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追跡取材

高校生キャリア講座は大学生活のナビだった

中央大学高校 受講生のその後

中大高で昨年秋にスタートした「高校生キャリア講座─私の生き方を考える」は、企業人ファシリテータの助言を得て、社会に出てから必要とされる力を身につけるグループワークだ。ここで培ったものが今、大学生活で生きている。体験者が語るその後の高校生キャリア講座。迷わず、まっすぐに青春を走る姿が見えてくる。同講座は本誌2013年早春号で紹介した。

高校生講座で学んだものが目の前に

板倉しおりさん(中大高―文学部1年)

 大学に入学して、半年余りが過ぎ、「高校生キャリア講座」という言葉を懐かしく感じている。

 「社会研究」の授業を担当されていた上井恒毅先生に勧められて、講座を受講した。他校の友人が受験勉強に励む中、「私も何かしなければ」と駆り立てられて、これなら進路決定後の時間を有効に使えると思った。

 「キャリア」と聞くと「就職」のイメージしか浮かばず、ガイダンス参加前は高校生のうちから将来の就職について考える講座だと思っていた。大企業に勤める方々から就活のイロハでも教えてもらえるのかもしれないという浅はかな考えもあった。

 しかし、講座を受けるうちに「キャリア=就職」ではなく、もっと先の「人生設計」のことだと実感した。

 私が所属した「富士フイルム」チームは、理想と現実のギャップから生まれる「気づき」を大切にした。

 模造紙に自分が置かれている現状と理想を書き出し、それをグループのみんなで見て、話し合う中、各自がそれぞれの人生設計を予想以上に具体的に描いていることに驚いた。一人で考えただけでは分からないことだった。

 最終発表で賞はいただけなかったが、ファシリテータ(別頁参考)の方々や仲間と一生ものの絆を得ることができ、講座に参加してよかったと心から思っている。

入学直後にもらった「キャリアデザインノート」

 4月、大学入学直後にキャリア講座での経験が役立つ出来事があった。全員に配布された「キャリアデザインノート」を広げて驚いた。ほとんどがキャリア講座で既に気づき、実践していたことなのだ。

 キャリアについて、周りの人より一歩先に深く考える環境にいた。ノートを見て実感し、改めて感謝した。これだけではなく、講座での経験は大学生活全般をよりよいものにしている。

 大学生になると、就職やそれに向けての活動が一気に身近に感じられるが、キャリア講座に参加して「就職」も人生の一段階であることが分かり、「就活」のための大学生活にならないようにと心掛けている。

 勉強や資格取得はもちろんだが、サークルや趣味においても、1年以内に達成したい短期目標、2~3年以内に達成したい中期目標、卒業までに達成したい長期目標と段階ごとに目標を立て、短期目標から一つずつ達成していこうと考えている。

 直近の目標は、勉強では高校で取り損ねた漢検準一級へのリベンジ、サークル活動(軽音楽)では白門祭のステージで演奏すること、趣味(旅行)では沖縄旅行の資金を貯めること。友人の存在や刺激をバネにしつつ、焦らず、しっかり取り組むようにしている。

 私たち富士フイルムのグループで決めたことがある。それは、「10年後にもう一度集まる」というものだ。それが私の長期の目標、10年後再会したときに胸を張って、職について語れるようになることである。

早くに社会を知った

石井皓大さん(中大高―法学部1年)

 大学に入って、いままでと環境が大きく変わった。高校までは勉強も知識型であったが、大学は知識を前提とした研究中心の勉強が増え、生活の自由度も大きく上がった。

 やりたいことができるようになる一方で、何もやらなければ、ただ時間だけが過ぎていく。その中で、高校生キャリア講座の経験が大学での指針の一部になっていると感じる。なぜなら、キャリア講座を通して、自分を見つめ直すことができたからだ。

 同講座で扱うテーマは実にさまざまで、班ごとに違う形で進められていた。僕たち富士フイルム班は社会を考える前に、まず自分について知るべきだとして「10年後の自分をどう考えるか」という具体的なテーマを設けた。

 はじめは、自分について考えるなんて本当に必要なのかと疑問に思っていた。しかし、自分の思っていることをほかのメンバーと話し合うと、自分を客観視することができ、自分が周りの人と比べて何を強く意識しているかが分かった。

身近になった社会

 ファシリテータの木内さん、監督をしていただいた吹野さんは、日ごろ使っている手帳やノートを広げ、仕事をするうえでの心構え、会議の進め方などを惜しむことなく話してくれた。

富士フイルムの木内清悟さん(左端)にはファシリテータをしていただいた

 社会人の手帳を見ることで、社会を身近に感じ、社会に対する意識が変わった。手帳には日々の予定のほか、今週の目標、月間目標、今年中にやりたいことなどが細かく書かれていた。そして、こう話してくれた。

 「人生はみんなが思っているよりずっと短い。だから一つ一つやるべきことを書いている」と。

 この言葉は今でも強く印象に残っている。

 また、発表の準備で教わった「相手に伝えるための技術」は、現場を経験した人ならではの具体的なもので、それをいま、ゼミの発表時などで参考にさせてもらっている。

 企業人と講座を進めることで、社会に対する価値観が変わったことはもちろん、自分に対する認識が変わった。高校3年までは自分をしっかり見つめていなかった。漠然と考えていた将来について、具体的に考えるようになった。

 自分は何になりたいのか、何がしたいのか、明確な答えは出ていない。しかし、キャリア講座を経験していなければ、何も考えずに大学生活を過ごしていたかもしれない。そう考えると、生活が大きく変わる高校から大学への転換期に、社会とのかかわりを持つ機会を得たことは、非常によかった と思っている。

 忙しい日常の仕事があるにもかかわらず、休日も指導してくださった企業の方々、参加を勧めてくれた先生方、班のメンバーに感謝している。

ファシリテータ
会議や集会などでテーマや議題に沿って発言内容を整理し、発言者が偏らないようスムーズな進行を心がける人。
会議などでの決定権は持たない。