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インドの貧困街で「ワクチン無料」、4日後に嘔吐や黄だん…「試験なら接種しなかった」

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 インドで、新型コロナウイルスのワクチン開発に関する臨床試験の参加者確保が難しくなっている。ワクチンの接種が始まり、「試験に協力するより接種したい」という人が増えているためだ。十分な説明をせずに臨床試験を行うケースも出た。今後のワクチンの開発・製造が遅れ、国内外の供給に影響する可能性もある。(インド中部ボパール 小峰翔)

打たれた薬 不明な例も

 ボパールの貧困街に暮らす労働者のジテンドル・ナルバリヤさん(37)は昨年12月、地元の病院で注射を受けた。病院の車が「ワクチンを無料で受けられます。750ルピー(約1100円)がもらえます。逃せば実費です」と拡声機で宣伝していたのを聞いたからだ。

 2日後、起き上がれなくなり、4日後に嘔吐おうとが始まった。目に黄だんが出て、1月に10日間入院した。仕事も失った。その後、注射は純国産ワクチン「コバクシン」の第3段階の臨床試験だったことがわかった。打たれたのがワクチンか、試験用の偽薬かは不明だ。ナルバリヤさんは「試験だとわかっていれば、接種しなかった」と憤った。

意図的か

 病院関係者は読売新聞の取材に「(臨床試験参加者への)説明は行った」と語った。しかし、参加者約20人への取材の結果、病院側がワクチン接種であるかのように振る舞っていたことが判明した。会場には「試験」と英語で書かれた横断幕があったが、識字率10%程度の貧困街で読める人は少ない。

 医師のマノジ・チワリさん(40)は「意図的に言わなかったのではないか」と指摘する。臨床試験への参加を希望する人が減ったことが背景にあるとみられる。

 インドの累計感染者数は米国、ブラジルに次ぐ世界3位の約1170万人で、死者が16万人を超える中、1月中旬にワクチン接種が始まった。8月までに3億人の接種を目指している。

 臨床試験の参加者集めに苦労したニューデリーの医師は「国民の間で接種の時期を待つ傾向が強まり、臨床試験に協力する機運がしぼんだ」との見方を示す。

供給遅れも

 インドでは純国産ワクチンに加え、英アストラゼネカのワクチンがライセンス生産されている。インド政府は年内に計36億回分の製造を見込んでおり、既に70超の国や国際機関にワクチンを提供している。

 今月中旬には日米豪印4か国の首脳が、インドでさらに製造を10億回分増やすことで合意した。中国に対抗して製造を加速させる構えだ。

 今後は米国やロシアのワクチン製造に関わる臨床試験も予定される。だが、十分な人数の参加者が確保できなければ、開発・製造に遅れが生じるのは避けられない。世界のワクチン供給に影響が及ぶ恐れがある。

「世界の薬局」

 インドは、世界のワクチンの6割を製造し、世界一のジェネリック医薬品(後発薬)供給を誇る「世界の薬局」だ。ワクチン製造の世界最大手「セラム・インスティチュート・オブ・インディア」など十数社が世界保健機関(WHO)の基準を満たす能力を備える。

 ワクチン製造がインドで盛んになったのは、天然痘が流行していた1970年代に政府が開発に力を入れたためだ。政府は各種感染症の予防接種も全国で展開した。その結果、企業が増加し、製造ラインの確立につながった。医薬品を主要産業に育てるため、海外より地元の企業に有利な特許法も施行した。臨床試験を巡っては、2011~14年に開発したロタウイルスワクチンの試験参加者が6800人で、米国で行った同種の試験参加者の1割に満たず、少なすぎると問題視されたことがある。

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