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    社会

    目と目が合ったらバトルスタート!~「ポケモンカードゲーム企業対抗戦」に参戦

     ポケモンカードゲームの企業対抗戦が16日、初めて行われ、76社から82チーム、271人が参加し、社会人ナンバーワンの座をかけて戦った。読売新聞社からは3人が参戦。ポケモンカードゲーム初心者3人組の、激闘の様子をお届けする。(読売新聞メディア局編集部・原啓一郎)

    社会人ナンバーワン決定戦、初開催!

    • 「ポケモンカードゲーム企業対抗戦」で熱戦を繰り広げる参加者ら(16日、東京都港区で)
      「ポケモンカードゲーム企業対抗戦」で熱戦を繰り広げる参加者ら(16日、東京都港区で)

     「『カプ・テテフGX』をベンチに出します。『ワンダータッチ』を使います」

     「ワザ『タッグボルトGX』。2体きぜつさせて、サイドを4枚取ります」

     会場の熱気が、上記2つのカギカッコだけで、わかる人にはわかるだろう。東京・新橋の一角にあるイベントスペースに、シャカシャカとカードをさばく音や、カードの効果を読み上げる声が響く。声の主はみな社会人。彼らが真剣にプレーしているのは、トレーディングカードゲーム(TCG)の1種「ポケモンカードゲーム」だ。この日は子どもではなく大人が、会社を背負って真剣勝負に挑んだ。

     アニメやゲームのキャラクターが描かれたカードで対戦するTCGは、大人も夢中になっている趣味のひとつだ。子どもたちはもちろん、子どもの頃に遊んでいた世代が社会人になり、再び遊び始めるケースも多い。TCGサークルがある企業もある。本大会は発売元の株式会社ポケモンが初開催した。1チーム2~4人で参加でき、社会人ナンバーワンを目指したり、他社のポケモンカードゲーム仲間と交流をしたりするのが目的だ。

    初心者トリオの猛特訓

     読売新聞社からは私に加え、KODOMO新聞編集部の古和康行記者、教育部の石橋武治記者が参加。3人ともポケモンカードゲームは初心者だ。12月上旬、石橋記者から誘いが来た時は、「楽しくわいわいやれる、交流会のようなものかな」と軽く考えていた。だが、参加する企業の顔ぶれを見ると、各種TCGの強豪がいる「日本将棋連盟」や、TCG専門店の運営会社、ヤフーやソフトバンクなどのIT企業の名前が並ぶ。「かなりレベルの高い大会になるのでは」と悟り、本気で練習して臨むことにした。

     仕事帰りにTCG専門店に向かい、使うカードの束「デッキ」を入念に考え、ひたすらに練習。「自分のデッキができる一番強い使い方を、毎回引き出せるようにしよう」と、黙々と対戦を重ねた。私と古和記者は他のTCGの経験があり、のみ込みは早かったが、TCG初体験の石橋記者はやや苦戦。「このカード、どうやって使うの?」「難しいね……」と嘆きながらも、何とかカードの使い方を覚え込んだ。

     TCG経験が最も長い私が、必然的にコーチ役を務めた。年齢も記者歴も上の先輩に色々と教えるのは、正直怖い。それでも勝ちたい一心で、「それ違います」「もっといい動きができます」と、心を鬼にして鍛え上げた。年が離れた人と同じゲームを楽しめる喜びを感じながら、腕がつるまでお互いを高め合う。「まるで『ドラゴンボール』の修行だね」と笑い合った。私も寝る間を惜しんで研究し、対戦するだろうデッキの情報を頭に叩(たた)き込んだ。

    目と目があったらポケモンバトル!

    • 対戦前に名刺交換する参加者ら(株式会社ポケモン提供)
      対戦前に名刺交換する参加者ら(株式会社ポケモン提供)

     参加者には「熟練度シール」が配られた。自分のポケモンカードゲームの経験値によって、「半年以内に始めた(初心者)」「始めて半年以上(中級者)」「公式大会に出場経験がある(上級者)」の3種類に分けられる。実力差がありすぎる参加者が戦うことを避けるための配慮だ。当然、読売新聞社チームは3人とも初心者だ。

     予選はチップ争奪戦。会社ごとにチップが配られ、それを賭けて好きな人と戦う。3時間以内に多くのチップを集めた上位8社が決勝トーナメントに進める。とにかく、たくさん戦って、チップを集めることがポイントだ。チップは、2人チームには14枚、3人チームには18枚、4人チームには20枚が配られており、会社内でどれだけポケモンカードゲーム仲間を見つけられたかも重要になっている。開会式が終わり、予選がスタート。3人で円陣を組み、「絶対勝つぞ!」と、野太い声を響かせる。

