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内戦前夜とは言えないが…「ジョージアの異変」に見えるアメリカの希望

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 米国がひとまず戻ってきた――。バイデン新大統領の就任式の映像からこんな印象を受けた。民主主義の理想を掲げて国際舞台に立つ米国像の復活である。
 無論、事態は単純ではない。内政に限ってもトランプ前大統領の4年間で社会の分断は先鋭化し、きょじつを隠し、正義が揺らいだ。年初のトランプ支持者らの連邦議事堂乱入事件は危機の深刻さを示した。
 バイデン氏は就任演説で白人至上主義の台頭を脅威に挙げた。19世紀の南北戦争にも触れ、米国の歩みを理想と醜悪な現実の不断の戦いと形容した。
 米国の著名な歴史家エリック・フォーナー氏に危機の背景を尋ねた。「現況は内戦前夜とは言えないが」と指摘し、語り始めた。(編集委員 鶴原徹也)

暴挙は南北戦争直後も…共通するのは「白人至上主義」

1月6日、米ワシントンで、連邦議会議事堂に集結したトランプ大統領の支持者ら=田島大志撮影
1月6日、米ワシントンで、連邦議会議事堂に集結したトランプ大統領の支持者ら=田島大志撮影

 1月6日の乱入事件はトランプ氏が扇動し、支持者らが大統領選の結果は覆せるとの迷妄に陥って起こした蛮行です。多くの米メディアは前代未聞の暴挙と伝えましたが、正しくはない。民主選挙で誕生した地方政府を暴力で打倒した事件は特に南北戦争(1861~65年)直後の再建期(65~77年)を経て南部で多発しました。

 今回、暴徒は白人至上主義を唱え、一部は南北戦争時の南軍旗を掲げた。分断の根は深いのです。

 まず今日の視点に立って米国の歴史を話しましょう。

建国以来、白人が民主主義の実践者

 米国は1776年の建国以来、白人が民主主義の実践者でした。初代大統領ワシントンは白人移民に限って公民権を与える帰化法を制定。奴隷制は体制に組み込まれていました。ほぼ全ての大統領が奴隷を所有し、独立宣言起草者の第3代大統領ジェファーソンには150人の奴隷がいた。立法も司法も奴隷所有者が支配していた。

 南部は奴隷制が経済の土台です。主要産業は白人経営の大農場の綿花生産。黒人奴隷が労働力です。南北戦争前夜、黒人奴隷は史上最多の400万人に増えていた。

 北部は産業革命が進み、資本主義が発展します。奴隷に依存する経済ではありません。北部を基盤とする共和党は道徳的理由から奴隷制に反対し、党内の急進派は廃止を主張します。

 共和党のリンカーンが1860年の大統領選に勝つと、全米34州(総人口約3100万)のうち南部11州が反発して合衆国から離脱し、南北戦争が勃発するのです。

 リンカーンは奴隷制拡大には反対でしたが廃止論者ではなかった。戦争の大義は合衆国の維持と民主主義の擁護でした。奴隷制は南部の力の源であり、そこを突くのは戦術上の必然でした。それが63年の奴隷解放宣言です。解放奴隷の一部、20万人を北軍に補充兵として加えます。その後は廃止論にくみし、奴隷制を永久に禁止する憲法修正を議会に指示しました。

 内戦は65年、北軍の勝利で終わります。その直後にリンカーンは暗殺されてしまう。奴隷制禁止条項の発効は死後でした。

「米大統領は就任して時間がたつと小ぶりになるものです。トランプ氏でさえそうでした。リンカーンは就任後、偉大さを増していった。希少な大統領でした」(写真は本人提供)
「米大統領は就任して時間がたつと小ぶりになるものです。トランプ氏でさえそうでした。リンカーンは就任後、偉大さを増していった。希少な大統領でした」(写真は本人提供)

参政権を黒人男性に拡大…白人至上主義者のテロ始まる

 南北戦争の戦死者は60万人を超えました。主戦場となった南部の復興を含む再建期を迎えます。

 奴隷身分から解放した黒人に市民権を与えるのか、平等を保障するのか、参政権を認めるのか――。現代の黒人・移民問題に連なる大問題でした。

 共和党急進派が連邦議会で力を増し、米国生まれの人間は人種・宗教・出自にかかわらず市民として法の下の平等を保障し、白人男性に限っていた参政権を黒人男性に拡大することを修正条項として憲法に盛り込んでゆく。

 女性参政権は20世紀の第1次大戦後にようやく実現します。

 とはいえ再建期は米国が「白人の民主主義」から「万人の民主主義」に向けて踏み出した画期的転換期でした。私は「第2の建国」と呼ぶ。民主主義の実験でした。

 南部の旧奴隷諸州で初めて黒人が投票し、議会や裁判所など公職に選出されます。1870年代には白人と共に州政など地方政治を動かすようになる。

 それを不満とする白人至上主義者らはテロ組織を作り、黒人の要人や黒人に協力する白人の殺人を重ねる。虐殺や私刑が横行し、犠牲者は3000人近くに及ぶ。

 連邦指導者らは人種差別撤廃という理想は抱いていたが、それを執行する行政は未整備でした。白人至上主義者らの執拗しつようなテロが続くなか、南部諸州の政治が揺らぎ、再建期の熱は次第に冷めてゆく。

 反動の時代の到来です。南部では識字力不足や税金未納などを理由に黒人は体系的に参政権を奪われます。奴隷解放に経済措置が伴わなかったことで黒人は再び白人に酷使される状態に落ちる。人種分離政策が導入されます。連邦政府も最高裁も反動を容認します。

 人種差別撤廃をうたった公民権法が成立するのは南北戦争から1世紀後の1964年のことです。公民権運動の盛時の20世紀中頃は「第2の再建期」と呼ばれます。

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1825472 0 国際 2021/02/07 09:05:00 2021/02/07 09:05:00 2021/02/07 09:05:00 エリック・フォーナー氏 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210201-OYT1I50052-T.jpg?type=thumbnail

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