メモ入力
-最大400文字まで
完了しました
【ジュネーブ=杉野謙太郎】新型コロナウイルスワクチンの特許権保護を巡り、一時停止を求める途上国と先進国の溝は深い。先進国の中でも、輸出を続ける欧州連合(EU)諸国と輸出を規制する米国の間の不協和音も高まる。ワクチンを巡る対立は三つどもえの構図となっている。


一時停止の提案は昨年10月、インドと南アフリカが、世界貿易機関(WTO)の「TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)」理事会で行った。ワクチンや治療薬など感染症の大流行対応に必要な知的財産の保護義務を、世界の人口の大半がワクチン接種を受けるまで一時停止するという内容だ。
WTOでの合意は加盟国による全会一致が原則だ。提案には米国やEU、英国などが反対し、半年以上にわたって議論は停滞していた。インドと南アは今月中にも、一時停止の適用期間など当初案を見直した新たな文書を提案する予定だ。
国際NGO「国境なき医師団」のまとめによると、一時停止はアフリカ、アジアを中心に約100か国が支持する。ワクチン格差解消の手立てになるとして世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長らも実現を求めている。米仏も賛成に回った。
一方、米国の賛意表明後、ドイツが反対を明確にした。EU高官も「特許権がワクチン生産の障害となっている具体的な事例は一つもない」などと述べ、一時停止の要求に疑問を呈している。
ワクチン特許権は…企業秘密の「レシピ」
【ジュネーブ=杉野謙太郎】新型コロナウイルスワクチン製造の特許は、料理で言えばレシピに相当する。特許権保護の一時停止は、製薬大手秘伝のレシピの開放を意味する。製薬業界側の主張は、レシピだけで料理ができないのと同様、特許だけでワクチンを作れないというものだ。