     早速、男性の参加者と目が合った。私を見て、何かを訴えようとにやりと笑みを浮かべていた。ゆっくりと彼が私に近づき、「対戦しませんか」と一言。断る理由はない。「やりましょうか」と短く返すと、さっそく対戦成立だ。トーナメント表だとか、組み合わせ抽選会などというものはない。「目と目が合ったらポケモンバトル」が原則の、ゲーム「ポケットモンスター」シリーズの世界に飛び込んだような大会である。

     試合の前に名刺交換をするのがルール。だが、これから行われるのは商談や取材ではない。両者のプライドをかけた、本気の戦いなのだ。

    胸には初心者マーク。だけど手さばきは……?

    • 試合前の準備をする原記者。手さばきを見れば、TCGの練度が分かると自負している。
      試合前の準備をする原記者。手さばきを見れば、TCGの練度が分かると自負している。

     1戦目の相手はトーキョー・オタク・モードの竹森創さん。アニメやゲームなどのサブカルチャーを発信するメディアを運営したり、アニメグッズなどを開発・発送する会社だ。胸の熟練度シールは初心者だ。

     ちょっと待て。相手のカードさばきが、明らかに初心者ではない。鮮やかにデッキをシャッフルする手つきは、確実に経験者だ。私も20年以上のTCG経験があり、数千回の試合をしているから、対戦相手のカードさばきを10秒見れば、練度が分かると自負している。竹森さんは私と同じく、「ポケモンカードゲームは初心者だが、カードゲームの経験はある」人だと予感した。

     試合を始めると案の定だ。きちんと練られたデッキに、「初心者……?」と戸惑ったが、私も負けてはいられない。鍛え上げた『ウルトラネクロズマ』のデッキで迎え撃ち、幸先よく1勝。「原さん、TCG経験ありますよね?」「竹森さんだってそうでしょう」と笑い合いながら、チップを1枚受け取って次の戦いへ。厳しい戦いになる予感がした。

     すぐに次の対戦相手が見つかった。名刺交換を終え、対戦を始めると驚いた。相手のデッキはポケモンカードゲームのトーナメントシーンで人気の、通称「ルガゾロ」デッキだった。胸には初心者マーク。「絶対初心者じゃない」「原さんだって」とお決まりのやりとりをしていたら、『ベトベトン(アローラのすがた)』でデッキの動きが封じ込められ、負けた。

     「いやー、『ジラサン』デッキのメタでアロベトを入れたんですけど、『ウルネク』もまとめて見ることができましたね」と語る相手。TCG用語が並び、世間の大多数が理解できないだろう会話が交わされる感想戦は、秋葉原のカードショップでの風景そのものだ。「あぁ、楽しい……」。これだよ、これ。生きている実感が湧いてきた。

    TCGに携わる人と対戦。厳しい戦いが続く

    • 会場は満員。全員がポケモンカードゲームプレーヤーだ(株式会社ポケモン提供)
      会場は満員。全員がポケモンカードゲームプレーヤーだ(株式会社ポケモン提供)

     その後も激しい戦いが続いた。3戦目の相手は試合前、「同僚に誘われて、今朝デッキを渡されました。僕は子どもの頃にやった程度です……」と話すも、試合が始まれば一転。12月に発売された『ギャラドス』を軸にした最新のデッキだった。ギャラドスの『だいぎんじょう』攻撃で追いつめられるも、一瞬の隙をついて、ワザ『めつぼうのひかりGX』を使い、逆転勝利。「もう胸のシールは信じない」と固く誓った。私を含めて、ここにいる「初心者」のほとんどが、初心者の皮をかぶった「カードゲーマー」だと悟った。

     と思っていたら、直後の4戦目はポケモンカードゲームを始めたばかりの人で、正真正銘の初心者。ルールを教えながら、危なげなく勝利した。ちょっと心が洗われた。

     チップも順当に増えてきた5戦目の直前、古和記者、石橋記者から「チップがなくなりそう」という連絡が来た。石橋記者は連敗してしまい、古和記者はチップを大量に賭けた試合で負けてしまったとのことだ。私の5戦目では1枚賭けで試合が始まってしまい、「早く勝って次に行かなければ」と意気込みながら名刺を交換。対戦相手の名刺を受け取った。

