米大統領選の構図を決める? 民主党“左派の星”

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「リベラル版トランプ」になれるか

再選出馬を表明したトランプ大統領(18日、米フロリダ州オーランドで)=AP
再選出馬を表明したトランプ大統領(18日、米フロリダ州オーランドで)=AP

 オカシオコルテス氏を支えているのはミレニアル世代と言われている。ミレニアル世代は2000年代に社会人になった人たちで、1980年代から90年代半ばに生まれた。情報技術やデジタル機器の恩恵を受けているが、2000年代初頭のITバブル崩壊や08年のリーマン・ショックの影響を受けた人たちでもある。

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 彼女がブームを呼ぶ背景には、上位1%の人が富の多くを握る今の米国社会に対するミレニアル世代なりの意思表示がある。

 11年、「自分たちは1%ではなく99%」をスローガンに、若者たちが金融の中心であるウォール街を占拠するという運動が起きた。筆者は現場を何度も訪れたが、参加した人たちが求めていたものと、オカシオコルテス氏が提示する政策は多くの点で一致している。

 富の分配のあり方を見直し、より公正な社会の実現を求めているのだ。少し前までなら、そういう考えは米国では「社会主義」と切って捨てられたかもしれない。だが冷戦時代を知らないミレニアル世代に、「社会主義」という言葉に対するアレルギーはない。

 米国では国民世論が保守とリベラルにはっきり分かれ、政治的な分極化が進んでいる。共和党の政治家と民主党の政治家では、立ち位置の違いは大きく、しかもその隔たりはますます広がる傾向にある。

 共和党が「トランプ党」に変質していく中、リベラル派の中にはそれに対抗する強烈な個性を求める声がある。その受け皿となりそうなのが、左派のオカシオコルテス氏である。トランプ氏を食い止める役割を担う「リベラル版トランプ」の出現を希求する人たちが、彼女のブームを支えているのだ。

 トランプ大統領を批判するオカシオコルテス氏の舌鋒(ぜっぽう)は鋭い。モラー特別検察官が16年の大統領選へのロシアの介入疑惑に関する捜査報告書を公表した後も、トランプ氏のロシア疑惑はくすぶり続けている。オカシオコルテス氏は幕引きを許さず、大統領弾劾(だんがい)を要求し続けている。

トランプ氏にとって、やりにくい存在

民主党の候補者によるテレビ討論会(26日)=ロイター
民主党の候補者によるテレビ討論会(26日)=ロイター

 米国では下院議員の被選挙権は25歳以上だが、大統領の被選挙権は35歳以上だ。そのため、オカシオコルテス氏は来年の大統領選に出馬することはできない。ただ、リベラル派の救世主的な存在であることに変わりはなく、影響力は無視できない。

 共和党の党指名をほぼ確実にしている現職のトランプ氏にとって、オカシオコルテス氏は直接戦う相手ではない。だが、その分だけやりにくい面はある。トランプ氏の手の届かないところで、民主党に有利な世論を生み出す強敵になっていくかもしれない。

 民主党内で指名を争う候補の中で支持率トップを走っているのは、バイデン前副大統領である。民主党指導部は、中道のバイデン氏なら本選挙でトランプ氏に勝てると見ているかもしれない。

 しかし、党内の指名争いが本格化すると、バイデン氏以外の候補者はそろってバイデン氏をトップの座から引きずり下そうとするだろう。さらに、党内で競う予備選の場合、投票率が低いこともあって、そもそも投票所に行くのはイデオロギー的に極端な人が少なくない。

 民主党の場合、左派のサンダース氏やエリザベス・ウォーレン氏らが、バイデン氏の票を奪う可能性は大いにある。サンダース氏だけでなくウォーレン氏も、イデオロギーの面ではオカシオコルテス氏に近い。

 左派を含め、複数の候補者が競り合う展開になった場合、16年の選挙でサンダース氏を応援した熱狂的なミレニアル世代の若者をどう引き寄せるかがポイントとなる。そうなると、オカシオコルテス氏が誰を支援するかが重要な意味を持つ。

 民主党の中ではオカシオコルテス氏を中心とする左派の勢力伸長に対して「党を割るものだ」「本選挙ではトランプ氏に負けてしまう」と危機感を持つ人が主流派の中には多く、オカシオコルテス氏の台頭を素直に喜んでいない人もいる。

 ただ、「民主党内に亀裂を生む」という指摘そのものが「エスタブリッシュメントの既得権益を守る動き」と見られる可能性があり、新陳代謝の必要性を訴える声も根強い。

 AOCという新しいスターが、このままリベラル派の夢を実現するヒロインに成長し、「本物」になっていくことができるか。その答えは、今回の大統領選の選挙運動の中で明らかになるだろう。

プロフィル
前嶋 和弘(まえしま・かずひろ)
 上智大学総合グローバル学部教授。1965年、静岡県生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業、ジョージタウン大学大学院政治学部修士課程修了(MA)、メリーランド大学大学院政治学部博士課程修了(Ph.D.)。専門は現代米国政治。主な著書に『オバマ後のアメリカ政治:2012年大統領選挙と分断された政治の行方』(東信堂、14年)、『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、19年、共著)などがある。

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