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[解説スペシャル]トランプ氏「パリ協定拒否」 温暖化対策 米不在の懸念

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社会部・野崎達也

地球温暖化やエネルギー問題に関するトランプ氏の発言や政策
地球温暖化やエネルギー問題に関するトランプ氏の発言や政策

COP22 各国に波紋

 モロッコのマラケシュで開かれている国連気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)は15日、閣僚級会合に入った。地球温暖化対策の新しい国際枠組み「パリ協定」の早期発効を先導した米国で、次期大統領に協定を拒否しているドナルド・トランプ氏が当選。2020年から始まる、協定に基づく温暖化対策の実施は一気に不透明になった。「けん引役」を失っても、世界の温暖化対策を後退させてはならない。

祝賀ムード一変

 閣僚級会合に先立ち、国連の潘基文(パンギムン)事務総長は15日、COP22の会場内で記者会見した。質疑では、欧米メディアを中心にトランプ氏に関する質問が集中。潘氏は「パリ協定は歴史的な早さで発効した。世界的な気候変動対策は止まることはないだろう。トランプ氏と会って温暖化問題について話してみたい」と述べた。

 4日にパリ協定が発効したのを受け、祝賀ムードの中で開幕したCOP22だったが、米大統領選の結果が出た9日以降、会場の雰囲気は一変。トランプ氏の話題で持ちきりとなった。

 COP22の会期中に選出される米国の新大統領は当初から、会議の陰の主役だった。選挙結果が世界の気候変動対策を大きく左右することを踏まえ、開幕日の7日、公式会合では各国の選挙結果を取り上げないという異例の取り決めも行われた。

トランプ新政権と温暖化交渉の流れ
トランプ新政権と温暖化交渉の流れ

今後どうなる

 口火を切ったのはベネズエラ代表団。11日の会合で「米国は今後どうなるのか。みんなが聞きたかったことだ」と迫ると、米国の交渉官は「次の政権のことは話せないが、パリ協定が覆ることはない」と硬い表情で述べるにとどめた。

 来年1月に任期を終えるオバマ政権が派遣した代表団の発言権の低下は避けられない。トランプ政権の誕生を念頭に、EU(欧州連合)代表団は「米国のリーダーシップはこれまでも今後も重要だ」、条約事務局のエスピノーザ事務局長は「米国の次期政権とも建設的な関係を続けられるだろう」と、それぞれ記者会見でくぎを刺した。

 海面上昇に苦しむ島嶼(とうしょ)国からは、切実な声が聞かれた。

 パラオ政府のエグザビア・マツタロ氏は、読売新聞の取材に「米国も地球温暖化による自然災害を受ける可能性があることをトランプ氏にも知ってほしい。パリ協定の重要さが分かるはずだ」と訴えた。14日に現地入りした山本環境相も「温暖化対策は世界の潮流。いかなる事情があっても潮流には逆らえないだろう」と述べた。

中国「行動続ける」

 中国代表団は11日、記者会見し「米国の新政権で何が起きても、私たちは行動し続ける。温暖化対策は止まらない」と強調した。

 9月にパリ協定の批准をオバマ大統領と共同発表し、協定の早期発効の流れを決定づけただけに、トランプ新政権とは一線を画す姿勢を明確にした。だが、温室効果ガスの排出量が増え続けている中国が、今後世界全体の温暖化対策のけん引役になれるのかどうかは不透明だ。

途上国巨額支援 停止も 協定枠組み 崩壊の恐れ

 「温暖化は中国のでっち上げ」と述べ、オバマ政権が取り組んだ温暖化対策を強く批判してきたトランプ氏。選挙期間中に示した大統領就任後の「100日計画」には「パリ協定をキャンセルし、国連の温暖化対策プログラムへの全拠出を止める」との項目が盛り込まれており、協定を軸にした世界の取り組みに影響が出るのは避けられない情勢だ。

 パリ協定の規定上、米国は発効から4年後にならないと離脱はできない。このため、協定からの離脱は最速でも第1期の任期切れ直前の20年11月。ただし、協定の基になる気候変動枠組み条約からの離脱は、1年前に通告すれば可能だ。条約から離脱すれば、パリ協定からも離脱したと見なされる規定もある。

 トランプ氏は温暖化の事実を否定する懐疑論の論客マイロン・イーベル氏を、米国の環境政策を担う環境保護局(EPA)の政権移行チームのリーダーに指名しており、条約からの離脱を懸念する声も出ている。

 国際環境経済研究所の山本隆三所長(常葉大教授)は「トランプ氏は09年に、オバマ大統領の温暖化政策を支持する意見広告に名を連ねたことがある。根っからの懐疑論者ではなく、選挙戦術として極端な政策を打ち出した可能性がある」としたうえで、「米国の温暖化対策が後退すること自体は避けられない」と見る。

 10年以降、オバマ政権は温暖化対策で総額156億ドルの途上国支援を実施してきた。国連の温暖化対策基金100億ドルのうち、最大の30億ドルの拠出も表明している。パリ協定に途上国を引き入れるため、先進国は20年までに官民合わせて年1000億ドルの支援を約束しており、拠出が停止されれば、その実現も危うくなる。外務省幹部は「パリ協定の合意は、先進国の途上国への資金支援があったからこそ。パリ協定が立ちゆかなくなる恐れは十分ある」と指摘する。

 オバマ政権が導入した石炭火力発電に厳しい規制を課す「クリーンパワープラン(CPP)」も頓挫する可能性がある。米国内の排出削減対策の柱とされるCPPが廃止され、世界で2番目に多い温室効果ガスを排出する米国の削減が進まない事態になれば、パリ協定が掲げる、今世紀末までの気温上昇を2度未満に抑える目標の達成も難しくなる。

 ◆パリ協定

 パリで開かれた気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で昨年12月に採択され、今年11月4日に発効した。途上国を含む全ての国が参加し、世界の平均気温の上昇幅が産業革命前と比べ「2度を十分に下回る」ことを目指す。基になった枠組み条約は1992年の国連環境開発会議(地球サミット)で採択され、94年に発効した。95年から毎年、条約の締約国会議(COP)が開かれ、国際的な温暖化対策について協議している。

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1517475 0 アメリカ大統領選挙2020 2016/11/16 05:00:00 2016/11/16 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200929-OYT1I50067-T.jpg?type=thumbnail

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