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バイデン研究<上>前副大統領 集大成へ挑む…政治経験豊富 親しみやすさ

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 米大統領選(11月3日投開票)は、共和党現職のドナルド・トランプ大統領(73)に対し、民主党のジョー・バイデン前副大統領(77)が挑む構図となった。バイデン氏とはどのような人物か。本人の言動や経歴、関係者の証言などを基に実像を探った。

交渉巧み オバマ氏支える

 米国で猛威をふるう新型コロナウイルスの感染拡大で、候補者は今までと様変わりした選挙戦を強いられている。

 バイデン氏は、地元デラウェア州の自宅地下室に設置した特設スタジオから連日、メディアなどが主催するオンライン集会に参加している。19日夜は、コロナ危機下の米国が直面した食料問題が議題になった。

 トランプ政権が貧困層向けのフードスタンプ(政府による食料費補助)の削減を打ち出したのに対し、バイデン氏は「食料不足が問題なのではなく、リーダーシップが問題なのだ」とトランプ批判に力を込めた。

米中西部ミシガン州の支持者集会で演説するバイデン前副大統領(3月9日、ロイター)
米中西部ミシガン州の支持者集会で演説するバイデン前副大統領(3月9日、ロイター)

 バイデン氏には、誰とでも打ち解けて個人的関係を築く能力があるとされる。親しみやすい人柄は選挙戦では大きな強みだ。

 しかし、オンラインでそうした魅力を伝えるのは難しい。保守系のFOXニュースはバイデン氏が置かれた状況について「社会的距離の時代にバイデン氏が大統領選に臨む。何とも皮肉な事態だ」と伝えた。トランプ氏自身も、相手陣営の焦りを見透かしたかのように「ジョーが地下室で寝ぼけている」とツイッターでの攻撃に余念がない。

 ★  ☆  ☆

 バイデン氏は2009年、黒人で初の大統領となったバラク・オバマ氏の下で副大統領に就任した。それまで36年間にわたって上院議員を務め、ワシントンの議会政治を熟知していたバイデン氏は、政治経験の浅いオバマ氏を補佐する役割を果たした。特に力を発揮したのが、当時野党だった共和党との交渉ごとをまとめる仕事だ。

 09年にリーマン・ショック後の大規模景気対策を打ち出した際には、共和党議員に電話攻勢を仕掛け、「まるでストーカー」(米政治専門紙ポリティコ)のような粘り強さで反対姿勢を転換させるのに成功した。

 翌年には、無保険者をなくすことを目的とした医療保険制度「オバマケア」の成立にも尽力した。バイデン氏は今年2月の対話集会で「共和党からの票なしでも成立したが、票を固めるために上院と下院に入り浸った」と振り返った。

 ☆  ★  ☆

 党派の壁を越えて信頼関係を築ける人物――。バイデン氏を知る関係者の見方は一致している。

 ワシントン・ポスト紙などで長年政治記者を務め、バイデン氏に関する伝記を出版したジャーナリストのジュールス・ウィットカバー氏(92)は「上院議員時代に培った人脈は、副大統領時代にも大いに生きた」と指摘する。「オバマ氏自身は議員としての経験が浅く、バイデン氏をとても頼りにしていた」という。

 ☆  ☆  ★

 バイデン氏は今回の選挙戦で、長い政治経験の集大成を大統領として成し遂げたいと訴えている。「この国には『癒やしの政治』が必要だ」と党派対立の克服を掲げるが、米国の政治の分断はトランプ政権の下でさらに進んだ。

 米議会は、トランプ氏支持で固まる共和党、激しく抵抗する民主党という与野党対立が固定化している。分断をあおって熱狂的な支持をつなぎ留めてきたトランプ氏は、バイデン氏への攻撃を強めている。

 ウィットカバー氏は「共和党は劇的に変わった。トランプ氏の破滅的な政策に抵抗できずにいる」と与野党連携の難しさを強調した上で、「バイデン氏は超党派で物事を動かせると証明してきた」と期待をにじませた。

