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    ハーバード大ジャーナリズム研究所ニーマン・ラボの報告を読売新聞が邦訳しています。

    “お笑い動画”で読者層拡大狙うワシントン・ポスト

    リカルド・ビルトン(ニーマン・ラボ特別寄稿者)
    • 「お笑い動画」はニュースへの間口を広げるか(画像はイメージ)
      「お笑い動画」はニュースへの間口を広げるか(画像はイメージ)

     アップル社と、ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官とを同時に笑いのネタにするのは簡単でないが、それをやってのけたのがワシントン・ポスト紙だ。同紙の動画班は9月、「新たなシリ(Siri、iPhone(アイフォーン)の音声認識によるアシスト機能)、サラをご紹介します」と題する短編風刺動画を発表した。アップルの広告をもじりながら、サンダース氏が記者団に繰り返し「その件は後でお答えします」と口にしながら、それをしばしば守らないことに“ツッコミ”を入れたのである。

     こうした動画がここ数か月、同紙では目立っている。例えば6月には、短期間でホワイトハウス広報部長を解任されたアンソニー・スカラムチ氏の、問題となった記者への電話を俳優に再現させてみた。

     新スローガン「民主主義は暗闇の中で死ぬ」が「落ち込む」として読者に不評だっただけに、同紙とお笑い動画というのは合わないようにも思える。だが、同紙の上級クリエイティブ・プロデューサー、ミシェル・ジャコナイ氏は反論する。より多くの人にニュースへの関心を持ってほしければ、まずは笑わせろというのだ。「ニュースを見てもらうために、いろいろな入り口を用意するのが私たちの仕事」というわけだ。

     同紙は今年初め、野心的な動画事業拡張3年計画を発表した。年初に40人だった動画班を現時点で約60人に増員した。年末には70人を超える見通しだ。

     ジャコナイ氏が主に手がけるのが、ポスト紙の動画部長ミカ・ジェルマン氏が言う「目的地としてのコンテンツ」作りである。これは、ポスト紙ウェブサイト上で見られる、記事に沿った内容の動画とはスタイルも内容も異なる。「ニュース部門のために我々が製作する動画は、実は動画そのものが目的になっていない。記事を読んでいるうちに、たまたま動画があるというものです」とジェルマン氏は言う。「ミシェルの仕事が難しいのは、いかに人々に我々の動画自体を目的にしてもらうかを模索しているからです。必ずしもポスト紙のホームページを見てもらうことにはこだわりません」

     ほとんどの新聞社同様、ポスト紙もフェイスブックやYouTube、アップルニュースなどのフォーマットを使い、自社動画を見る視聴者の数を増やそうとしている。だが、この戦略を受け入れることは、新しい伝え方とその題材を同時に試す実験でもある。ジャコナイ氏らは政治以外にも健康、食べ物、文化など、SNSのプラットフォーム上で最も視聴者をつかむ題材の動画作りに挑んでいる。

     もう一つ、ポスト紙が動画部門を拡張させる戦略の中心には、ジャコナイ氏が言うところの「(ポスト紙という)組織に顔を持たせる」という考えがある。この考えを核に、ポスト紙には、ジョージ・ウィル氏やエリック・ウェンプル氏といった花形記者が自分の記事やコラムに対する読者からの反応を朗読する「ヘイト・メール」シリーズが生まれた。

     ジェルマン氏によると、ポスト紙の動画戦略における主要課題は、同紙がすでに製作しているものすべてへの投資を続けながら、いかに「動画を重視する機関としての新たなブランドを確立するか」にあるという。ポスト紙は、活字での報道に加えて動画も持ちたいのであって、動画で活字に取って代わろうとしているのではない。

     ただ、視聴者にポスト紙が動画を重視していることを認識してもらうのは一朝一夕にはできない、とジェルマン氏も強調する。「朝、目を覚ました時や、夜、ソファでくつろぐ時に、どうやったら我々が製作する動画を見たいと思ってもらえるのか。それが我々にとって一番の問いです」と彼は言った。

    (9月14日配信記事から抜粋。全文は こちら

    プロフィル
    リカルド・ビルトン( Ricardo Bilton
     ニーマン・ラボ特別寄稿者。ネットメディアの記者として、デジタル・メディアのビジネス全般を担当してきた。この他にも、雑誌や海外の新聞など数々の媒体に多数の寄稿がある。休日の映画観賞は生活の一部だ。

    2017年10月20日 11時04分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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