バルト海に浮かぶ対ロシア最前線の離島、緊迫の防衛訓練…2児の母「愛する島は私たちが守る」

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 約200年にわたり軍事的な「中立」を維持したスウェーデンが、ロシアの脅威の高まりを受け、北大西洋条約機構(NATO)に加盟申請した。欧州の安全保障を取り巻く状況が大きく変わる中、バルト海の離島では住民有志で作る「郷土防衛隊」が軍とともに訓練を行っていた。(スウェーデン南部ゴットランド島 池田慶太、写真も)

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スウェーデン南部ゴットランド島で、茂みの中で訓練を積む「郷土防衛隊」の隊員ら(17日)
スウェーデン南部ゴットランド島で、茂みの中で訓練を積む「郷土防衛隊」の隊員ら(17日)

 ゴットランド島の新緑まぶしい演習場で5月中旬、銃を持った迷彩服の男女が茂みの中を駆け抜けた。陸軍兵士と一緒に射撃訓練に参加するのは、地域ごとに編成する「防衛隊」の隊員らだ。隊員は会社員や店員、大工などそれぞれの職業を持ち、有事の際には陸軍と共に領土防衛に当たる。

 ロシア軍のウクライナ侵攻後、スウェーデン軍は全国の「防衛隊」に30日の追加訓練を指示した。隊員で2児の母のカミラ・セランダーさん(34)は「ロシアの戦争をテレビで見ると怖いが、愛する島は私たちが守る」と力を込めた。

 人口約6万人のゴットランド島はリゾート地だが、バルト海を隔てて南東約300キロ・メートル先にはロシアの飛び地カリーニングラードがある。露軍と向き合う前線の島には、スウェーデン陸軍の約300人の部隊が駐留する。

 カリーニングラードには1月、上陸作戦を任務とする強襲揚陸艦3隻が寄港した。このため軍内部で緊張が高まった。

 スウェーデン軍は島の駐留部隊を倍増させ、戦闘機や軍艦がバルト海に展開した。揚陸艦はその後、ウクライナ攻撃に参戦するため黒海に向かったが、島の警戒態勢は約1か月続いた。

 ゴットランド連隊のマグナス・フリクバル司令官は「プーチン(露大統領)はウクライナで政治目標達成のために軍を使っている。ロシアがスウェーデンの脅威であることは明らかだ」と警戒する。

 島は古くから軍事戦略上の要衝だった。島から首都のストックホルムまでは約190キロ・メートル。島を拠点にすれば、北欧やバルト諸国などに兵力を容易に展開できる。19世紀初めには帝政ロシアとスウェーデン王国との戦いで、ロシアに一時占領されたこともある。

 フリクバル司令官はA4判の地図を広げ、「ロシアが島を奪えばNATO軍のバルト海への接近を阻止できる。しかも島を取り戻すのは困難だろう」と解説した。

 スウェーデンは、軍事的な「中立」を貫く一方、練度の高い軍隊を維持し続けた。しかし、冷戦が終わりロシアの脅威が和らぐと、軍の縮小を決定。島に駐留していた部隊は2005年に完全に撤退した。

 ところが、ロシアによるウクライナ南部クリミア併合でロシアへの脅威認識が一気に強まった。スウェーデン軍は17年に島への駐留を再開し、廃止した徴兵制も復活させた。

 島では現在、防衛基盤の強化が急ピッチで進む。島北部では軍艦が長期停泊できるように港湾の改良を計画中で、対空ミサイルの配備も予定するという。

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