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トランプ氏とバイデン氏がテレビ討論会で激突…アメリカ大統領選の展望を聞く 

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 アメリカ大統領選候補のテレビ討論会が、9月29日夜(現地時間、日本では翌朝)から10月22日まで3回にわたって行われます。共和党のトランプ氏の再選か、民主党のバイデン氏が政権奪還を果たすのか。近著「白人ナショナリズム」(中公新書)が話題の渡辺靖・慶応義塾大SFC教授を講師に招いた読売Bizフォーラム東京オンラインゼミ「揺れる超大国~米大統領選の展望」から抜粋して、アメリカ大統領選の注目ポイントを紹介します。(聞き手:大内佐紀・読売新聞調査研究本部主任研究員)

支持率縮まる…壊し屋のスリルvsおとなしい誠実派

大内:世論調査では、バイデン氏がリードしていますが、トランプ氏は、全米で広がる抗議デモ(5月にミネソタ州で白人警官が黒人男性の首を膝で押さえて死亡させた事件などで再燃)の混乱を「法と秩序」の問題に置き換え、「家族の安全をバイデンが守れるか」と訴えて、差を縮めています。

政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」がまとめたトランプ氏とバイデン氏の支持率
政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」がまとめたトランプ氏とバイデン氏の支持率

渡辺氏:トランプ大統領は、当初からアメリカ全体をまとめる気はなくて、自分の岩盤支持基盤、つまり、宗教的な保守層や白人の保守層を固めることを考えています。彼らから見ると、これまでの大統領は、就任すると立場を変えて裏切られたという感覚があった。トランプ氏ほど自分たちが欲していた政策を実行している人はいないわけです。これだけスキャンダルや新型コロナ対応などへの批判はあっても、4割程度の支持層は彼に忠実です。

 トランプ大統領は型破りで、既存の枠組みの「壊し屋」的なところがあり、リアリティーショーをそのまま見ているようなスリルや面白さがあります。

 それに比べると、バイデン氏は、言っていることはまっとうでも、古さや既視感がある。「トランプ劇場」に慣れてしまうと、物足りない。反トランプであるという以外に伝わってくるビジョンが感じられず、情熱や覇気が欠けているように感じられます。

最高裁判事の指名の意味は?

9月26日、ホワイトハウスでトランプ大統領(左)と指名発表に臨んだバレット氏(AP)
9月26日、ホワイトハウスでトランプ大統領(左)と指名発表に臨んだバレット氏(AP)

大内:最高裁のギンズバーグ判事の死去に伴って、保守派で48歳の女性判事エイミー・バレットさんをトランプ氏が駆け込みで後任に指名しました。これから議会上院での承認手続きに入りますが、トランプ氏は大統領選前の決着を求めています。

渡辺氏:結論からいうと、承認される公算が極めて高いと思います。(上院で多数派の)共和党の離反者はごく少数、もしかすると全員賛成するかもしれず、民主党にはなすすべがありません。

 トランプ大統領とすれば、世の中の注目をコロナの問題からそらす効果もある。2期8年務めた大統領でもこれまでせいぜい2人ほどしか最高裁判事を指名できなかったのに、トランプ氏は4年で3人の保守派判事を指名している。強運の持ち主と言えるかもしれません。共和党支持者にとっては大歓迎で、求心力は高まります。

 一方、民主党とすれば、大統領選の半年前には重要人事を行わないという不文律を自分たちは守ってきたのに、極めて政治的な理由で人事を強行しようとしていることに対する反発がある。結果的には反トランプで民主党の結束を固める効果はあるとは思います。

 最高裁判事の任期は終身制なので、最高裁の判断を仰ぐような、国を二分する問題で、バレット氏はこの先、30~40年はずっとその立場にいるかもしれない。任期が最大8年の大統領よりずっと長く影響力があるともいえ、国民の関心は高いですね。

両党の支持者が見ている世界は「パラレルワールド」

大内:これまでの選挙では、右派を固めた共和党候補と左派を固めた民主党候補が真ん中の浮動票を取り合ってきました。

渡辺氏:アメリカの分断が深まり、民主党と共和党の支持者では、まったく世界の見え方が違う「パラレルワールド」になっています。

 シカゴのあるシンクタンクが発表した世論調査が面白いのですが、大統領選で重視する問題は何かを民主・共和両党の支持者に尋ねたところ、民主党支持者はコロナや環境、人種問題、他国からの選挙介入、経済と答え、共和党支持者は中国や、国内外のテロ、移民・難民問題を挙げた。重なっているテーマが一つもないのです。

 新型コロナで、国民の生命、財産を脅かす危機が来れば、党派を超えて取り組むと思っていましたが、結果的にはマスクをするかしないかが、分断のシンボルになっています。

 人種差別に反対するということはアメリカの根幹をなす大問題で、黒人が犠牲になった場合は犠牲者の側に立ってきたものですが、トランプ大統領は警察側に立つ一方、民主党はそうではないと、くっきり立場がわかれている。国の根幹にかかわる国内の大問題でも、世界を見つめる目線でも分裂を深めているのが今のアメリカの深刻さといえます。

テレビ討論会、ルールなき戦いに?

