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三越や東急百貨店など、日本の老舗デパートの海外店舗が、相次いで閉店に追い込まれている。ショッピングモールや量販店との競合などで客足が減っていたところに、新型コロナウイルスの流行が追い打ちをかけた。世界に残る29店舗も、存続の危機が続く。(国際部 佐藤友紀、ローマ支局 笹子美奈子)
量販店と競合…コロナ 観光客減

欧州で唯一の日系百貨店だった「ローマ三越」は7月10日、46年の歴史に幕を下ろした。新型コロナの影響で休業が続き、今後も、重要な客層である観光客の回復が見込めないため、営業終了を決めた。
1975年、ローマ中心部に開店し、日本人だけでなくアジアからの観光客に人気だった。96年には約43億円の売り上げがあったが、昨年は約3億円に落ち込んだ。
37年間ローマに住む翻訳家上野真弓さん(62)は、「伊ブランドだけでなくオリジナル商品もあり、現地の日本人もプレゼントなどを買うのに重宝していた」と閉店を惜しむ。
アジアでは東急百貨店が今年1月末、最後の海外拠点だったバンコク店を閉鎖した。「近隣の商業施設の増加や、コロナ禍の影響が大きかった」(同社)という。入れ替わりに日系量販店「ドンドンドンキ」が入る予定といい、日系同士の激しい競争がうかがわれる。
伊勢丹も昨年、3月にシンガポールの一部店舗、8月にバンコク店を閉めた。
海外の日系百貨店の動向を調査している関西学院大商学部の川端基夫教授(国際流通論)によると、日系百貨店は1906年に三越がソウルに店舗を開業したのを手始めに、ピークの1990年代前半には13か国・地域に計81店が進出した。その後、アジア通貨危機やバブル崩壊をきっかけに撤退が始まり、今月30日現在では計29店にまで減少している。
客足が遠のいた背景には、ツアー中心だった海外旅行が個人単位に移って団体客が減ったことや、現地小売店の躍進、大手ブランドの百貨店離れなどがある。川端教授は「日系百貨店は観光客や駐在員のインフラとして貢献したが近年は優位性が低下した。新型コロナ流行を機に、さらなる縮小もありえる」と話している。