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    ハーバード大ジャーナリズム研究所ニーマン・ラボの報告を読売新聞が邦訳しています。

    SNSでのニュース閲覧が、世界各地で頭打ちに

    ローラ・ハザード・オーウェン(ニーマン・ラボ副編集長)
    • ニュースをシェアするには、フェイスブックよりメッセージアプリの方が、プライバシーが守られていると感じるという(画像はイメージ)
      ニュースをシェアするには、フェイスブックよりメッセージアプリの方が、プライバシーが守られていると感じるという(画像はイメージ)

     ニュースを見る場としてのフェイスブックに失望を覚える人が増えている。一方で、報道機関のニュースに対しては、若い世代は高齢の世代よりもお金を出す傾向にある――。

     これらは、14日発表の英オックスフォード大学「ロイター・ジャーナリズム研究所」の一大報告書で明らかになった。同研究所の2018年版「デジタル・ニュース報告書」は、37か国・地域の7万4000人以上を対象にデジタル・ニュースの利用状況を調査した。英世論調査会社ユーガブが今年行ったオンライン調査に加え、米国、英国、ドイツ、ブラジルの4か国で実施した、ソーシャルメディアとメッセージアプリに関する対面でのグループインタビューに基づいたものだ。

    ニュースを見るためのSNS利用は減少中

     報告書は、「我々は過去7年間、何を通じて重要なニュースを知っているかを主要国で追跡し、ソーシャルメディアの利用が絶え間なく増えている状況を報告してきた」とした上で「現在、多くの諸国でこの成長は止まるか、後退している」と指摘。その一大要因として、フェイスブックの利用習慣に変化が生じたことを挙げた。例えば2018年に米国では39%がフェイスブックからニュースを見ていると答えたが、これは昨年より9ポイント下落した。米国の若者世代だけを見れば、フェイスブックでニュースを見る人は昨年より実に20ポイントも減った。

     すべての国で同じ傾向が見られるのではなく、例えばマレーシアとチェコでは、ニュースを見るためにフェイスブックを利用する人は著しく増えていた。ただ、減少傾向は調査の対象となった国の多くで見られた。米国以外の国でも昨年始まったトレンドといえる。

     調査の大半は、フェイスブックがニュースよりも友達同士の投稿を優先するアルゴリズム変更を行った今年1月以前に行われた。フェイスブックのこの決定のせいでないとすれば、いったい何が減少の原因なのか。報告書が示唆するのは、人々が「ワッツアップ」のような基本的に匿名のクローズド型メッセージアプリの方が安心できると感じるようになったという点だ。(ワッツアップをニュース閲覧のために利用する人は2014年以降ほぼ3倍増となった。ただ、米国では4%にとどまった)

    「ワッツアップ」が人気の理由

     対面調査では、今でもフェイスブックやツイッターでニュースを探すとの回答があった。ただ、そこで見つけたニュースをしばしばワッツアップにポストしてグループチャットの話題にするのだという。

     「ニュースを見つけるのは、依然、フェイスブックからだ。ワッツアップで何かシェアしたとしても、元はフェイスブックで見つけた記事だから、その意味でフェイスブックはまだ王様だ」。報告書で紹介されたグループインタビューで、年齢層20~29歳の米国人男性はこう語った。

     グループインタビューで、同じ年齢層に属する米国人女性は「なんとなくワッツアップの方がよりプライバシーが守られていると感じる。ショートメッセージとソーシャルメディアが混ざっているような。フェイスブックだと公にさらされているような気がする」と述べた。

     この傾向は、新聞などメディアの発行人にとってはやっかいな問題になりかねない。

     フェイスブックからメッセージアプリへという流れが確かなものになれば、新聞などにとって一般読者とどのようにつながりを築くかという新たなジレンマが生まれる。メッセージアプリへの移行は、より多くのプライバシーを求める人が増えているということでもある。ワッツアップのような空間にニュースを提供し、受け入れられるためには、より自然な対話形式にする必要が出てくる。

    「裏口」からニュースを読みたがる傾向

     ほとんどの人は、新聞などのホームページやアプリに直接行ってニュースを見ることはしない。報告書では、65%が別の方法でニュースに触れることを好むと回答した。検索機能を使ったり、ソーシャルメディア経由ということだ。ただ、これも国によって大きなばらつきがあった。報告書によると、北欧では依然、新聞などと読者が直接、接触を保っている。一方、韓国や日本の新聞などは、第三者のプラットフォームに頼らなければ読者と触れ合うことが難しい傾向にある。

    ニュースのためにお金を払う

     米国で昨年、定期利用料金以外の一時払いに応じる形で報道機関にお金を払ったという人は3%にとどまったが、将来的に検討したいとした人は26%に上った。報道機関がいかに困難に直面しているかを広く知らせることで、この数字は増えるかもしれない。報告書にはこうある。

     「今年の調査で(メディアの経営状態に関する)新たな質問項目を加えたところ、3分の2以上(68%)の人がニュース業界の抱える困難について知らないか、デジタル・ニュースの多くは収益を上げていると考えていることがわかった。実際には大半のニュースサイトは赤字で、投資家から補助金を得たり、別の収入の道や放送や新聞といった本業で上げた収益に頼ったりしているのだ」

     「デジタル新聞が赤字であることを知っている人(調査対象の約10%)の方が、定期購読するか課金に応じる傾向が強かった」

     若い世代の方がニュースにお金を払う傾向にあることについて、報告書はこう推測している。

     「これは、何も支払わないことと高額な定期購読をすることのギャップを埋める行為と考えられる。また、多様なデバイスを使い、多様なニュースを見たいという世代にとって好都合でもある。この二つの理由から選択的一時払いやクラウドファンディングのような払いたい分だけ支払う方式が今後、重要性を増していくだろう」

    (6月14日配信記事から抜粋。全文は こちら

    プロフィル
    ローラ・ハザード・オーウェン( Laura Hazard Owen
     ニーマン・ラボ副編集長。新興のインターネットメディアのリポートで知られる米カリフォルニア州の「GIGAOM」では、編集長を務めたことも。ネットメディアに造詣が深く、駆けだしの頃からの得意分野だった。

    2018年06月22日 10時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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