大内:9月29日から大統領候補同士によるテレビ討論会が始まります。全米に中継され、投票に大きな影響を与えるとされていますが、どこに注目しますか?

民主党候補のバイデン氏。就任すれば78歳で史上最高齢の大統領になる(AP)
民主党候補のバイデン氏。就任すれば78歳で史上最高齢の大統領になる(AP)

渡辺氏:バイデン氏は、高齢で(仮に当選すれば)就任時には78歳。大統領になってきちんとした判断ができるか、反トランプであることはわかるが、実際どれだけ情熱を持っていて政策を遂行できるか疑問を感じている人が多いわけです。聞かれた質問の答えに窮すると、単にそれは言葉につまったということじゃなくて、健康不安を抱えているんじゃないか、ということになる。その不安を払拭できるかどうかがひとつの見どころです。

 トランプ大統領のようなルールを無視する相手に対して、民主党の予備選の時のようにまっとうにルールを守った試合をしても効果的かどうかわかりません。あくまで私の読みですが、バイデン氏は「民主党対共和党ではなく、アメリカ対トランプの戦いなんだ」と、今回の選挙には民主主義の矜持(きょうじ)がかかっているという風に持ち込もうとする。

 一方、トランプ氏は「経済も治安も、対外政策もバイデン氏に任せると非常に間違った判断をしてしまう」と、バイデン政権に対する不安を徹底的にかきたてるのが基本的な戦略になるのではないでしょうか。

「トランプ氏は、保守層を固めることを重視」と渡辺教授
「トランプ氏は、保守層を固めることを重視」と渡辺教授

大内:前回2016年の選挙戦でも、トランプ氏の主張は必ずしも事実でなく、ファクトに基づかないこともありました。

渡辺氏:4年間ずっとそうだったので、今回の大統領選でも突然変わることは難しい。

 ただ、トランプ氏が事実に反することを言っても支持に影響はないのです。ペイパルを創業したピーター・ティールの言葉が核心をついていると思います。

 彼によると、トランプ氏を批判する人は、トランプ氏の一言一言が事実かどうかを気にするけれど、トランプ氏の存在自体を軽くとらえている。でも、トランプ氏の支持者は一言一言は気にしない、トランプ氏という存在自体を気にしている、と。

 今回も、何回嘘をついたという「ファクトチェック」がなされると思いますが、支持者にとって真実かどうかはどうでもいいんです、揺るがぬ姿勢やファイティング・スピリッツを見ているわけですから。

大内:本日(9月28日)時点での先生の予測でいくと、就任式が行われる来年1月20日の夜にホワイトハウスに座っているのは?

渡辺氏:トランプ氏が居座っているかもしれません。コロナもあり、郵便投票もあり、異例ずくめの選挙の中で、トランプ氏は4年前に起こしたサプライズに見るように、底知れぬ力を持っています。常識的に考えればバイデン氏だろうと思いますが、トランプ氏が勝利する可能性を否定してはいけないと思っています。

渡辺靖氏(わたなべ・やすし) 慶應義塾大学SFC教授

1967年、札幌市生まれ。1997年ハーバード大学大学院博士課程修了(Ph.D.社会人類学)。ハーバード大学国際問題研究所、オクスフォード大学シニア・アソシエート、ケンブリッジ大学フェローなどを経て、2005年より慶應義塾大学SFC教授。専門はアメリカ研究、文化政策論。日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞受賞。近著は『リバタリアニズム』『白人ナショナリズム』(共に中公新書)。

大内佐紀(おおうち・さき)読売新聞東京本社 調査研究本部 主任研究員

 1986年、読売新聞入社。主に国際報道に携わり、特派員としてワシントン、ジュネーブ、ロンドンに駐在。The Japan News編集長、編集局次長などを経て現職。小中学校の4年間を米国で過ごして以来、文化から政治までアメリカに高い関心を寄せる。

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1509783 0 アメリカ大統領選挙2020 2020/09/29 18:49:00 2020/09/29 19:58:55 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200929-OYT1I50072-T.jpg?type=thumbnail

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