自称「中産階級のジョー」…父の失職 雇用安定訴え

 バイデン氏は支持者への演説で自らを「ミドルクラス・ジョー」と呼ぶ。中産階級の男という意味だ。

 出身地の東部ペンシルベニア州スクラントンは、いわゆるラストベルト(さびついた工業地帯)の一角に位置する。父は自動車のセールスマン、母は専業主婦だった。米社会のエリートはプロテスタント系と相場が決まっていた時代に、アイルランド系カトリックの決して裕福ではない家庭で育った。

 父が失職し、バイデン氏が10歳の時に隣のデラウェア州に転居した。この時の体験について「親が子どもに『もう今の学校には戻れないし、友達ともお別れをしなくてはならない』と告げることほど、苦しいことはない」と述べている。

 「誰もそんな経験をしなくて済むよう、私は自分のキャリアの全てをかけて戦ってきた」と訴えるのは、雇用の不安定な労働者層にアピールする狙いがある。選挙戦のスローガンには「中産階級の復活」を掲げている。

 地元のデラウェア大学を卒業し、シラキュース大法科大学院を出て弁護士となった。郡議会議員として環境問題などに関わったことで政治と接点を持ち、29歳の若さで連邦上院議員に当選した。

 上院議員時代は外交委員会の在籍期間が長く、各国指導者と交流を重ねた。

 1994年には、司法委員長として家庭内暴力を犯罪と明確に規定し、当時は画期的とされた「女性に対する暴力防止法」の制定に関与した。2007年出版の自伝で、この法律制定を「政治家としての人生で最も誇らしい瞬間」と記している。

 大統領選は今回が3回目の挑戦となる。初挑戦となった88年の選挙では演説の盗用疑惑が浮上し、撤退に追い込まれた。2回目の08年は初戦のアイオワ州党員集会で得票率が1%未満にとどまり、早々に姿を消した。今回は序盤は苦戦したが、3月のスーパーチューズデーで大勝し、候補指名への流れを確実にした。

 バイデン氏が大統領選で勝利すれば、来年1月の就任時点で78歳となり、史上最高齢となる。

対トランプ氏 接戦州リード

 11月3日の投開票日まで半年を切る中、米メディアなどの世論調査では、バイデン氏がトランプ氏をリードしている。

 米政治情報サイトの「リアル・クリア・ポリティクス」がまとめた最近の全米世論調査の平均値(20日現在)は、バイデン氏に投票するとした人が48・7%で、トランプ氏の43・1%を約5ポイント上回った。

 勝敗のカギを握るのが、選挙のたびに共和、民主両党の候補が競り合う「接戦州」だ。トランプ氏と民主党のヒラリー・クリントン候補が争った2016年の大統領選では、接戦州の多くをトランプ氏が制し、勝利をたぐり寄せた。

 現時点では、そうした州の多くで、バイデン氏がリードを保っている。リアル・クリア・ポリティクスによる3月以降の世論調査平均では、東部ペンシルベニア州で約6ポイント、中西部ミシガン州で約5ポイント、南部フロリダ州で約3ポイント差でバイデン氏がトランプ氏を上回った。

 共和党が長く優勢を保ってきた西部アリゾナ州でも、バイデン氏が4ポイント差で先行している。バイデン陣営は「これまで接戦州ではなかったところが今回は接戦州になるだろう」(ジェン・オマリー・ディロン選対本部長)と自信をのぞかせる。

 ただ、前回選では、世論調査で投票先を答えない「隠れトランプ支持者」の存在も注目された。4年前の同時期には、クリントン氏がトランプ氏に全米調査で約3ポイントの差をつけていた。それを考慮すれば、バイデン氏の実際のリードは大きくない可能性がある。

 トランプ陣営からは「今日の世論調査が、11月3日に我々が目にするものではないことは誰もが知っている」(共和党全国委のロナ・マクダニエル委員長)といった声が出ている。

 一方で、新型コロナウイルスの感染拡大は、現職のトランプ氏に不利に働くとの見方がある。特に高齢者の支持離れが指摘されており、7~10日に行われた米CNNの世論調査では、全米の65歳以上の支持率はバイデン氏が57%、トランプ氏は42%だった。

