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大接戦のアメリカ大統領選挙を本紙ベテラン記者が解説

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 大詰めを迎えたアメリカ大統領選挙の行方を読売新聞のベテラン記者が動画で解説します。選挙前の世論調査で優勢が伝えられていたバイデン氏が大接戦に持ち込まれたのはなぜ? 急増した郵便投票の恩恵を受けたのは? 分断の先にあるのは?

 解説は、政治部や医療情報部などで取材し、BS日テレ「深層NEWS」でも解説を務めた吉田清久編集委員と、ワシントン特派員などを歴任した調査研究本部の大内佐紀主任研究員(国際情勢)の二人です。

 動画では、<1>新型コロナ <2>アメリカ社会の分断 <3>民主主義 の三つのテーマで選挙戦とこれからを考えます。

【解説動画・混迷深める米大統領選】概要をまとめました

 アメリカ大統領選挙は大接戦となり、勝者が決まらない異例の展開になっています。どちらがいつ負けを認めるのか。認めなかった場合、どうなるのか。そして日本はどう対応するべきか。政治、国際取材に長く携わってきた読売新聞の記者2人の「緊急座談会」(11月5日ライブ配信済み)を振り返ります。(読売新聞オンライン)

前回も勝敗を決めた因縁の地「ラストベルト」

 大内佐紀:新型コロナウイルス禍の真っただ中で実施された選挙で、いろいろな意味で歴史に残る大統領選になりました。まだ開票作業が続いていますが、バイデンさんが選挙人数の過半数270人にリーチをかけ、優勢な状況といえます。ただ、AP通信がバイデンさんを当確としたアリゾナ州で、CNNが判定を見合わせるなど、流動的ではあります。

 吉田清久:選挙人制度という特殊なやり方が状況を読みにくくしているようです。

 大内:アメリカは「州」の権限が強く、その一つの表れがこの選挙人制度といえます。各州と首都ワシントンに、人口に応じて合計538人の選挙人を割り当て、50州中、48州では、極端にいえば1票でも多く得票した候補が割り当ての選挙人を「総取り」します。

 2016年の大統領選を例に見ると、勝ったトランプさんの得票総数は民主党のヒラリー・クリントンさんより多かった。しかし、選挙人の数で見ると、トランプさんは306人だったのに対し、クリントンさんは232人にとどまり、結局、負けました。

 今年も「さびついた工業地帯」、いわゆる「ラストベルト」と呼ばれる地帯にあるペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの中西部3州が注目されていますが、クリントンさんはこの3州で、いずれも得票率でいうと1%未満の差で負けている。因縁の地といえますよね。

なぜ開票途中なのに「勝利宣言」したのか

 吉田:開票作業をやっている最中なのにトランプさんが現地時間で4日の午前3時過ぎ、いきなりホワイトハウスで勝利宣言をしたのには驚きました。

 大内:コロナの影響とトランプさんの焦りの現れです。今回はコロナのため、投票所での「密」を避けようと、期日前投票した人、特に郵便投票した人が過去最多となりました。4年前の投票総数は約1億4000万でしたが、今回は1億人以上が期日前に投票し、そのうち6500万人が郵送で投票したとみられています。

 州によって期日前投票分をいつから開票するかが異なるのですが、ペンシルベニア州を例に見ると、まずは選挙当日、投票所に行った有権者の分から開けて、それから郵送分を開いている。期日前投票は圧倒的に民主党支持者が多いですから、開票初期の段階では共和党のトランプさんが優勢だったのに、開票が進むほどバイデン氏の得票が延びる結果になっている。

 トランプさんはが早々と勝利宣言を行ったのは、「俺が勝った、これで決まり。これ以上、不正だらけの郵送投票分を開票するな」というけん制にほかなりません。

 吉田:発言で気になったのは、証拠も示さずに「大規模な不正があった」と断言して、連邦最高裁に訴えるとした点です。

 大内:そして、この発言後、早速、訴訟を起こしています。まだ最高裁までは行っていませんが、ウィスコンシンでは再集計を求め、ペンシルベニア、ミシガン、ジョージアの3州では集計の停止を求めている。今後、最高裁まで争うのは確実で、大統領選の最終結果が出るのに時間がかかるのは不可避だと思います。

