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【香港=東慶一郎】香港の複数のメディアによると、中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会は30日午前、香港での反体制活動などを取り締まる国家安全法制度の実施法を全会一致で可決し、法律が成立した。中国政府が香港政府の頭越しに法を執行することを可能とする内容で、香港に高度な自治を認めてきた「一国二制度」は形骸化が避けられない。
実施法となるのは「国家安全維持法」で、香港の英国からの返還23年となる7月1日にも施行されるとみられる。
国家安全維持法は、〈1〉国家の分裂〈2〉中央政府の転覆〈3〉テロ活動〈4〉外国勢力などと結託して国家の安全を脅かす――の4種の行為を禁じ、刑罰の対象とする。中国の治安当局が香港に出先機関「国家安全維持公署」を設置し、事案の内容次第では法執行などの管轄権を行使する。
関連案件を取り扱う裁判官は香港政府トップの行政長官が指名することも定め、「司法の独立」が脅かされるとの懸念が出ている。
施行後は、反政府抗議活動を主導してきた民主派のリーダーが摘発される可能性がある。香港の若手民主活動家の黄之鋒氏(23)は法律の可決を受けて、ツイッターに「これまでの香港が終わり、恐怖による支配の時代が始まった。それでも香港の自由と正義のために戦い続ける」と書き込んだ。
中国は英国からの返還にあたり、香港の現行制度は「50年間は変わらない」と公約しており、米国など国際社会から批判が高まることは必至だ。
全人代常務委は、成立した法律を香港で適用するため、香港の憲法に相当する香港基本法の付属文書に盛り込む決定を行う。
香港では昨年6月以降、中国への容疑者引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案への抗議運動が大規模化した。一部のデモ参加者が破壊活動を行うなど社会が混乱し、香港政府は改正案の撤回に追い込まれた。
これを受け、
中国政府は、実施法案について、香港の各界代表から意見聴取を行ったとしているが、審議期間中も条文の詳細は公表されておらず、透明性を欠くと指摘されていた。