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2021年度(第22回)伊藤亜聖氏『デジタル化する新興国』(中央公論新社)

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 第22回「読売・吉野作造賞」の受賞作は、東京大学准教授・伊藤亜聖氏の著書『デジタル化する新興国』(中央公論新社)に決まりました。正賞の文箱と副賞300万円を贈ります。

 同賞は昨年発表された著作、雑誌論文を対象とし、選考委員会の審議により決定しました。受賞作は、中国や東南アジアなど世界の新興国で進むデジタル化の光と影を論じた力作です。

伊藤 亜聖氏 (いとう・あせい)  1984年生まれ。東京都出身。慶応大学経済学部卒。東京大学社会科学研究所専任講師を経て同研究所准教授。専門は中国経済論。

選評:デジタル化 実態と危うさ分析

 コロナ禍の中で、日本のデジタル化の遅れが、いよいよ明らかになっている。日本は米中などに引き離されているだけでなく、多くの新興国がデジタル化で日本を追い抜いている。

 たとえばアフリカのケニアでは、信頼できる銀行システムがなかったため、スマホの普及と同時にスマホによる金銭決済が10年以上前から始まっている。後発ゆえに先発者を追い越すリープフロッグ(カエル跳び)が、世界の至る所に起きている。

 本書は、世界の新興国におけるめざましいデジタル化の実態を生き生きと紹介し分析した力作である。

 もちろん、新興国のデジタル化に問題がないわけではない。デジタル化は格差の拡大や情報統制の強化につながることがあり、雇用に貢献することも少ない。そうした新興国のデジタル化に付随する危うさも、本書はきちんと指摘している。

 かつて日本は先進国に貪欲に学び、吸収し、追い越していった。あのエネルギーは一体どこに行ってしまったのか。このままでは日本は後進国になってしまう。多くの日本人が覚悟を決めてやり直すためにも、本書が広く読まれることを強く希望する。(選考委員会座長 北岡伸一)

(2021年6月10日朝刊)


伊藤亜聖氏「顔」
(2021年6月10日朝刊)

中央公論(2021年7月号)
「受賞のことば」

寄稿  新興国63億人 デジタル化の地鳴り…読売・吉野作造賞を受賞して (2021年7月6日朝刊)

中央公論社の松田陽三社長と写真に納まる伊藤氏(左)
中央公論社の松田陽三社長と写真に納まる伊藤氏(左)

 第22回「読売・吉野作造賞」の贈賞式が東京・丸の内の東京会館で行われ、受賞作「デジタル化する新興国」(中央公論新社)を著した伊藤亜聖・東京大准教授(37)に、正賞の文箱と副賞300万円が贈られた。

 関係者約40人が出席した式典では、老川祥一・読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆代理、東京本社取締役論説委員長が、「デジタルを巡る世界の今日的な構造や問題点が一目で見渡せ、感服した。伊藤さんは歴代で最年少の受賞者。今後も色々な分野でご活躍いただけると思う」とあいさつした。選考委員会座長の北岡伸一・国際協力機構理事長は、「コロナで我々は、日本のデジタル化の遅れを痛切に感じさせられた。この本が広く読まれ、日本が立ち直るきっかけになってほしい」と評価した。

 伊藤氏は、「変化が激しく、分析の道具が定まっていないテーマでしたが、お認めいただいたことは大変な励み。各国の特徴が投影されたそれぞれのデジタル化にも取り組み続けたい」と語った。

 コロナ禍により昨年に引き続き、祝賀パーティーは開かれなかった。

(2021年7月13日朝刊) 

■選考委員 (敬称略)
北岡伸一(国際協力機構理事長)=座長
猪木武徳(大阪大学名誉教授)
山内昌之(武蔵野大学特任教授)
白石隆(熊本県立大学理事長)
吉川洋(立正大学学長)
老川祥一(読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆代理、東京本社取締役論説委員長)
松田陽三(中央公論新社代表取締役社長)
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2112698 0 読売・吉野作造賞 2021/06/10 09:00:00 2021/07/14 11:50:32 2021/07/14 11:50:32 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210609-OYT8I50012-T.jpg?type=thumbnail

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