激戦になると言われたフロリダでトランプ氏が勝利

 吉田:それで思い出すのは、2000年のブッシュ対ゴアの大統領選でのフロリダ州攻防です。訴訟合戦となって、結果が出るまで37日間もかかった。今回もまた、フロリダは大接戦となって決着に時間がかかるとされていたのに、案外、すんなりと決まって、あれ、と思いました。

 大内:事前の世論調査の精度が改善されていなかった、平たくいうと、調査が当たらなかったということだと思います。4年前も言われたことですが、今回も「隠れトランプ」は多かった。人種差別的な言動もあって、支持していると言いにくいトランプさんを「良い」と思っている人が侮れないほど多く存在するということです。

 フロリダの地元記者によると、トランプさんのフロリダでの勝因は二つ。経済再開重視を訴えたことと、ヒスパニック系の票が想定外にトランプさんに流れたことです。

 フロリダ中部にはディズニーランドやユニバーサルスタジオがあるオランドという都市がありますが、フロリダは観光業が盛んな州です。それが、新型コロナによってみるみる職が失われていった。「コロナで大変だ、大変だ」というバイデンさんより、「とにもかくにも経済再開だ。俺はコロナに感染しても治った」というトランプさんの訴えの方が心に響いたんですね。

 また、トランプさんは「壁」を作って中米や南米からの違法移民を締め出すと公約していて、ヒスパニック系は反トランプと思われがちですが、フロリダにはキューバやベネズエラといった共産主義・社会主義の圧制から逃れてきた人のコミュニティがある。この層には「バイデンも、民主党も根っこは危険な社会主義者だ」というトランプ陣営のレッテル貼りが効いたという見方です。

今回のキーワードは「経済」「コロナ」「分断」

 吉田:コロナと経済は文字通り、選挙戦の影の主役でしたね。

 大内:振り返ると、1月には、トランプさんの再選は固いと言われていました。失業率は3.6%と歴史的に低い数字だった。ところが、2月にはトランプさんいうところの中国発のコロナが入ってきて、4月の失業率は14.7パーセントに跳ね上がり、3か月のうちに戦後最悪水準の数字になりました。

 5月には中西部ミネソタ州で、白人警察官に首を押さえつけられて黒人が死亡し、「ブラック・ライブス・マター(BLM)、黒人の命も大切だ」という人種差別反対運動が全米に広がった。これに対し、トランプさんは国をまとめるどころか、分断を進めるような発言を繰り返し、身内の共和党からもまゆをひそめる人が出た。

 吉田:BLMに見られるように、分断も今年の重要なキーワードでしたね。

 大内:はい。そして、コロナやBLMを追い風にして、バイデンさんが勝てるのではないかというムードも初夏には広がりましたが、トランプさんは分断や混乱を「法と秩序」という問題に置き換えて、「デモ隊が暴徒化したり、略奪行為に走ったりする。あなたが住む素敵な町を、犯罪者に甘いバイデンに守れるか」とアピールしました。

 吉田:ニューヨークやロサンゼルスで、大統領選の投開票日に略奪を恐れるお店が、ショーウィンドーなどをべニア板でガードする風景をテレビで見ました。ホワイトハウスの前でも互いの支持者がにらみ合う。これがアメリカか、と思いました。

 大内:本当に、民主主義のお手本を自負するアメリカでの出来事だとは思えなかったですね。唖然とするような光景でした。

表に出てきた「Qアノン」、陰謀論者が下院議員に

 吉田:トランプ政権1期目には「Qアノン」といわれる陰謀論者も表舞台に出てきました。2017年ごろ、ネットの掲示板に「政府の秘密を握る」と称するQなる人から投稿があったのが始まりで、その言い分を信じる人たちの集団という。

 大内:アノンは「アノニマス」、匿名の省略で、いってみればQを支持する匿名集団の意ですね。彼らによれば、アメリカは「陰にうごめく悪の集団、ディープステート」に支配されていて、これと戦っているヒーローがトランプさん。昔から陰謀論はありましたが、これまでは荒唐無稽と一蹴されていた。それがSNSで拡散に拡散を重ねて、一気に表舞台に出てきました。大統領選と同時に行われた下院選では、南部ジョージア州で、「自分はQアノンだ」と公言している白人女性が当選しました。中央政界へのQアノン進出というわけです。

