大学生が企画運営する「若者能」

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 「はじめて見る方のためのやさしいお能」を掲げて、大学生らが企画・運営するイベント「若者能」が1月5日、東京・水道橋の宝生能楽堂で開催される。「わかりにくく、難しい」と言われがちな能に、どうやったら親しみを持ってもらえるか。実行委員の大学生らが公演前に舞台に上がって、見どころを伝えるほか、公演中にLINEで同時解説を配信する。大学生らは「本格的なお能が気軽に見られる貴重な機会。ぜひ見にきてほしい」と呼びかけている。(調査研究本部主任研究員 黒川茂樹)

女武者「巴」って知っている?

実行委員の(左から)新井万裕さん、伊藤希さん、疋田悠真さん
実行委員の(左から)新井万裕さん、伊藤希さん、疋田悠真さん

 若者能は、喜多流シテ方の塩津圭介さん(34)が大学生だった2004年、「若者の、若者による、若者のための能」を仲間とともに企画・運営しようと始まった。その後も、日本文化に興味を持つ学生らによって引き継がれ、年1回のペースで開催されている。

 14回目となる今回は、大学1~3年生の計5人(うち女性4人、男性1人)が実行委員を務める。大学生らは、チラシやホームページ作りなどに参加しているほか、協賛企業への訪問、当日の運営準備などで大忙しだ。初心者に気軽に来てもらえるよう、チケットは学生・小児1000円(一般前売り4000円)。この安さで、圭介さんがシテ(主役)を務める能「巴(ともえ)」などの本格的な公演が鑑賞できる。

 「『巴』って知っている?」――。実行委員の中央大2年生、新井万裕(まゆう)さん(20)は周囲の友人にこんな感じで呼びかける。大方は「知らないよ」とそっけなく返されるが、「高校の古典の教科書に『巴御前(ともえごぜん)』が出てきたよね、それについて見られるよ」と説明して興味を持ってもらうのだという。

能「巴」は、力強い女武者が登場する人気曲だ
能「巴」は、力強い女武者が登場する人気曲だ

 能「巴」は、平安末期、源平合戦で非業の死を遂げた木曽義仲に仕えた女武者・巴御前を主人公にした人気曲だ。義仲が自害する際、「お前は女だから忍んで生きるすべもあるだろう」と言われ、一緒に死ぬことが許されなかった巴は、涙にむせびながらも、押し寄せる敵方をなぎなたで次々と倒していく。

 新井さんは「女武者がなぎなたを振り回す華やかな演目。ぜひ見てほしい」と熱く語る。実行委員の慶応大2年生、疋田悠真(ゆま)さん(20)は「なぎなたの上下の動きに、巴の心情が出るところも見どころです」と話す。勇ましい女武者が「今はこれまでなり」と、義仲への恋慕の情を募らせる名場面だ。シテを務める圭介さんは「前半は静かな女性らしい姿で、後半は動きが激しい。新年だから、雪が降る冬の静かなイメージとも重なるといい」と解説する。

LINEの同時解説も

上演前に見どころを解説する新井さん(右)ら(18年1月の若者能で)
上演前に見どころを解説する新井さん(右)ら(18年1月の若者能で)

 公演前の「おはなし・体験コーナー」では、実行委員らが舞台に上がり、能の楽しみ方やストーリー、注目点などをわかりやすく解説する。

 通常の能楽公演と異なり、若者能では、上演中もスマートフォンを使うことができ、実行委員らがLINEで配信する同時解説を見ながら能を楽しめる。公演を振り返るアフタートークのほか、インスタグラム(インスタ)などで発信してもらうための記念撮影ブースも設ける。「私たちも着物を着て、『一緒に写真を撮ろうよ』と気軽に呼びかけたい」(疋田さん)という。

 新井さんは1年半前の17年5月に家族と薪能(たきぎのう)を見て、日が暮れる中でまったりとした空気にひたったのがきっかけだった。「自分自身、全く能を知らなかった頃を鮮明に覚えているから、知らない人への手助けがうまくできるはず」と語る。疋田さんは「(新しい世界への)はしごをかけてあげるイメージかな」。18年6月に実行委員に加わったばかりの慶応大1年生、伊藤希さん(19)は「若者能の活動は大変だけど勉強になる。その思いを友人に語ると興味を持ってくれます」と話す。

 前回公演(2018年1月、能「羽衣」)は、来場した若者らに「想像以上に楽しかった」「友達が(解説コーナーで)しゃべっていたから身近に思えた」などと好評だった。今回も、実行委員らは、初心者に楽しんでもらうための新たな工夫を考えている。

能の魅力はいっぱい

 実行委員の大学生たちにとって、能の魅力はどこにあるのだろうか。新井さんは「私たちの想像力に任されているから自由に解釈できる。お能は魅力がいっぱい。能楽堂の木の香りが好き、地謡の声や囃子(はやし)方の生演奏を聞きたい、装束が楽しみ、ただお能の雰囲気につかってのんびりしたい、などなんでもいい」と力を込める。疋田さんは「700年も続いてきたのはすごいこと。形を守ろうとしてきた人たちの姿を思い浮かべて見てしまう」と語り、伊藤さんも「能に触れて古典をもっと学びたいと思った」と話す。

 19年の正月になれば、2020年の東京オリンピック・パラリンピックがいよいよ近づいてくる。日本文化の精髄とされる能楽は海外で人気が高いが、日本では全く知らない人も少なくない。実行委員らは「五輪イヤーの1年前にお能を見ておけば、日本のことを知っているという誇りや自信にもつながる。海外の人との交流のきっかけになるかもしれない」とアピールしている。

 若者能は1月5日(土)午後2時開演(午後1時開場)。圭介さんの父である塩津哲生(あきお)さんの舞囃子「八島」や狂言師・三宅近成さんらの狂言「末広かり」の後、能「巴」が演じられる。全席自由席。25歳未満の学生・小児は1000円、一般前売り4000円(当日4500円)。詳細・チケット予約はホームページで。

56012 0 トピックス 2018/12/26 18:00:00 2018/12/26 18:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181226-OYT8I50053-T.jpg?type=thumbnail

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