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【ワシントン=船越翔、寺口亮一】米国が民主党の新大統領の下、新たなスタートを切った。第46代大統領ジョー・バイデン氏(78)は、20日の就任式で米国民の「団結(unity)」を繰り返し訴えたが、共和党のトランプ政権下で深まった「分断」の修復は容易でない。
「団結すれば素晴らしいことを成し遂げられる」「団結なしに平和はない」。粉雪が舞う中、就任式に臨んだバイデン氏は、連邦議会議事堂のバルコニーに立ち、約20分間の演説で何度も「団結」を訴えた。
新型コロナウイルスの影響で、出席者は数千人に制限され、式典は静かに進んだ。座席は距離を空けて設置され、クリントン、ブッシュ(子)、オバマの民主、共和両党の歴代大統領夫妻らVIP級の出席者たちも例外なくマスクを着用した。
就任式当日の恒例行事だったパレードも大幅に縮小された。従来は新大統領と家族らが議事堂からホワイトハウスまでの2・5キロを音楽隊や騎馬隊などと練り歩く。バイデン氏は今回、ホワイトハウス近くの道路をジル夫人(69)と車から降りて歩いたが、10分にも満たなかった。
就任式の見学に訪れたのは今回で7回目というバージニア州のケイティ・オットさん(54)は「パレードは普段通りやるべきだった。大統領をより遠い存在に感じてしまう」と不満を漏らした。
米国が直面する危機は、死者が世界最多の40万人超に上る新型コロナだけではない。トランプ前大統領(74)の支持者らが暴力で新大統領の選出を阻止しようとした議事堂占拠事件は、米国の亀裂の深さを国内外に示した。
事件を受け、ワシントンには2万5000人の州兵が動員される厳戒態勢が敷かれ、議事堂やホワイトハウスのある中心部への立ち入りは厳しく制限された。IT企業に勤務するバージニア州のライアン・クックさん(36)は検問所近くを訪れ、「2001年の米同時テロは外からの攻撃で団結は簡単だった。今は『米国人とは何か』という問いに国民が割れている。答えを見つけるには時間がかかる」とため息をついた。
就任式を欠席したトランプ氏の姿は20日昼前、1400キロ以上離れたフロリダ州パームビーチにあった。空港から別荘に向かう沿道では、数百人の支持者らの熱烈な歓迎を受けた。
大統領選に不正があったとするトランプ氏の主張を今も信じる支持者は少なくない。「トランプ氏は選挙の本当の勝利者だ。バイデン氏は私の大統領ではない」。量販店従業員のパム・フィックスさん(57)はそう言い切った。