示してほしい。

     そして、皇位の安定継承問題について。私は小泉純一郎首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」の委員を務めた。象徴天皇制をいかに維持するかは最も重要で深刻な課題と考えている。国民はこの問題にもっと関心を持つべきだ。

    先を読むためには?…質疑応答

    • 古川氏の講演に聞き入る参加者たち
      古川氏の講演に聞き入る参加者たち

    ――昭和から平成に変わり、インターネットで時代は激変した。人工知能(AI)やロボットで、今後はもっと激変するだろう。どう対処すればいいか。

     古川氏 仕事や働き方、人間のあり方まで変わるのではないか。人間とロボットの分業をいかにうまく進めるかが重要な課題だろう。

    ――(時代の)先を読むため、常に心がけていることはないか。

     古川氏 ネットには情報が氾濫しているが、自分の頭で考えること。私は毎日、新聞3紙を読み、必要な記事は切り抜いてノートに貼っている。いろいろな主張を頭に入れて考えている。

    ――企業の広報について、ポイントを教えてほしい。

     古川氏 自己満足になってはいけない。広報誌も読まれないと意味がない。どう受け止められているか、検証していくことが必要だ。 

    プロフィル
    古川 貞二郎(ふるかわ・ていじろう)
     佐賀県出身。九州大卒。旧厚生省(現厚生労働省)入省。中曽根、竹下、宇野内閣で首席内閣参事官を務め、厚生次官を経て1995年に内閣官房副長官に就任。歴代最長の8年7か月にわたり村山、橋本、小渕、森、小泉内閣を支えた。恩賜財団母子愛育会会長。84歳。

     広論セミナーは、読売新聞関西経済面で毎週土曜日に掲載している企業人や学識経験者らの大型コラム「広論」と連携した企画で、本格開催は2019年4月。年4回のセミナー開催を予定している。年間会員の申込みはこちら

    関西経済の針路論じる…「広論」ライブ版に

    • あいさつする溝口烈・読売新聞大阪本社社長
      あいさつする溝口烈・読売新聞大阪本社社長

     セミナーでは、主催者を代表して読売新聞大阪本社の溝口烈社長があいさつした。

     「『広論』という言葉は、大阪に近代経済の礎を築いた五代友厚が名を連ねた大阪商法会議所(現大阪商工会議所)設立請願書の一節『広く論議を尽くす』から取りました。読売新聞の紙上に、関西の経済論壇を構築することを目指しています。

     広論セミナーは『広論』のライブ版です。毎回、ホットなテーマを選び、幅広い分野のゲストスピーカーにお越しいただきます。ご参加の皆様同士で交流を深め、関西経済の進むべき道について論じ合っていただければ幸いです」

    2018年11月13日 16時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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