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    スポーツ

    米で苦戦の横峯さくら、東大の先端科学で解析中

    読売新聞編集委員 三宅宏
     プロゴルファーの横峯さくら(32)が、東京大学スポーツ先端科学研究拠点で、技術や心理面のチェックを受けている。12月3日には東大・駒場キャンパスで2回目のデータ収集が行われ、モーションキャプチャーを使ったフォームの解析を受けた。2015年に戦いの拠点を米国ツアーに移してから、いまだ勝ち星がない横峯。最先端科学を追い風に、脱皮を図ることができるだろうか。

    カメラ15台、筋電計16か所

    • モーションキャプチャーでスイングチェックを受ける横峯(2018年12月3日、東京大学大学院総合文化研究科で) 
      モーションキャプチャーでスイングチェックを受ける横峯(2018年12月3日、東京大学大学院総合文化研究科で) 

     モーションキャプチャーを使うのは、横峯にとって初めてのことだ。

     取り囲む15台のカメラに反応させるため、体には43個のマーカーが貼られ、上腕二頭筋など16か所に筋電計をつけられた。手首には心拍数を図る計器も巻かれた。

     計測したスイングは、ドライバー10回、7番アイアン10回の計20回。ネットに向かって実際に球を打つたびに、感覚(よかった、普通など)と「どういう球筋だったと思うか」を研究員が確認した。後で、計測データと付き合わせるためだ。途中、横峯の意向で「フェード(右に曲がる球筋)気味に打つ」など、実戦に即したスイングも取り入れられた。

     「不随意の姿勢制御」という難しいテーマの実験も行われた。

     横峯は足首に振動刺激を受ける器具をつけられ、スクリーンのある暗室の中へ。特定の映像を見させて解析すると、バランス感覚を「視覚から得やすい」のか、「足の筋肉から得やすい」のかが分かる可能性があるのだという。

     被験の対象は、横峯だけにとどまらない。

     夫でキャディーも務める森川陽太郎さんもチェックを受ける。

     2人は来年、「プレー中はお互いに敬語で話す」ことを考えているそうで、敬語を使った時と使わなかった時の心理面の違いも、今後、分析される予定だ。

    「データ化とフィーリングで最強に」

    • 身体に多数のマーカーや筋電計をつけられる横峯(2018年12月3日、東京大学大学院総合文化研究科で)
      身体に多数のマーカーや筋電計をつけられる横峯(2018年12月3日、東京大学大学院総合文化研究科で)

     東大スポーツ先端科学研究拠点は、2016年5月に設置された。

     スポーツ・健康科学について分野横断的な研究を促進して、その学術成果を教育や社会に還元することが目的だ。ゴルフに関しては、「プレーの再現性とメンタルが重要と課題がはっきりしている。また、高齢者が楽しめるだけでなく、高齢者でも技術の向上が期待できる」(拠点長の石井直方教授)ということで研究対象にうってつけなことから、拠点内に「ゴルフ・サイエンス・アカデミー」を発足させた。

     東大から見ればトッププロのデータは貴重であり、横峯から見れば自分のゴルフをデータで裏付けできる。双方の利害が一致したことで、今回の共同研究となった。

     スイング分析などのサービスは結構あるが、では、東大の解析は他とどう違うのか。

     「総合的な分析力だと思う。ひとつのデータを多角的に分析する。今回のテストにも、8分野の専門家が集まっている」

     そう話すのは研究拠点の事務局長を務める吉岡伸輔・准教授だ。

     どういうことかというと、たとえば、今回のモーションキャプチャーを使ったチェックの場合、吉岡准教授は「バイオメカニクス(身体運動学)の専門家」として分析する。一方で、ロボットの関節に関する計算理論は人間の運動解析に応用できるというということで、ロボット工学の専門家も別の視点からデータ処理に加わるという仕組みだ。まさに「分野横断的」と言える。

     最後に横峯の感想を聞こう。

     「自分は再現性がないと思っていたが、測ってみたらそうでもなかったので安心した。いろいろなことが明確になるので楽しみ。即効性を期待できるものもあるし、時間をかけて取り組んでいくものもあると思う。いままでフィーリングでやってきたので、数字で明確に可視化されるのはうれしい。データ化とフィーリングで最強に。東京大学さんと試行錯誤しながら、いろいろやっていけたらと思う」

     東大と横峯がタッグを組んだ研究は、今後も随時、行われる。

    2018年12月04日 10時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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