 この調査では、両氏に対する印象を聞いており、「誠実で信頼できる」の項目ではバイデン氏が15ポイントの差でトランプ氏を上回った。「国を分断させるのではなく統合させる」という項目でもバイデン氏に軍配が上がり、トランプ氏が勝ったのは「大統領になるスタミナや鋭さがある」という項目だけだった。

 全米がコロナ危機に直面する中、政敵を激しく攻撃するトランプ氏の政治手法に対し、従来の支持者の間でも距離を置く動きが広がっている可能性がある。

病気知り 私の息子に電話…ヘーゲル元国防長官インタビュー

 ジョーは物事をまとめられるリーダーだ。彼は相手の話に耳を傾け、妥協をいとわない。大統領になれば、まず最初に議会に出向き、与野党のメンバーと話し込むだろう。副大統領時代と同じように。

 今から20年近く前だが、私が初めて外交委員会に出席した時、外交委員長だったジョーがあいさつに来て、私の肩に手を置いてこう言った。「君たちの立場は資料で読んだ。一緒に仕事をするのを楽しみにしているよ」。委員長がわざわざ他党の新入り議員の席まで出向く。個人的関係を重視し、誰とでも付き合うのが彼の政治スタイルなんだ。

 私は彼ほど人に共感し、親身になってくれる政治家を見たことがない。息子が10歳の頃、病気で2か月半、入院したことがあった。ジョーはそのことを耳にし、息子に毎日電話をかけてくれた。アメリカンフットボールのチームジャージーも贈ってくれた。息子は、今でもそのジャージーを持っている。

 ◎チャック・ヘーゲル氏 1997年から共和党上院議員を2期12年務めた。民主党のオバマ政権下の2013~15年に国防長官。73歳。

セクハラ疑惑 不安材料に…本人は否定

 バイデン氏には不安材料も少なくない。特に、民主党の重要な支持基盤である女性票に響きかねないのが、一連のセクハラ疑惑だ。

 一つには、1990年代にバイデン氏の事務所スタッフとして働いていた女性による訴えがある。93年に上院の建物内で、バイデン氏に壁に押しつけられ、スカートに手を入れられたと主張しており、今年4月に刑事告訴に踏み切った。

 バイデン氏は5月1日のインタビューで「女性には声を上げる権利があるが、大事なのは真実だ。私は何もしていない」と疑惑を全面否定した。

 民主党はこれまで、トランプ氏の女性問題を厳しく追及してきた。2018年秋には、トランプ氏が連邦最高裁判事に指名した保守派のブレット・カバノー氏をめぐり、女性からの性的被害の告発を踏まえ、徹底して承認に反対した。カバノー氏は一貫して疑惑を否定していた。

 ところが、バイデン氏の疑惑をめぐっては、民主党議員が早々に「バイデン氏の説明を信じる」と表明し、共和党から「二重基準だ」と批判を浴びている。

 昨年には、複数の女性が過去にバイデン氏から肩を触られるなどのセクハラ被害を受けたと名乗り出た。バイデン氏は「人間味あるつながりを持とうと心がけてきた」と述べ、性的な意味合いはなかったと釈明に追われた。

 バイデン氏には、トランプ氏が2月に弾劾だんがい裁判で無罪評決を受けた「ウクライナ疑惑」に絡む問題もある。バイデン氏の次男であるハンター・バイデン氏と外国企業の関係をめぐる問題だ。

 ハンター氏は、バイデン氏が副大統領だった頃、ウクライナのガス会社の役員に就いており、高額の報酬を得ていたことが分かっている。同じ頃、中国で投資ファンドの設立にも携わっていた。

 トランプ氏は、バイデン氏が副大統領の立場で投資ファンドの設立を支援していたと主張し、調査が必要だとしている。投開票日をにらみながら、攻撃材料に使う構えとみられる。

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1233551 0 アメリカ大統領選挙2020 2020/05/22 05:00:00 2020/10/21 16:42:26 2020/10/21 16:42:26 Democratic U.S. presidential candidate and former Vice President Joe Biden speaks during a campaign stop in Detroit, Michigan, U.S., March 9, 2020. REUTERS/Brendan McDermid.     TPX IMAGES OF THE DAY★国際部が2020年5月20日に購入 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/05/20200521-OYT1I50075-T.jpg?type=thumbnail

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