     「ブックオフ新宿駅西口店TCG担当の羽毛田学です」との自己紹介に、膝から崩れ落ちそうになった。肝心なところでTCGのプロと当たってしまった。ポケモンカードゲーム歴は3か月とのことで、胸には初心者マークをつけているが、間違いなく強い。使うデッキも『ゲッコウガGX』『メガニウム』『ラグラージ』を軸にした、通称「カエループ」。プレイ難易度が非常に高く、ポケモンカードゲーム界隈(かいわい)で噂(うわさ)になっていた最新のデッキだ。企業対抗戦でお目にかかれるとは思ってもいなかった。

    • 原記者使用の「ウルトラネクロズマ」デッキ。
      原記者使用の「ウルトラネクロズマ」デッキ。

     とにかく早く攻めなければと、あと一歩のところまで追いつめたが間に合わず、相手の布陣が整ってしまった。次々と倒される自分のポケモンたちを見ながら、勝てない自分に、2人の仲間を強くできなかった自分に、「不甲斐(ふがい)ない……」と唇をかんだ。なすすべもなく負け。チップ争奪戦の残り時間もわずかで、次の試合で大量賭けしても、望みは薄かった。6戦目も行ったが、試合途中で時間切れとなった。

     チームの最終成績は82チーム中67位で、当然予選落ち。チップの枚数は9枚と、ほろ苦い結果となった。後半の試合でチップを複数枚賭けして、一気に枚数を増やす戦略にすればよかったと後悔している。

     決勝トーナメント進出には、30枚以上のチップを集めなければならなかった。優勝はリップルコミュニティ。決勝戦では最新のカード『ピカチュウ&ゼクロムGX』のデッキを使いこなし、対戦相手のアニメイトカフェを圧倒。閉会式で、ポケモンカードゲームの開発を手掛ける株式会社クリーチャーズのゲームディレクター、長島敦さんからトロフィーが手渡されると、会場からは割れんばかりの拍手が送られた。

    社内で、社外で。TCGが生んだ新しい交流

    • 優勝し、トロフィーを掲げるリップルコミュニティの社員(株式会社ポケモン提供)
      優勝し、トロフィーを掲げるリップルコミュニティの社員(株式会社ポケモン提供)

     チップ争奪戦終了後、会場では決勝トーナメントに進めなかった参加者同士での交流が行われていた。「よかったら対戦しませんか」と声をかけ、名刺を交換し、対戦する。チップ争奪戦とは打って変わって、和やかな時間を過ごすことができた。立場も年齢も何もかも違うが、ポケモンカードゲームという共通のツールがあれば、すぐに仲良くなれる。「今度一緒にカードショップに行きましょう」「うちで交流戦をするんですが、よかったらどうですか」など、今後につながる関係も生まれた。

     熟練度シールによる練度の識別も画期的だった。こういったチップ争奪戦では時々、上級者が初心者を狙う「初心者狩り」が横行し、始めたばかりの人は嫌気がさしてしまうことがある。シールがあれば練度が一目で分かり、実力がすぐに分かるため、上級者は高いレベル同士で、初心者は気楽に対戦できる。ただ、初心者の中には私のように「ポケモンカードゲームは初めてだが、他のTCGの経験がある」人が多くいた。他のTCGでの経験があれば、ポケモンカードゲームのやり方もすぐにのみ込むことができ、実力差が出てしまう。次回があれば、もっと細かい分け方を用意してほしいと思う。

     会場は終始熱気であふれていた。至るところで対戦が繰り広げられ、笑い声や拍手などが途切れなかった。長島さんは閉会式で「競技として制作すると同時に、気楽に楽しめるカードゲームという部分を大切にしている」と、ポケモンカードゲームの開発のねらいを語ったが、言葉通り、ハイレベルな戦いと交流会のバランスが絶妙に整った大会となった。

     他部署の先輩と仕事以外で、これほど長く接したのは初めてだった。石橋記者は「原くんから借りたカードを自分で集めて、これからも続けたい」、古和記者は「ジムバトル(ポケモンカードゲームの店舗大会)に出る!」と話しており、まだまだ戦いは続きそうだ。立場も年齢も超えて、ただ強くなろうと真っすぐに日々を過ごすことは、社会人生活の中でそうないだろう。TCGが、かけがえのない1週間をプレゼントしてくれたように思う。

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    2018年12月18日 14時45分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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