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【ワシントン=田島大志、ニューヨーク=寺口亮一】ロシアの軍事侵攻が続くウクライナ情勢を巡り、米国防総省高官は6日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)と北部チェルニヒウ周辺に集結していた露軍部隊が完全に撤退したとの分析を記者団に明らかにした。部隊は東部地域に再投入される可能性が高いとみており、ウクライナ政府は、東部の住民に即時避難を呼びかけた。

高官によると、撤退した部隊は隣国ベラルーシに入ったほか、一部はロシアに戻っているという。高官は、東部に再投入するための補給や整備には「それほど長い時間はかからない」との見通しを示した。再投入されれば東部で攻撃がさらに激化する可能性があり、英BBCによると、ウクライナのイリナ・ベレシュチュク副首相は「(今後)戦火に見舞われ、死の脅威に直面する」として、住民に警戒と速やかな退避を訴えた。
高官はまた、露軍が撤退した地域では、地雷が敷設された可能性があるといい、除去に一定の時間がかかるとの見方を示した。

露軍が一時占拠したキーウ近郊ブチャでは民間人とみられる多数の遺体が見つかり、キーウ近郊ボロジャンカなど他の地域でも民間人の被害が次々と明らかになっている。
タス通信によると、ブチャでの民間人殺害について、プーチン露大統領は6日、「ウクライナ政府による粗野で冷淡な挑発行為」と述べ、露軍の関与を否定した。ハンガリーのビクトル・オルバン首相との電話会談で語ったもので、ブチャの民間人殺害についてプーチン氏の発言が伝えられるのは初めてとみられる。

一方、露軍による包囲と激しい攻撃が続く南東部マリウポリの市議会は6日、露軍が「移動式の火葬施設」を稼働させたとSNSで明らかにした。露軍の侵攻により死亡した地元住民らの遺体を、地元の協力者が集めて焼却しているという。
ブチャでの民間人殺害を受け、露軍の「戦争犯罪」に非難が高まっていることから、市議会は「ロシアの最高指導部が露軍による犯罪の証拠隠滅を命じた」と批判している。
ウクライナ国営通信によると、露軍による包囲開始から1か月以上が経過したマリウポリでは、少なくとも住民5000人以上が死亡したとみられている。依然約10万人が取り残されているとみられ、戦闘がさらに長期化すれば犠牲者が増えるのは必至だ。