[目撃全人代]<10>李克強首相の「よく計画された会見」

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15日、北京の人民大会堂で、記者会見する李克強首相(AFP時事)
15日、北京の人民大会堂で、記者会見する李克強首相(AFP時事)

 「整然とした」というのが正直な印象だった。

 15日、全国人民代表大会(全人代=国会)の閉幕を受けて北京の人民大会堂で開かれた李克強リークォーチャン首相の内外記者会見。記者17人による質問は最後まで、司会者が外国・台湾・香港記者と国内記者を交互に指名する順番が見事に保たれた。

 李氏の受け答えも堂に入っていた。米トランプ政権が中国批判の一つとしている中国企業による外国企業の情報窃取について問われると、「中国が物事を行うやり方ではない」とやんわりかわした。庶民の不満の対象となっている医療問題に対しては「問題は確かに存在する」と認め、「できることはすべてやる」と、政府が努力することを約束した。

 しかし、約2時間半に及んだ会見での発言のほとんどは、10日前に自ら朗読した政府活動報告の内容と、これまでの共産党・政府の立場を外れることはなく、「ニュース」はなかった。

 国内、外国を問わず、記者が中国首相に直接取材できる機会は、この場以外にほとんどない。中国メディアによると、全人代閉幕日の首相記者会見は1993年の李鵬リーポン首相(当時)から制度化された。中国の指導者が国賓を接待する豪華な装飾の「金色の間」で行われてきた会見は、全人代を締めくくるハイライトとなった。

 2012年の記者会見での温家宝ウェンジアバオ首相(当時)の発言は、今でも語りぐさだ。当時は、有力指導者の一人とされた薄煕来ボーシーライ元重慶市党委員会書記の側近による米総領事館駆け込み事件が起きたばかりだった。党内で改革派とされてきた温氏が、薄氏の政治手法を踏まえ「文化大革命の誤りと封建的な影響は、完全にはぬぐえていない」と批判したのだ。

 中国の指導者が外国記者もいる前で、指導部の一員を批判するのは異例だ。この全人代は、汚職などで失脚した薄氏が重慶市代表団を率いて内外メディアの前に現れた最後の舞台でもあった。

 だが、今年の全人代では、李氏の安全運転ぶりが象徴するように、代表らは人民大会堂にひしめく記者のぶらさがり取材を徹底して避けた。当然、メディアが飛びつくようなこぼれ話もほとんどなかった。

 共産党関係者によると、党員や公務員の私的な会合で誰かが党や政府を批判すると、「妄議中央(党中央をでたらめに論議している)」と互いにたしなめるのだという。約3000人の代表らも、厳しい言論統制の風潮を忖度そんたくしたのか、最後まで「無菌状態」が貫徹された。

 そんなことを考えながら、人民大会堂を出ると、中国紙の女性記者が、こちらを外国記者と知って駆け寄ってきた。「首相記者会見の感想は」との質問に、「よく計画された会見でしたね」と反射的に答えてしまった。気の毒だが、このコメントは彼女の紙面では使えないだろう。(北京 竹内誠一郎)

491134 1 国際 2019/03/15 19:12:00 2019/03/15 20:32:52 2019/03/15 20:32:52 Chinese Premier Li Keqiang speaks at a press conference after the closing session of the National People?s Congress in Beijing?s Great Hall of the People on March 15, 2019. (Photo by Fred DUFOUR / AFP) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190315-OYT1I50059-T.jpg?type=thumbnail

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