元慰安婦の賠償訴訟、日本政府に支払い命令…韓国地裁「主権免除は適用できない」

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 【ソウル=建石剛】韓国人元慰安婦12人が日本政府を相手取り、1人あたり1億ウォン(約950万円)の損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は8日、請求通り日本政府に全額の支払いを命じる判決を言い渡した。元慰安婦が日本政府を相手取った韓国内の訴訟で、判決が言い渡されるのは初めて。

 日韓の戦後補償について1965年の日韓請求権・経済協力協定で「完全かつ最終的に解決済み」とする日本の立場と相反する判断で、「元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)」訴訟問題などで「戦後最悪」と言われる日韓関係が、さらなる危機的状況に陥るのは必至だ。

 日本政府は、国家の行為や財産は一般に他国の裁判所で裁かれないという国際法上の「主権免除」の原則から裁判に応じておらず、訴訟では、韓国の裁判所が主権免除を認めるかどうかが最大の焦点だった。

 判決は、元慰安婦問題について「日本政府による組織的、反人道的行為で、主権免除は適用できない」と指摘。日本政府が韓国の裁判権に服するという異例の判断を示した上で、「原告は想像しがたい精神的、肉体的苦痛に苦しめられた」として全額の賠償を命じた。

 訴訟は、2013年に元慰安婦らが調停を申し立てたことがきっかけだった。日本政府は日韓請求権・経済協力協定を理由に調停に応じず、16年に訴訟に移行した。原告のうち7人は既に死亡している。13日には元慰安婦ら20人が日本政府を相手取った別の訴訟の判決が予定されており、賠償を認める判決が相次ぐ可能性がある。

 元慰安婦問題を巡っては、日本政府は15年、保守の朴槿恵パククネ政権と「最終的かつ不可逆的な解決」で合意した。だが、17年に発足した左派の文在寅ムンジェイン政権が「被害者中心主義」を掲げ、「当事者の意思を反映していない」として、合意を事実上破棄した。

 韓国で起こされた元徴用工訴訟では、被告の日本企業の敗訴が確定。原告は韓国内にある日本企業の資産を差し押さえ、売却の手続きを進める。文政権は「司法を尊重する」として積極的に対応せず、日韓関係悪化の要因となっている。

 外務省は8日午前、今回のソウル中央地裁の判決を受け、南官杓ナムグァンピョ駐日大使を本省に呼び、「判決は断じて受け入れられない」などと抗議した。

 日本政府はこれまでも韓国政府に対し、主権免除の原則は国際法上確立しており、原告の請求は却下されなければならないとの考えを伝えてきた。

 しかし、日本側の主権免除を認めない判決が出たことで、韓国の個人が日本政府を直接相手取って損害賠償などを求める訴訟が続出する恐れがあるとみて警戒を強めている。外務省幹部は「常識、国際法、全てにおいてあり得ない判決だ」と語った。

 元徴用工訴訟問題に続き、韓国の司法が元慰安婦による訴訟で再び反日感情に寄せた判断を出し、日韓関係を一段と窮地に追い込むことになった。ソウル中央地裁の判決は、主権国家が他国の裁判権に服さないという「主権免除」の適用を認めなかった。

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