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    社会

    カードゲーム、大人も夢中~根強い人気はどこから?

     ゲームやアニメのキャラクターなどが描かれたカードで対戦するトレーディングカードゲーム(TCG)が人気を集めている。日本で登場して以来20年超。子どもたちはもちろん、子どもの頃に遊んでいた世代が社会人になり、再び遊び始めるケースもある。「ユーチューバー」によるブームの再燃や、進化したテクノロジーによるデジタルのカードゲームも登場している。TCGのディープな世界に迫った。(読売新聞メディア局編集部)

    発売日に1000人超!「ポケモン」人気はカードでも

    • エトキ:多くの人が集まった「GXウルトラシャイニー」発売日の「ポケモンセンターメガトウキョー」(11月2日撮影)
      エトキ:多くの人が集まった「GXウルトラシャイニー」発売日の「ポケモンセンターメガトウキョー」(11月2日撮影)

     「ただ今整理券を配布しております」。11月2日、東京・池袋のポケモングッズ専門店「ポケモンセンターメガトウキョー」に、早朝から1000人超が列を作った。お目当ては、この日発売のTCG「ポケモンカードゲーム(ポケカ)」の新作「GXウルトラシャイニー」。これまでに登場したカードのうち、特に「強い」「珍しい」カードが手に入りやすいとして注目されており、SNSでは多くのユーザーが「絶対に欲しい!」と話していた。

     友達5人と購入した高校3年生の男子(18)は、「うれしすぎて言葉が出ない。手に入るか心配だった」と満面の笑み。「これから開けて、今日はみんなで遊び続けます!」と足早に帰っていった。店舗近くでは早速買ったカードを開ける集団が。カードは「パック」という、何が入っているか分からない袋に入っていて、お目当てのカードが手に入るかも楽しみの一つだ。「『シロナ』のSR(大当たりカードの1種)が当たった!」「うーん、微妙かなあ」など、悲喜こもごもの声が聞こえてきた。

     ポケモンカードゲームは1996年に誕生。ゲーム「ポケットモンスター」のキャラクターを使っており、根強い人気を誇る。全国的に品薄状態で、毎月登場する新しいパックも、発売日に売り切れが続出。株式会社ポケモンの塙諒介さんは「ユーザーの希望を十分に満たすだけの提供ができておらず、申し訳ない。(人気は)ありがたいが、生産体制を強化して、求めていただいている方に提供するのが第一の課題だ」と話す。突然の人気に、店舗で販売制限を設けたり、オンラインショップでの抽選販売にするなどして対応している。

    ブームのきっかけは500円のデッキとユーチューブ

    • 「GXスタートデッキ(商品奥)」を前に話す長島さん(左)と塙さん
      「GXスタートデッキ(商品奥)」を前に話す長島さん(左)と塙さん

     ブームのきっかけは、7月に発売された「GXスタートデッキ」。買ってすぐに対戦ができるよう、初心者向けに開発された製品だ。価格は一つ500円と比較的安価なうえ、デッキは全部で9種類あり、そこから選ぶ楽しみもある。

     これがユーチューバーの目に留まった。キャラメル箱サイズのカラフルな箱をカメラの前に並べ、紹介する動画が次々とアップされた。デッキ選びや対戦などの楽しそうな様子が配信され、中には300万回以上再生された動画も。ここからブームが爆発的に広がった。

     塙さんは「『また流行しているんだ。やってみようかな』と、気軽に手に取ってもらえたのでは」と振り返る。ルールが約20年の間ほとんど変わっていないことや、「ポケモン GO」の流行でポケモンを知る世代が増えたことも後押しした。開発を手掛ける株式会社クリーチャーズのゲームディレクター、長島敦さんは「ポケモンの知名度もあり、『ポケモンを集めて対戦する』ゲームのカード版だとイメージされやすいのが大きい」と話す。家庭で親子が遊ぶことも意識しており、小さい子どもやTCGに慣れない大人も分かりやすいよう、カードに書かれた記述は短く、ルールもシンプルになっている。

    昔遊んだ世代が主力~「プロ」や高額賞金の大会も

    • 大勢の参加者でにぎわう「デュエル・マスターズ」の大会の様子=タカラトミー提供
      大勢の参加者でにぎわう「デュエル・マスターズ」の大会の様子=タカラトミー提供

     TCGは、集めたカードを自由に組み合わせた束「デッキ」を作って持ち寄り、2人以上で対戦するゲーム。カードに書かれた数値や記述を使って、自分のポイントをためたり相手のポイントを奪ったりして勝敗を競う。1993年にアメリカで誕生し、日本では「遊戯王」「デュエル・マスターズ」などのタイトルが人気だ。

     子ども向けの趣味とされるが、現在の主力層は大人だ。世界初のTCG「マジック:ザ・ギャザリング」の販売元によると、日本国内のプレーヤーの平均年齢は29歳。「競技」としての大会も多く、優勝賞金が1000万円を超える世界大会もあり、一部タイトルではカードゲームで生計を立てるプロも。緻密な戦略や論理的な思考力、運などが求められ、将棋やチェスなどに近い頭脳戦といってもいいだろう。

     趣味として楽しんだり、対戦目的に加えてコレクションとして買い求めたりするユーザーも多い。矢野経済研究所によると、2016年度の市場規模は428億円で、年々売り上げは増加傾向にある。サークルができる企業も増えたため、12月にポケモンカードゲームの「企業対抗戦」を開催するなど、大人の趣味としても根付きつつある。

     新品のパックなどはおもちゃ屋などで購入することが多いが、開封済みのカードを取り扱う専門店もある。中には1枚で数千円するものもあり、価格はカードの強さや珍しさ、人気などに応じて上下する。「メルカリ」「ヤフオク!」など、フリーマーケットサイトなどで購入するユーザーも多い。

    立体、ピザ、カレーの香りも?

