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    eスポーツ

    「パワプロリーグ」が開幕~eスポーツに野球が参戦

     プロ野球シーズンが終わった11月、コンピューターゲームの世界で熱戦が幕を開けた。パソコンソフト「実況パワフルプロ野球」(パワプロ)を使って、発売元のコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)と日本野球機構(NPB)が共同開催する、eスポーツの新リーグ「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」だ。記念すべき開幕戦は、本物のプロ野球にも引けを取らないほど盛り上がり、eスポーツ拡大の可能性を感じさせた。(読売新聞メディア局編集部・原啓一郎)

    まるで東京ドーム!ゲームの野球に大歓声

    • チームメートとハイタッチして先制点を喜ぶてぃーの(中央)
      チームメートとハイタッチして先制点を喜ぶてぃーの(中央)

     11月10日、東京・渋谷にあるイベントホール「ベルサール渋谷」。スクリーンがホール内の3か所に設置され、その隣でeスポーツプレーヤーたちがコントローラーを握り、スクリーン上の選手を操った。客席は野球ファン、ゲーム愛好家、その両方とも好きな人など計200人の観衆で、ぎっしり埋まった。

     3試合が並行して行われ、どの試合も一つのプレーごとに沸き返る。大歓声と拍手が絶えない会場内の熱気は、プロ野球のスタジアム並み。本格的な実況と解説の場内アナウンスを聞きながら楽しめる点では、オリンピックなど大試合の集団テレビ観戦で盛り上がるスポーツバーも連想させた。

     会場中央の大型スクリーンで行われた第1試合は、プロ野球界で「伝統の一戦」と呼ばれる巨人―阪神の顔合わせ。エースの菅野を先発させた巨人と、小刻みな継投策の阪神が、見応えある投手戦を繰り広げた。三回裏、巨人は吉川尚の二塁打から一死三塁の好機を築くと、菅野の犠牲フライで先制。その後は、巨人の投手陣が阪神打線をピシャリと抑え、1-0で競り勝った。巨人を操作したeスポーツプレーヤー、てぃーの(26)は「緊張感も高揚感もある試合だった」と振り返りつつ、「もっと派手なホームランや三振で、プロってすごいと思われるプレーをしたい」と、向上心も口にした。

    12球団のプロゲーマーが激突!~パワプロの奥深さとは?

    • パワプロ内で選手は全員2頭身になる。かわいらしいグラフィックも魅力だ
      パワプロ内で選手は全員2頭身になる。かわいらしいグラフィックも魅力だ

     パワプロは、プロ野球の選手とチームが実名で登場し、プレーの特徴や実力も本物そっくりという人気ゲームで、試合のルールもプロ野球と同じ。操作は非常にシンプルで、攻守ともに少ないボタン数で選手たちを動かせる。

     その反面、1ミリ未満のレバー操作の狂いが本塁打と凡打を分けるため、高度なテクニックが求められる場面が多い。しかも、選手一人ひとりの足の速さや球速などが細かく設定されていて、試合ごとに選手の「調子」も変わるので実力を十分に発揮できたり、できなかったりする。こうした情報を頭に入れて的確に操作できるかどうかが、勝敗を左右する。選手の能力や調子を見ながら打順や采配を決める「監督」としての力量も問われる。

     パワプロリーグには、eスポーツプレーヤーが計36人出場。3人ずつ12球団に分かれて、セ・パ両リーグのペナントレースを戦う。

     ペナントレースは11~12月に全5節。各節は3試合ずつ行われ、2勝したチームがその節の勝者となる。各試合のイニング数は6回(延長は9回)と、実際のプロ野球より3回短い。セ・パ両リーグの上位3チームによる代表決定戦を経て、来年1月12日の日本シリーズで日本一を決める。プレーヤーの報酬は総額1200万円とされ、出場者は「プロ」と位置づけられている。

    真中さんの名解説に沸く~eスポーツ拡大の可能性

    • 聴きごたえのある実況・解説と、テンポの良い試合が、気軽な観戦につながりそうだ
      聴きごたえのある実況・解説と、テンポの良い試合が、気軽な観戦につながりそうだ

     エンターテインメントとしてのパワプロリーグの大きな魅力の一つは、聴きごたえのある実況、解説にある。開幕節では、テレビやラジオで活躍する本職のアナウンサーが実況を務めた。ヤクルト元監督の真中満さんやギャオス内藤さんら、そうそうたるプロ野球OBが解説者として登場、さらに「パワプロの強豪ゲーマー」も加わった。

     真中さんは「3ボールになった後、ストライクゾーンに置きにいった球を打たれている」「4番打者にスクイズを指示しても、ゲームだから打者のメンタルを考慮する必要がないのがいいねえ」など、球界での経験に裏打ちされたコメントで、観衆を喜ばせた。強豪ゲーマーも、その道の知見を生かしてプレーヤーの狙いを読み解き、アナウンサーも試合展開を的確に語った。3者それぞれの立場から、勝負のポイントやパワプロの面白さを、観衆に場内アナウンスで語り伝えた。

     もう一つ、試合のテンポの良さも魅力だ。パワプロは1イニングが3分程度で、1試合が1時間以内で終わることがほとんど。選手や攻守の交代が自動で行われるため、実際のプロ野球よりもサクサクと試合が進む。短時間で、解説つきの観戦を楽しめる気軽さは、eスポーツを初めて観戦する人にとって、かなりハードルが低い。他のeスポーツを観戦取材すると、「ルールが難しい」「試合の状況が分かりにくい」などの声を聞くことがあったが、これらの課題をパワプロはほとんどクリアしているように思えた。

     国民的な人気スポーツであるプロ野球のチームや選手が躍動するという点も強みで、観衆の層は若者中心ながら、幅広かった。観戦した年配の男性は「巨人のファンだが、実際の試合のように熱くなった」と声を弾ませていた。各球団から会場に派遣されたマスコット見たさに足を運んだ女性ファンも、試合後はパワプロへの興味が芽生えたようで「私もパワプロ、始めてみようかな」とつぶやいていた。

     「eスポーツの入り口」になる可能性を秘めていると感じさせる、パワプロリーグ。KONAMIの小林康治・第3制作本部長は「実際のプロ野球がオフシーズンに入る11~2月に開催することで、一年中野球が楽しめるようになる。野球ファンとパワプロファンが、お互いの好きな『野球』に興味が持てるようにしたい」と狙いを語る。プロ野球ファンの拡大とeスポーツ人口増加、その両方を期待できそうなリーグが、誕生した。

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    2018年11月15日 12時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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