[あすへの考]【「キラーロボット」の脅威】AI兵器 野放しにできない…拓殖大教授 佐藤丙午氏 55

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 ロボットが勝手に、自らの意図をもって人間を殺傷する――。高度化が著しいAI(人工知能)兵器は、一歩間違えれば、こんな映画のような世界に通じる。

 国際社会は規制の必要性ではおおむね一致するが、国連を舞台にした交渉はなかなか進展しない。優秀な技術を有する米中露など各国には、AI兵器が自国の軍事的優位を保つ決め手となるとの認識があり、規制に及び腰だからだ。そんな中、より強力な新型兵器の開発の可能性さえ取り沙汰される。

 冷戦時代・冷戦後に構築された軍縮の枠組みが限界を迎える中、世界はAI兵器を規制できるのか。国連での交渉を2014年の開始当初からモニターし続けてきた佐藤丙午・拓殖大教授に聞いた。(調査研究本部 大内佐紀)

疲労や逡巡と無縁。21世紀の戦争の「ゲーム・チェンジャー」

 AI兵器の前段階である無人兵器は21世紀に入って拡散が著しく、今や約130か国が何らかの無人機能を持つ兵器を保有します。イスラム過激派などの組織も民生用ドローンの軍事利用を進めています。

「軍縮の枠組みは限界に来ている」。背後の建物は拓殖大の国際教育会館。1933年に、清朝末期の「義和団の乱」の賠償金で造られた(東京都文京区で)=鈴木竜三撮影
「軍縮の枠組みは限界に来ている」。背後の建物は拓殖大の国際教育会館。1933年に、清朝末期の「義和団の乱」の賠償金で造られた(東京都文京区で)=鈴木竜三撮影

 無人兵器といえば、偵察のほか爆発物を積んで標的に陸海空から突入するドローンが思い浮かぶのではないでしょうか。実際には、潜水艦や戦車など、あらゆる兵器の無人化が進み、性能も格段に上がっています。

 ドローン技術の開発と輸出で最近、目立つのはトルコです。旧ソ連のアゼルバイジャンとアルメニアは長らく領土紛争を繰り返していますが、2020年9月にアゼルバイジャンが決定的勝利を収めた。この勝因はトルコ製の偵察型と攻撃型の無人機とされています。アゼルバイジャンはトルコから買った無人兵器を使ってアルメニアの防空システムや戦車を破壊していった。

 無人兵器がAIによって管制されるようになれば、いわゆるAI兵器になります。AIは短時間で無数の情報を処理し、人間が事前に設定したアルゴリズムに従って動きます。そこでは、人間が経験するような疲労や、 逡巡しゅんじゅん といった感情とも無縁です。無人兵器システムより 精緻せいち かつ複雑で、自軍のコストを小さくする攻撃を行うことが可能になります。

 その結果、指導者が武力攻撃を決断するハードルが下がりかねない。火薬と核が戦争の形態を根本から変えたように、AI兵器が21世紀の戦争の「ゲーム・チェンジャー」と指摘されるゆえんです。

 AI兵器には、「半自律型」と「完全自律型」があります。人間の関与が全くないまま、AIが標的を選び、攻撃する完全自律型については、「あまりに危険だ。認めてはならない」という国際社会のコンセンサスがあり、保有を公言する国はありません。

 人間が一定程度は関与する半自律型については米中露、イスラエル、韓国、英国など、かなりの国が保有するとみられています。完全自律型と半自律型の倫理上のギャップは非常に大きいが、技術的な壁はそれほど高くないとも言われます。しかも、半自律型を所有する国は、「AI兵器の技術開発を進める」という方針を大なり小なり示している。

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