    • デュエマのカード現物。カップ麺の形の容器(左下)は、カップ春雨スープの工場で作成されたという
      デュエマのカード現物。カップ麺の形の容器(左下)は、カップ春雨スープの工場で作成されたという

     TCGで使われるカードは、名刺大の長方形の紙に絵や文字が印刷されているのが通常だ。その概念を超えたカードを生み出してきたのが、タカラトミーのTCG「デュエル・マスターズ(デュエマ)」だ。

     折りたたみ式の立体カードやカレーの香りがするカード、シールをはがして使うカードなど、独自のカードが並ぶ。デッキのパッケージも箱包装に加え、「カップ麺の形」「宅配ピザの形」など独特のものもある。開発を手掛けるタカラトミーの後藤悠太さんは「デュエマには『ぶっ飛んでいたい、攻めていたい』というポリシーがある」と笑顔を見せる。立体カードは2014年、売り上げが低迷した際に「唯一無二のカードを作ろう」と生み出されたものだという。これを皮切りに売り上げはV字回復。18年度の売り上げは前年比の1.2倍を見込んでいる。

     デュエマは02年に誕生。漫画誌「コロコロコミック」やアニメとの連動もあり、小学生を中心に人気が高く、今秋、全国のショッピングモールなどで行われた小学生向けイベントでは、1会場に2000人以上が訪れた。対戦会に参加できるのは小学生以下のみ。「強すぎる大人がいないので、実力が近い子どもたち同士で、和気あいあいと対戦していた」と後藤さんは振り返る。大人のプレーヤーも多いが、「小学生とはしっかり線引きしている」と強調した。

     一方、デュエマを競技として楽しむ層の多くが大人だ。出場者約4000人の大会が30分で埋まるほどの人気だ。競技層向けには「ポイント制」を導入しており、各大会の戦績に応じたポイントが与えられ、プレーヤーの順位付けがされている。全国大会の決勝戦などはインターネットで動画が生配信され、プレーヤーは髪をセットされたり、化粧がほどこされる。「強いプレーヤーが小学生のあこがれの的になるよう、格好いい見せ方をしています」と後藤さんは話す。

    デジタルカードゲームも登場~eスポーツとしても注目

     紙のカードを使うTCGだが、最近はスマホやPCで遊ぶものもある。日本では「シャドウバース」「ハースストーン」などのタイトルが人気で、ゲームの腕を競う「eスポーツ」の種目にもなっている。紙のカードで遊ぼうとすると、相手を見つけて、場所を探すという手間がかかるが、デジタルであれば、対戦相手はネットで見つけられるので、気軽さではデジタルの方が勝る。

     だが紙のTCGは、対戦相手とのコミュニケーションが必ず生じる。長島さんは「デジタルでの勝負と異なり、紙のTCGの対戦では、対面する相手が正面に必ずいる。『この人に勝ちたい』という思いが芽生えやすいのは、紙だからこそ」と指摘する。イベントでは、「楽しい試合ができたね」と褒め合うこともあれば、真剣勝負に敗れて泣く人もさまざまだ。

    • 貼られたシールをはがすと、何かのカードが見える「デュエマ」のカード
      貼られたシールをはがすと、何かのカードが見える「デュエマ」のカード

     また、パックを開ける楽しさは紙だからこそ。デュエマのパックの中には、パックの中のカードにシールが貼られているものもある。開けた後にさらに、「シールの向こう側に何があるのか」と楽しめる。後藤さんは「何が出るか分からないワクワク感は、大人も子どもも共通のもの。それを何度も体験できれば、絶対に楽しいだろうと思って作った」と狙いを語る。

    金銭トラブルも~保護者はどう子どもを見守る?

    • バーでTCGを楽しむ大人たち。ユーザー主催のイベントも数多い(9月25日撮影)
      バーでTCGを楽しむ大人たち。ユーザー主催のイベントも数多い(9月25日撮影)

     大人も子どもも楽しめるTCGだが、やはり少々お金がかかる。お目当てのカードがなかなかパックから出てこなかったり、中古市場で買うと数千円するものもあったりするうえ、金銭面でのトラブルも起きている。

     今年10月、人気カードゲーム「遊戯王」の偽物のカードをオークションサイトで約40万円で販売したとして、29歳の男が商標法違反の容疑で逮捕された。落札した女性が偽物と気付き、警察に相談。本物は世界大会の優勝賞品で、世界に6枚しかないものだった。このような数十万円のカードではなくても、オークションサイトなどでは偽物と思われるカードが流通している。中には、強力カードの写真と名前を掲載し、説明文の一番下に小さく「強力カード(が入っていた箱)」と記載し、ユーザーをだます事例もある。

     国民生活センターにも、「フリーマーケットサービスでTCGを購入したが、外箱だけが届いて中身がなかった」「カードを買ったが、届いたものは明らかに加工されたものだった」などの相談が寄せられている。どちらも出品者側に返金や返品、再送を求めたが、連絡が途切れてしまったという。担当者は「ブランドバッグや衣類で起こるトラブルを防ぐのと同様、写真を確認する、出品者側とやりとりするなどして、疑問をなくしてから取引するように」と呼びかけている。

     中学3年生の息子に代わって「GXウルトラシャイニー」を買いに来た東京都板橋区の主婦は、「息子がカードを開けている時、楽しそうな顔を見せる。光っているカードが出てくるとうれしいんでしょう」と話す。「カードをやりすぎて、テストの成績などが心配になることもあるが、(TCGで)作戦を立てて考えて、頭を使っていると思うので、それはいいこと。見守ってあげたい」と笑顔を見せた。

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    2018年12月06日 17時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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