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【ニューヨーク=寺口亮一、ワシントン=田島大志】国連人道問題調整事務所(OCHA)と赤十字国際委員会は1日、ロシア軍が包囲するウクライナ南東部マリウポリのアゾフスタリ製鉄所に取り残された民間人の退避が始まったと発表した。製鉄所へ攻撃が再開されたとも報じられており、今後も退避が順調に進むかどうかは不透明な状況だ。

同事務所によると、国連と赤十字の車列が4月30日に製鉄所に到着した。女性や子供、高齢者を南部ザポリージャに退避させる。退避には「紛争当時者の双方が合意した」という。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は1日、民間人約100人が退避したと明らかにしていた。露国防省も製鉄所から80人が親露派武装集団の支配地域に退避したと発表した。この80人は、国連などによる支援とは別途の退避だった可能性がある。
米紙ワシントン・ポストは、子供数十人を含む数百人が依然救助を待っていると報じた。ウクライナ国営通信は1日夜、治安当局の話として、露軍が製鉄所への攻撃を再開したと伝えた。マリウポリ市当局は1日、SNSで、市内の民間人退避が「安全上の理由」で2日に延期されたと発表した。
一方、ウクライナの隣国モルドバの情報機関は1日、複数の政府機関のウェブサイトがサイバー攻撃を受けたと明らかにした。大量のデータを送りつけて機能を停止させる「DDoS攻撃」が1日未明に始まったという。情報機関は「ウクライナを支持する各国を対象にした親露派のハッカー集団による攻撃だ」と指摘した。
侵攻開始前の今年2月中旬、ウクライナの国防省などを標的とした手口も「DDoS攻撃」だった。米政府は露軍情報機関が関与したとの分析を公表していた。
これに関連し、ウクライナ国防省は1日、モルドバで露系住民が独立を一方的に宣言した「沿ドニエストル共和国」で、露軍が影響力を強めるための挑発行為を進めていると指摘した。
露軍は1日、占拠しているウクライナ南部ヘルソン州で露通貨ルーブルの導入を始めた。実効支配を強めるための新たな措置とみられるが、英BBCによると、ヘルソン市長は「地域で機能しているのはウクライナの銀行だ」とし、導入は不可能との認識を示した。