[家族のかたち]<6>子だくさん 幸福の象徴…ニジェール

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「博士課程 ほぼ全員がママ」

3人の子供を育てながら博士課程に通うビンタ・モディ・マイギゾさん
3人の子供を育てながら博士課程に通うビンタ・モディ・マイギゾさん

 西アフリカ・ニジェール随一のアブドゥ・ムムニ大学。国じゅうの秀才が集まる首都ニアメーのキャンパスで、女子学生の出産はごくありふれた話題だ。出産後も学業を続けるのは当然で、赤ん坊をおぶって歩く姿も目立つ。

 「学部生ではさすがに多数派ではないが、修士課程は6割、博士課程の女性はほぼ全員がママ」。そう語るビンタ・モディ・マイギゾさん(31)も環境科学の博士を目指しながら、0~7歳の3人を育てる母親だ。

 23歳で結婚し、大学に来る日は自宅近くで暮らす義母(65)に子供を預ける。大家族が当たり前のニジェールでは、親族が皆で育児を担うのが一般的だ。大学内には、家族が遠隔地にいるなどの事情で子供を託す先が見つからない学生のために、保育所も設置されている。

 ニジェールは、女性1人が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率が6・8(2019年)で、世界で最も人口増加が著しい。働く女性が「キャリアか、出産か」で迷う声はほとんど聞かれない。子供を幸福と富の象徴とみなす、イスラム教の伝統的な価値観が社会に根付いているからだ。

  敬虔けいけん なイスラム教徒でもあるマイギゾさんの夢は、干ばつや洪水などに苦しむ人々の暮らし向上に、科学の力で貢献することだ。「母は孫が23人もいて、毎日が幸せそうだ。私も少なくとも、あと3人は子供が欲しい」。子を産み、次世代に良い社会を残すことが母の責任だと信じている。

国家のリスク

 ニジェールは1960年にフランスから独立した。当時320万人だった人口は、昨年までに2400万人を突破した。政府の推計では、今後も18年ごとに倍増し、今世紀中には1億人に達する見込みだ。

 一方で、国連が各国の保健や教育、所得のレベルを比べた「人間開発指数」では世界最下位となっている。国土の大半がサハラ砂漠に覆われており、爆発的な人口増は、食糧不足や治安の悪化など、国家の安定を揺るがすリスクにもなりうる。

 まだ少数派だが、国の将来を懸念して、出産をためらう女性も出てきた。

 ニアメーのラジオ局で記者兼アナウンサーとして働くラビ・マイカノさん(32)は、子供は「4歳の息子1人で十分」だと語る。天候不順の度に農村で大量の避難民が生まれ、貧困で満足な教育を受けられない子供も多い。子供世代の将来を考えると、「無計画に産むのは無責任だ」と話す。

「発展の潜在力」

ニアメー北郊で暮らすサファラウ・ヤハヤさん(左端)とその家族ら
ニアメー北郊で暮らすサファラウ・ヤハヤさん(左端)とその家族ら

 とはいえ、ニアメーには楽観的な空気が漂う。住宅街ではあちこちの軒先に多くの椅子が並べられ、結婚祝いが開かれていた。地元メディアの男性記者は「毎週末、必ず誰かの結婚式か新生児の命名式がある」と苦笑しながら教えてくれた。

 ニジェール政府のイディ・イリアス・マイナサラ保健相は、国の人口増は「世界で前例のないレベル」だと認めつつも、「人口増と国民の若さは、発展の潜在力にもなる」と力説した。

 人口増そのものを問題とは見ておらず、今後も中国が実施したような強権的な人口抑制政策は採用する予定はない。全国各地で残る女子の児童婚の慣習を断ち、教育の普及などで質の高い労働力を確保し、人口増を国の経済成長につなげるのが目標だという。

 首都北郊で親族26人で暮らすサファラウ・ヤハヤさん(48)は、4歳の末娘のレイハムちゃんがかわいくて仕方がない。干ばつで農業が出来なくなり、ニアメーに出て大工などをしたが、今は無職で生活は苦しい。

 それでも、妻のブーバカル・アリシナさん(38)はレイハムちゃんを膝にのせ、「あと1人くらい子供が欲しい」と笑った。次の出産で7人目となる。理由は明快だ。「色んな考えがあると思うけど、私たちは子供が多いことが幸せだと考えているから」(ニアメー 深沢亮爾、写真も)

世界最高の出生率水準

 ニジェールが位置するサハラ砂漠南縁部のサヘル地域は人口の増加がすさまじい。域内国の出生率はマリ5.8、チャド5.6、ブルキナファソ5.1と、いずれも世界最高水準だ。イスラム教徒が多く、子だくさんを望む国民性は共通している。

 サヘル地域は気候変動が影響したとみられる干ばつや洪水などで農業が振るわず、イスラム過激派の動きも活発だ。地域の人口増への対応は世界情勢にも影響しうる。ニジェールはアフリカから欧州へと向かう移民の密入国ルートにあたる。

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