文字サイズ
    インフォバーン

    メディアとしての矜持を持て…インフォバーン(後編)

    DeNA問題は「お粗末」

    • ウェルクの問題で謝罪会見を開いたDeNAの守安功社長(中央)ら(昨年12月7日)
      ウェルクの問題で謝罪会見を開いたDeNAの守安功社長(中央)ら(昨年12月7日)

    ――今田さんは「ビジネスインサイダー」(※)とも提携しましたね。どんどん媒体も増えて、会社も大きくなっていますが、そうなると、なかなか自分ですべてを管理するのが難しくなってくると思います。DeNAの調査報告書(※)を読まれたかと思いますが、コンプライアンスの部分で、自分たちもこうした失敗をしてしまうのではないか、という示唆に富んだ警句がたくさん並んでいました。どういうふうに読みましたか?

    ※ビジネスインサイダー=2007年に立ち上げられたビジネスニュース専門サイト。米国を拠点にしているが、15年、ドイツのメディア企業アクセル・シュプリンガーの傘下に入った。日本版は17年1月にサービス開始。メディアジーンが運営している。

    ※DeNAの調査報告書=運営する10サイトで著作権侵害や根拠に乏しい記事が多数見つかった問題を受けて、DeNAが設置した第三者委員会(委員長・名取勝也弁護士)によるサイト関係者などへの聞き取り調査の結果をまとめた報告書。2017年3月13日公表。最大で全体の5・6%の記事に著作権法違反の疑いがあると推計したほか、記事に付けた画像約75万点にも同法違反の可能性があると指摘した。(報告書はこちら

     どこの会社でも同じかなと思っています。どこにでも起こり得る問題だったと思うんですよね。結局は、人なんですよ、全部、人。別にDeNAの話だけではなく、情報漏洩(ろうえい)といった問題も、システムではなく、結果は人です。人の教育と、理念をどうやって伝え、どう教育をしていくかが、一番大事なんです。「こういうことはやってはいけない。我々はこういう考えで会社を運営している」と、とにかく言い続けるということと、仕組みを作ること。それこそ、うちもチェックリストとかいっぱい作っていますよ。

     とはいえ、アルバイトや新卒1年生の子が最初から同じ考えを持てるかというと、それは難しいという前提でやっています。どんな若手でも大事なことを共有していくようにならないといけない。だからこそ、企業の責任はすごく重いです。そこはもう、コストとしてちゃんと見ないといけませんね。

    ――報告書には何回も出てきますが、コストをかけすぎると儲からないからそこを避けたり、マニュアルはあるが徹底されていなかったり、そのマニュアルが間違っていたりということが指摘されていました。問題を起こしたサイトをもともと運営していた会社をDeNAが買収した時、自分たちよりも小さな、彼らのようなベンチャーこそが正義というふうに考えていたようです。むしろ、彼らにDeNAの考え方、方針をしっかり教育しなければならなかったのに、むしろこういう勢いのある新興企業のほうが正しい、と考えた。「何でも早くやれることが、大企業よりもずっと偉い」という、買収した方が妙に遠慮する空気があって、自分たちのDNAを植え付けることができなかったと、指摘されていました。そういうことって、起こり得ると思います。

     でも、まあ、本当にさっきから申し上げているように、最初からずっと歴史を見ている者の立場で言わせていただくと、「またか」っていう感じもあります。新しいけれど、古い話なんですよ。

    ――お粗末ですか?

     お粗末ですね。だって過去にさまざまな会社で何度も起こっていることですし。あんまりよそ様の会社のことは言いたくないですが、法務部門からグレーの警告が出ていたというのも、もっともだと思いますね。問題は、やっていることが法律的にグレーだと社内で指摘されたときに、どう判断するか、なんだと思います。

    「メディアとしての矜持がない」

    • 「DeNAにはメディアとしての矜持がなかった」
      「DeNAにはメディアとしての矜持がなかった」

    ――ちょっと驚いたのは、目標とする自社株の時価総額を最初に決めて、そこから逆算して、メディア部門のあらゆる目標を決めていたということです。それしか指標がなかったということも、メディアの人間から見ると信じられません。

     資本主義の悪いところじゃないですかね。やっぱり、メディアとしての矜持(きょうじ)がないと思います。その一言に尽きます。メディアとは何か、ということを知らないんですよ。それだけの話ですね。メディアは社会の公器だから、基本的にはすごい責任を負うものだということが分かっていない。現在メディアを名乗る企業のなかには、プラットフォームのつもりでやっているところが多い。サービスのつもりなんです。(メディアとサービスは)全然違うから。サービスだったら、あれでいいのかもしれません。要は、ルールだけ決めて、みんなが勝手に書き込みできれば良いんです。メディアを名乗る以上は責任がある。その違いだと思う。

    ――確かに彼らは、自分たちをプラットフォームだと思っていた節があったし、何かあったら、「自分たちはプラットフォームだ」というふうにユーザーにも答えろというマニュアルがあったみたいですね。

     だとしたら、サービスとして恣意的なところがないようにしないといけませんよね。ルールだけ決めて、あとはユーザーに自由に使わせるというようにしないといけない。そこが間違ったところです。あれが、個人が勝手に書いているもので、勝手に誰かが読むのなら、ブログサービスと変わらないです。中身に関して関知しないのはプラットフォーマーとしては、「あり」だと思います。なんだか中途半端に、編集部を作っていたというのが問題なんです。

    ――こういうことは何度も起きたというご指摘でしたが、さすがに、もうこういった事件は起きないと思いますか?

     起きないといいですね。そう思いますね。何回も見てきたんですけど、さすがにこういうふうに報道されたら、またやる人はいないと思いますけどね。でもやっぱりメディアというものに対しての誤解は、まだあると思います。メディアなのか、プラットフォーマーなのかという境目はものすごく重要で、あいまいにすべきではないのに、それをわかっていない人が多すぎる。

    ――たしかに、その境目を簡単に超えますよね。超えるならば、覚悟をもって超えなさいということですね。

     絶対そうですよね。そこは本当に重要なので。

    YOL-OFF(インタビューを終えて)
     急激に潮流が変化するネットという大海原を、今田さんは巧みな ( かじ ) さばきで乗り切ってきました。今もフェイクニュースに業界は揺れ、パブリッシャーのマネタイズという難しい問題を抱えています。それでもきっと、今田さんは解決に向けた進路を確実に取って、業界適正化に向けて進み続けるのではないか、という感想を持ちました。新聞社が突きつけられている問題も、簡単に解決できるものではありませんが、知恵を出し合ってともに荒波を超えていきたいと思います。(原田)

    株式会社インフォバーン
     オンライン・パブリッシャーのパイオニアとして企業とユーザーをつなぐストーリーを紡いできた知見から、企業のBRANDING(コンテンツマーケティングベースのブランド育成)、CREATIVE(メディア構築・運営)、INNOVATION(プロダクト/サービス開発)をサポートします。 https://www.infobahn.co.jp/

    株式会社メディアジーン
     オンライン・パブリッシャーとして、全世界で1億人超の読者を持つニュースメディアの日本版『BUSINESS INSIDER JAPAN』やテクノロジー情報メディア『ギズモード・ジャパン』、デジタルマーケティングの現在を伝える『DIGIDAY[日本版]』、スローライフ志向の女性に向けた『マイロハス』など、12のメディアブランドを運営。各々のメディアで情報感度が高い読者コミュニティが形成されています。 https://www.mediagene.co.jp/

    過去の連載はこちら

    2017年04月18日 17時45分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR情報
    PR
    今週のPICK UP