 吉田:自分と価値観が似ている人の投稿だけを見るSNSが陰謀論の温床になっている。

 大内:それが分断を加速する。しかも、現職の大統領が「俺が負けたら不正があった」と選挙戦を通じて一貫して公言するのも普通ではありません。

 分断に話を戻すと、いわゆる「怒れる白人労働者層」は、自分たちの価値観、自分たちのためにトランプさんだけは戦ってくれていると信じ、熱狂的に支持する。また、共和党は元来、財界にも支持されている。一方、民主党のアメリカは多様性、国際協調を重んじる。高等教育を受けたエリート層やマイノリティーに多い。

 この2つは今のアメリカ社会では交わらない。まるでパラレルワールドです。ステーキを食べ、カントリーやロックを聴き、保守系のFOXニュースをテレビでみるトランプの支持層は、おすしをつまみ、オペラを聴き、CNNを見るエリート集団の反トランプ層を許せないと思っている。一方、後者は前者を軽侮する。そして、どちらも自分の側がもし負けても結果を受け入れたくないと思っている。「受け入れるくらいなら、銃を手に取って」という動きへの懸念が出るほどです。

トランプ氏が「籠城」?

 吉田:訴訟合戦になれば、結果が出るまで時間がかかるでしょう。徹底抗戦の構えのトランプ氏がホワイトハウスに籠城するという説もあります。

 大内:両陣営とも、訴訟で長期戦になるのは織り込み済みで、訴訟に備えて、スーパー弁護士を集めています。ただ、憲法の規定によれば、トランプさんの任期は来年1月20日の正午きっかりと決まっています。ほかに法律で決まっていることとしては、今年はまず、12月8日に各州の選挙結果を確定させる期限がきます。「うちの州はトランプかバイデンか」、これを確定しなければならない。

 その結果を受けて、12月14日に各州の選挙人の投票があります。本来なら淡々とトランプさんかバイデンさんに投票するはずですが、12月8日までに勝者が決まっていない州が複数、出る可能性がある。そうなると、選挙人が投票できず、どちらの候補者も過半数を取れないこともあり得る。

 この場合、憲法の規定では、来年1月6日に下院で大統領を選ぶことになる。下院の定数は435ですが、全議員が投票するのではなく、各州で1票と決まっている。これが実施されたのは、18世紀に1度だけです。今回の選挙でも、下院では民主党が過半数を取る勢いですが、各州1票となると、共和党のトランプ氏が有利という見方がある。そして、仮に下院で決着しなければ、上院が副大統領を副大統領を選び、この人が副大統領兼大統領代行になるという決まりもあるのですが、これはもう未知の領域です。

日本はどう動いたら?

 吉田:前首相の安倍さんは、いち早く大統領に選出されたトランプさんに会いに行き、個人的に良好な関係を築いて、日米関係は戦後一番いいとも言われてきました。

 大内:日本の最大の同盟国はアメリカですから、誰が首相でも、アメリカ大統領とは良好な関係を築くことを目指す。でも、今回が菅首相も、どちらに、いつ会談の約束を取り付けるのか、判断が大変ですよね。

 吉田:いつ訪米するかということになると、トランプさんが当選すれば年内、バイデンさんだと急がなくてもいいという声が政府内から聞こえてきます。政府首脳は記者会見で対応聞かれても発言を差し控えています。

 大内:日本政府は、率直なところ、トランプさんとバイデンさんのどちらがいいと思っているのでしょうか。

 吉田:トランプさんという異形の大統領と「晋三」「ドナルド」という関係を作った安倍さんはいわば猛獣使い。外交関係者にきくと、オーソドックスな話し合いはバイデンさんの方がやりやすいとみる人は少なくない。

 大内:バイデンさんは、トランプさんが離脱した国連の温暖化防止対策であるパリ協定や、世界保健機関(WHO)、イランとの核合意に復帰すると公約している。ただ、環太平洋経済連携協定(TPP)がどうなるかはわかりませんね。

 吉田:アメリカに国際協調主義に回帰してもらうべく、日本は汗を流すコミットメントを求められるでしょう。いろいろ話してきましたが、分断の先にあるのは衰退です。影が差しこんでいる超大国アメリカには成熟した民主主義を見せてほしいですね。

 大内:今日は外交についてお話ししませんでしたが、日本にとってアメリカか中国かという視点で見ると、自由主義陣営のアメリカしか選択肢はありません。米国の選挙結果、日本にも大きな意味を持ちますね。

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1604339 0 アメリカ大統領選挙2020 2020/11/05 15:55:00 2020/11/06 19:38:10 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201104-OYT8I50115-T.jpg?type=thumbnail

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