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    株式会社ツナグ

    分断する日本人と価値観~佐藤尚之氏(前編)

    キュレーションがオヤジ臭い

    • 新聞のキュレーションはオヤジ的?(イメージ)
      新聞のキュレーションはオヤジ的?(イメージ)

     ――佐藤さんご自身は新聞をちゃんと読んでいると、著書にあります。

     新聞を読まないと、情報のバランスが取れません。

     ――どういう情報の収集の仕方をなさっているんですか?

     新聞は、ニュースに社会的優先順位がつけられ、一覧でぱっと見ることができるようになっています。一覧だから、ネットでは絶対に僕がクリックしないようなガザやロヒンギャの話題も目に入ってきます。つまり、「世の中のこと」がバランスよく頭に入ってくる。自分が興味のあるものしか読まないことになりがちなネットだけでは、こういうバランスは取れません。こんな便利なものはありませんよ。

     ――キュレーション的な価値があるということですか?

     そうですね。そのキュレーションがちょっとオヤジ的とは思います。ネット時代は人によって価値の重要度が違うはずなので、すべてをひとくくりにするビジネスモデルは古いかもしれない。ただ、紙(としての新聞)ほど便利なものはないですよ。

     ――確かに、新聞は全員に一括で同じものを見せています。しかし一方で、日本国民としてこの話は知っておいてほしいというニュースや、立場が違っても共有できる価値はあるのではないですか?

     それはそうですが、同じイスラムの記事があったとしても、知識の乏しい20歳代向けの編集はあっても良い。世代ごとに書き分けるのが正しいかどうかは分かりませんし、可能か不可能かは別にして、今の上からのオヤジ目線のニュースの出し方を変えられないかなとは思いますね。僕はオヤジなので、僕自身に向けてはオヤジ目線の編集で良いんですが。

     ――実現するかどうかは別にして、読んでいる人によって、違う編集がされた新聞が届くといった形がベストということですか?

     テクノロジーが追いついてくる必要がありますが、そうあるべきだと思います。やはりネットだと、自分でニュースを取りに行くから知識が偏ってしまう。だから、うちの娘世代向けの新聞があって、一覧性で、社会的な順位付けがしてある新聞があれば、世の中のためになると思います。世代ごとに編集されていたらすごいですよね。

     ――作るのは大変そうですが。

     でも、将来折り曲げられるような薄型ディスプレイができたら、そういうキュレーションはできるかもしれませんね。

     ――電子ペーパーのようなものですね。

    新聞は「説教する大人」のイメージ?

    • 「若者が新聞に持つイメージは、説教する大人」
      「若者が新聞に持つイメージは、説教する大人」

     学生に聞くと、「新聞紙自体を持ち運びたくない。オヤジの臭いがする」と言うんです。そして、彼らはもう新聞のめくり方も分からない。手に取ったこともほぼない。それを電車の中で持っていたり読んだりしている自分が想像できない。

     ――大きすぎるということもあるんですか?

     大きさではなくて、「オヤジっぽい、かっこ悪い」という感覚みたいです。ピンク色の新聞はかっこいいという意見もあった。

     ――フィナンシャル・タイムズはいいのかな。色もよくないんでしょうか?

     色というより、説教する大人のイメージがあるんでしょう。新聞紙の臭いやインクの感じ、ペラペラする音が、経験的にオヤジを想起させている。それを読む努力をすべきだろう、とこちらは思います。こちらは自分が世の中の中心にいると思っているが、向こうは20歳代の中心にいる。その世代に向けたキュレーションじゃないと、読みたくはないんですね。

    世代を超えた価値はあるが

    • 「世代や立場を超えた価値がある」
      「世代や立場を超えた価値がある」

     ――半分は理解できますが、もう半分は共感できません。そうはいっても世代や立場を超えた価値があると思います。例えばシリアで惨事があったら、これは20歳代でも50歳代でも大事なことだと言いたい。

     ええ、その部分はすべての世代が共有すればいいと思います。ただ、20歳代に向けて「こんなニュースの切り口はどう?」と提示されたら、彼らにとってよりわかりやすくなるし、うれしいはずです。冬季オリンピックにしても、スノーボードの記事は薄くて、フィギュアスケートとスピードスケートばかり。キュレーションが記者たちの世代の価値観なんだと思いますよ。それが「世代や立場を超えた価値」なのでしょうか。

     今の若者は、放っておくと自分の好きなニュースしか見ないから、ニュースを扱っている新聞が彼ら向けに優先順位をつけたキュレーションをすれば、潮目は変わるような気がしますね。

     ――スピードスケートの小平奈緒選手と、韓国の李相花(イサンファ)選手の、国境を越えた友情物語に接して僕らは感動して泣くんですが、彼らはそんなものに関心がないんですか?

     いえ、もちろん彼らも感動するんですが、スノボのショーン・ホワイト選手のことももっと知りたい。新聞には日本人のことばかり書いているが、海外のスノボ強豪選手のことを知りたいとか、そういう部分は僕ら世代と違うと思います。

     ネットに書いている人たちは一次情報が取れない。だから、現地で一次情報を取れる新聞記者に、そういう情報を仕入れてほしい。だけどおそらく、デスクには「そんな情報はいらない」と言われる。新聞社は経費をかけて一次情報を取りに行ってくれているのに、若い世代の欲しいニュースとずれている部分もある。そこがずれると、どうやっても若者は読まない。

    2018年05月16日 12時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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