国連好感度 日本で急落…創設75年

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 国連は24日、創設75年の節目を迎える。第2次世界大戦の教訓から生まれ、国際協調と世界平和の推進役として国際社会の支持を集めてきたが、日本での好感度は今年、過去最低を記録した。国連中心主義を掲げてきた日本がなぜ「国連離れ」に傾いたのか、背景を探った。(国際部 川上大介、武田佐和子)

コロナ対応後手 改革停滞

■18ポイント減29%

新型コロナウイルスの感染拡大のため、国連総会でビデオ映像を通じて演説する菅首相(9月25日、米ニューヨークで)=ロイター
新型コロナウイルスの感染拡大のため、国連総会でビデオ映像を通じて演説する菅首相(9月25日、米ニューヨークで)=ロイター

 米民間調査機関ピュー・リサーチ・センターは今夏、日米英など14か国を対象に、国連に関する世論調査を実施した。このうち日本人からみた国連の印象で、「好ましい」と回答した割合は昨年調査から18ポイント減の29%に落ち込んだ。かつては60%を超えることもあったが、今回は他の13か国(59~80%)と比べても、飛び抜けて低かった。

 好感度が急落した要因は二つ考えられる。

 一つ目は、新型コロナウイルスを巡る国連の対応が後手に回ったとの認識だ。とくに国連の専門機関である世界保健機関(WHO)は、中国での感染が拡大していた時期に「パンデミック(感染症の大流行)ではない」との見解を繰り返しており、その後の世界的な流行を招いたとの指摘もある。

 二つ目は、国連改革の遅れだ。51か国で発足した国連加盟国は193か国に増えたが、総会と並ぶ最高機関である安全保障理事会(安保理)の常任理事国(米露中英仏)の枠組みは、半世紀以上にわたって変更されていない。拒否権を持つ常任理事国の対立で、機能停止に陥ることも多い。

■常任理事国

 第2次大戦の敗戦国だった日本は、1956年に国連加盟を果たすと、「国連中心」を外交3原則の一つに掲げた。安保理の非常任理事国を、加盟国では最多の11回務め、国連通常予算の分担金の1割前後(2020年は8・6%)を負担し続けるなど、財政面でも貢献した。

 実績を積み上げた日本は、常任理事国入りにも意欲を示してきた。だが、中国や韓国の反対もあり、見通しは立っていない。

■中国の存在感

 一方で近年、存在感を急速に高めているのが中国だ。国連の15専門機関のうち、四つで中国出身者がトップを占めるが、日本はゼロだ。国連の分担金でも19年に日本を上回り、米国に次いで2番目となった。

 国連事務次長などを歴任した赤阪清隆氏は、「中国の影響力が増す中、日本が思い描くような国連改革が進まず、日本人幹部も少ない。安保理の機能停止も目立ち、募った不満が、低評価に結びついたのだろう」と指摘する。

 日本は平和維持活動などの分野で高い評価を受けてきた。米国が自国第一を前面に打ち出し、国連への関与を弱める中、各国の日本に対する期待は大きい。日本が国際協調のイニシアチブを取り、率先して国連への関与を強めることが、いっそう求められる。

多国間協力 主導期待…事務次長・軍縮担当上級代表 中満泉氏寄稿

 国連は創設75周年に際し、マルチ(多国間)協力の重要性などについて、世界の100万人以上を対象に意識調査を行った。87%が「現代の課題に対応するためには国際協力が欠かせない」と回答し、74%が「これからも国連は欠かせない」と評価した。皆が自国第一主義に陥っているわけではないし、先の国連総会でも大多数の加盟国が国際協調が必要だと強調した。

 一方、米ピュー・リサーチ・センターの調査では、先進14か国のうち日本の国連への評価が突出して低く、国際協調への支持も最下位だった。日本は長い間、国連や国際協力に非常に好意的だった。国連は日本の世論の急激な変化を憂慮し、真摯しんしに受け止め、信頼回復に努めたい。

 国連憲章を中核とした、法の支配に基づく戦後の国際秩序の中で、国連は平和維持・構築、人道・開発支援、環境や人権、保健や貿易、労働問題など多岐にわたる分野で活動する複雑な国際システムとなった。いずれの場でも日本の存在は常に重要だし、国連への積極的な関与は日本の国益にも欠かせないことだ。

 国連システムが効果的に機能するためには、マルチ外交に積極的な加盟国の存在と、より機能的で効率的な事務局や国連機関が必要だ。安全保障理事会を含め、加盟国主導の国連改革の努力も強化されるべきだ。

 国際経験と意欲、能力、創造性を持つ有為の日本人が国連システムに応募するよう努力を強化したい。国連は日本に特化した採用セミナーなどを重ね、邦人職員は増加傾向にあるが、幹部として組織をリードできる人材の育成が課題だ。

 菅首相は国連総会の一般討論演説で、新型コロナウイルスという危機を、協力を深める契機とするよう、連帯を呼びかけた。大国間の緊張と対立が深まる中、心強いメッセージだった。

 日本は国連加盟以来、一貫して平和大国の道を歩んできた。コロナ禍をきっかけに人類が歴史の分岐点にある今こそ、分断を乗り越え、連帯して復興を成し遂げるためのマルチ協力へのリーダーシップを発揮してほしい。

無断転載・複製を禁じます
1573589 0 国際 2020/10/24 05:00:00 2020/10/24 18:38:03 2020/10/24 18:38:03 Suga Yoshihide, Prime Minister of Japan speaks virtually during the 75th annual U.N. General Assembly, which is being held mostly virtually due to the coronavirus disease (COVID-19) pandemic in the Manhattan borough of New York City, New York, U.S., September 25, 2020.  United Nations/Handout via REUTERS THIS IMAGE HAS BEEN SUPPLIED BY A THIRD PARTY https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201023-OYT1I50076-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